↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
6/24

異世界編:王国騎士団と異世界の私2

# エピソード6 王国騎士団からの試練


 ルート嬢と森での出来事があってから、私たちは互いに時間を合わせ、森の入口で頻繁に会うようになった。そして、協力しながら修練を積むようになった。


「ご機嫌よう。今日はどのような趣向で参りますか?」


 相変わらず、見事なカーテシーだ……。


 私には似合わないな……。


「ご機嫌よう。私は相変わらず、色々なシチュエーションを試したいよ」


 私は騎士式の挨拶をして応えた。カーテシーをしたこともあるけれど、ルート嬢の前で行うのは、どうにも戸惑いと恥ずかしさがあった。


「そうね、その通りだわ……」


 ルート嬢は、以前、私たちが襲撃されたときの魔物のことを思い出したのだろう。


「あんな醜態をさらすなんて……」


 私は場の雰囲気を変えるため、声を掛けた。


「あれは想定外ってやつだよ。仕方ないさ……」


 前世で十八年、今世で十四年。合わせて三十二年も生きていれば、多少は空気を読めるようになったのだろうか。


 前世の私からは、考えも及ばないことだった……。


「ところで、修練を積むために、お互いの能力を確認し合いましたわよね。ですが、改めて考えると、貴女はスキル以前に、魔法でできることがあまりにも異常だわ」


 ルート嬢は顎に人差し指を当て、思案していた。


 確かに、私自身もそう思う。


 前世の私とは違い、今の私は天才と呼べるほどの才能を持っているらしい……。


「普通、四大魔法をすべて中級まで使いこなし、感知、鑑定、隠匿、治癒まで器用に扱うなんて、そうそうできることではありませんわ。それに、そのスキル……。はっきり申し上げますと、反則過ぎますわ。その辺りが、英雄(ヒーロー)たる所以なのかしら……」


 恥ずかしい。やめてほしい。本当に、こういうことには慣れない……。


「と、とんでもない! ルート嬢の投影魔法の方が凄くない? 私、あんな魔法を初めて見たよ!」


 これは本心からの言葉だった。


「貴女になら、話してもいいわ……。その前に、まずは謝罪させて」


 ルート嬢は、きれいなお辞儀をした。


 えっ……どういうこと?


「あれは、スキルなの。普通の投影魔法であんなに頻繁に行使したら、魔力がすぐに枯渇してしまうわ」


 便利なスキルだな……。


 それに比べて、私自身のスキルについては、まだ分からないことが多い。


「それって、魔力を消費しないという解釈でいいの?」


 ルート嬢は無言で頷いた。


 よほど明かしたくなかったのだろうか……。その瞳には、わずかな曇りが見えた気がした。


「これを知っているのは、御父様と貴女だけ。我が家の秘事なの……」


「いや、ごめんなさい! お、重すぎる……!」


 どうして、そんな大事な秘密を私に……?


「何で私に……?」


「あの日、お伝えしましたわ。二人でこの国の守護者になろう、と」


 ルート嬢の表情は凛としていた。


 そこには揺らぐことのない意志が感じられた。真っ直ぐな感情……。きっと、これが彼女の本心なのだろう。


「分かったよ……。正直、私がその役目に足る存在なのかは分からないけど」


「何を言っていますの。今は勇者でしょう?」


 ルート嬢は、少し呆れたように言った。


「それより、今日も始めましょう。時間は有限なのだから」


 そう言うと、ルート嬢は背を向け、颯爽と森の奥へ向かっていった。


「まずは王国騎士団の入団試験に合格すること! それから師団長へ昇進して、最後は私が先に団長になる! 分かった?」


「ちょっと待ってよ!!」


 私は慌てて、その後を追い掛けた。


 そして、一年が経った。


 私は十五歳になった。この世界では、成人とされる年齢だ。


 私とルート嬢は、王国騎士団の入団試験を受けることになった。


 試験内容は、剣技、体術、隠匿術、探索術、魔法を使わない応急治療、そして魔法操作と魔法技術の確認だった。


 それぞれの試験が始まった。


 参加者は、意外と少ないのかな……?


 総勢五十名。十名ずつ、五つの班に分かれて試験を進めるらしい。


 私とルート嬢は別々の班になった。


 私の班では、体術の試験から始まった。


 どうやら、一対一の組手を行うらしい。


 私の相手は、かなり図体の大きな男だった。


 前世の私なら、泣きながら逃げ出していただろう。


「相手がこんな貧弱な奴なんて……。せっかく一番得意な体術の試験なのに、ああ、台無しだ」


 まあ、そう思うのも無理はないか。


 私も外から見れば、そんなふうに思われるのだろう。


 いやいや……。


「こういう場面って、鉄板だよね~」


 私が呟くと、相手は呆れた顔をした。


「何言ってるか分かんねぇな。試験官、始めていいっすか?」


 試験官が笑った……?


 いや、違う。あの人は……。


 確か、父の部下だったはずだ。


「それでは、始め!」


 試験官の掛け声と同時に、相手がこちらへ駆け出してきた。


「加減して腹にしてやるよ!」


 ……何だ? 親切のつもりなのか?


 相手の拳が、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。


 私は小さく息を吐いた。


「ごめんなさい。合格しないと、ルート嬢との約束を破ることになるから」


 私は跳び上がり、下段突きの姿勢になった相手の背後へ回り込む。そして、回転蹴りの要領で一閃した。


 わっ……痛そう。


 相手は前のめりに倒れ込んだ。


「そこまで!」


 私は父に教えてもらったとおり、残心の構えを取った。


「おおーっ!」


 周囲から歓声が湧き上がる。


 私は相手に礼をし、最後に試験官にも礼をして、その場を離れた。


 試験官が少し笑った気がしたけれど、気まずかったので見なかったことにした。


 そのとき、別の場所から歓声が聞こえてきた。


 ルート嬢の班だ。


 まったく、また何をやったのだろう……。


 いや、何となく想像はつくけれど。


 次は探索術の試験だった。


 試験官の説明によると、試験会場のどこかに、魔術を込めた魔具が幾つか隠されているらしい。魔術を込めたのは試験官本人だという。


「それでは、始め!」


 合図と同時に、私を除く九名のうち、先ほどの体術の相手を除いた八名が四方へ散らばった。


 私は驚愕した。


 さすがは王国騎士団の入団試験に挑む人たちだ。試験官の魔術をこの短時間で感知したのか!


 ……いや、感心してる場合ではない。


 私はすぐさま感知魔法を使い、試験官が込めた魔術の波長を探った。そして、その反応を手掛かりに、感知魔法で魔具を探し始めた。


 そのとき、また試験官が少し笑ったような気がした。


 ……何故?


 五分後。


 私は目的の魔具を見つけ、試験官に手渡した。


「貴女は何故……。いや、よそう。よく考えれば分かることなのに……。毎年、疲れるよ」


 また少し笑った。


 ……だから、何故?


「この班の試験は終了です」


 えっ……もう終わりなの!?


 もしかして、全員不合格!?


「試験官、どういうことでしょうか?」


 受験者の一人が問い掛けた。


「済まないが、合格者はハイデル公嬢のみだ」


 その名を聞いた受験者たちが、ざわめき始めた。


「彼女が、あの……!?」


「試験官殿! あまりにも理不尽です! あまりにも贔屓ではありませんか!」


 受験者の中には、反発する者もいた。


 当然だろうな……。


 何だか、肩身が狭い。


「はぁーっ……」


 試験官は深いため息をついた。


「では、聞くが、探索の試験で感知魔法を使った者が、このハイデル公嬢以外にいたか? それとも、こんな試験に何時間も掛けるつもりだったのか? あるいは、何か特別なスキルでも持っている者がいたのか?」


 試験官は、呆れたように首を振った。


「まったく、嘆かわしい……。いいかね、私は最初に説明した筈だ、ハイデル公嬢が見つけたこの魔具に、簡単な感知魔法でも判る様に、私の魔術を色濃く移した」

「本当だ!」

試験官の掲げた魔具を受験者の一人が、感知魔法で確認したのだろう、驚きの声をあげた。

「しかも、この他に魔具8個を仕掛けた。つまりその気になれば、この探知の試験に関しては参加者全員合格する事も出来た。其処に何処が理不尽なのか?何処が贔屓なのか、答えられる者が居るかね?」

誰も答え無かった…只皆、気不味い顔をしているだけだった。

「また来年受けに来なさい。いや、私が基礎から教えてくれる師を紹介しよう。もちろん、ただではないがな。せめて、そこから学んで試験に挑んでほしい。まったく……」


 疲れ切った様子の試験官は、片手を払うような仕草をして、その場を離れていった。


 何とも言えない空気が、その場に残された。


 私はそそくさと、その場を抜け出した。


 もちろん、隠匿魔法を使ってね……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。