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隠しルート入りました

最近流行りのジャンルなので、ちょっと息抜きに軽く書いてみました。時々シリアスになります。







 私の名前はアレクサンドラ・アルバース。公爵令嬢である。前の名前は佐野瑞希。高校の帰り道に死んでしまい、異世界転生しちゃった人間です。更に詳しく言いますと、前世の世界で流行っていた『乙女ゲームの悪役令嬢に転生した』という境遇である。


 人によっては「そ、そんな……」と絶望するかもしれないし「破滅フラグを回避してやるぞ!」と燃えるかもしれない。だが、私は違った。


 なぜなら、私はこの乙女ゲームを知らない。


 いや、あのね? そもそも私はあまり乙女ゲームをやる人間じゃないのよ。どちらかといえば、アクションとかRPGとかが好きでね。それを剣道部の後輩ちゃんに話したら「絶対ハマりますからやってくださいよ先輩~!」と言って押しつけてきてさ。それで渋々やってたんだ。読み物としては面白かったよ? けど後輩ちゃんみたいに「◯◯様カッコいい!」という域には至らなかったけど。


「フツーに面白かった」と言って返すと後輩ちゃんは悔しそうにして「じゃあ次はこれやってください! 今度こそハマりますから!」と次の作品を押しつけてくる。これを繰り返すこと三回目。帰りのバスの中で説明書を読んでいたらバスが事故ったという具合。

 故に、私はキャラと大まかな設定だけ知っているが、ストーリーはなにも知らない。


 という前世の記憶を思い出したのは転生して五年経った頃だった。王子の火球の魔法が暴走して私にぶち当たり、背中に大火傷を負ったらショックで前世の記憶を取り戻した。しばらく高熱にうなされ、見舞いに来た王子は責任を取ると言って婚約を申し込んできた。


 丁重にお断りした。


 普通そうでしょ? 破滅ルートだろうものに自らホイホイ入っていくバカがいますか。まあ、体面が悪いとか王家からの申し込みを断れないとか、お父様とかにくどくど言われたので、学園卒業の時に気持ちが変わってなかったら正式に申し込めやという感じでまとめてもらった。


 タイムリミットは十八歳、学園の卒業式までである。

 その間に王子をヒロインちゃんに押しつけ、下手を踏まなければ私の勝ち。というか私はゲームシナリオなんぞに縛られず自立したい。


 と、いうわけで。私は父の後を継いで魔法局の書庫番になるべくめっちゃ勉強した。そうそう。父が魔法に詳しかったから王子の魔法の面倒を見ていたのよ。それさえなけりゃ、私に火球がぶち当たるなんて事件そもそも起きなかったのにねチクショウが。


 そして攻略対象キャラを華麗にかわし、無事十六歳まで生き延びた。学園に入学し一年経とうかというところ。もうすぐヒロインちゃんが入学してくる。私はといえば、勉強しているうちに遺跡研究に魅入られ、フィールドワークに勤しんでいた。公爵令嬢らしからぬ行動に両親は嘆いていたが。


 ところが、いつものように遺跡の調査に出向いたら予期せぬ出来事が。石室の模様を見ていたらふっと意識が遠のいたかと思うと、目を覚ましたらそこは見知らぬ場所だった。空は黒く禍々しく、木々は不気味な暗い色。吸い込む空気は淀んでいて肺が病気になりそうだと訴えてくる。


『先輩! 全キャラ攻略後に解放される魔界ルートもやってくださいね! 約束ですよ!』


 後輩ちゃんの声が蘇る。あの、ここはもしかしなくても魔界じゃなかろうか。


「あれぇ???」


 つい情けない声が出た。




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