星屑の欠片を掴んだ彼の独白
優しくしてあげる、と笑った。
他の誰でもなく、俺だけにと。
溢れるほどの、――愛情を滲ませて。
優しくしてくれると言ったのはそっちだ、と事あるごとに言質をちらつかせてみれば、初めは顔を真っ赤にしていたくせに、自分から俺を隙あらば甘やかそうとするようになった。
大体、そもそもがシホときたら、「俺のため」ばかりだったように思える。
字が読めなかったくせに料理本を持ち歩いて四六時中読んでいたのを知っている。
俺に予定がない限り、他からの食事の誘いを断っていたのも知っている。
料理の感想を求めるけどしつこくはしない。
俺の好きな食材を知れば喜ぶ。
胃袋から先に掴まれていたのかどうか、今となってはわからない。
とにもかくにもそんな風に俺のことばかりを優先する相手に、どうやったら惹かれずにいられるのか。
そのくせ一線を引いて踏み込まず、踏み込ませずだった。
お互いにたぶんその壁の壊し方、距離の詰め方がわからなくなっていたような気がする。
だから俺は、シホが呑兵衛でよかったと、心から思う。
酒の力は偉大だ。
主義や習慣など喜んで放り投げて、いくらだって晩酌に付き合おう。
シホは俺が優しいと言うが、言われるほど優しい自覚なんてない。
だけどそんなシホは俺だけに特別優しい。
だから俺は、俺自身の幸運に感謝する。
シホを見つけられた幸運に。
俺は確かにあの時、流れ星そのものを捕まえたんだろう。




