異世界編:新たなる王国騎士入団試験と異世界の私
# エピソード24 王国騎士入団試験と新たな仲間
この国の気候は日本に近く、四季がある。私がいた前世の日本のような、猛暑日や豪雪もなく、比較的穏やかな気候である。
今日は日本で言うところの秋に近い時期で、少し長袖が欲しくなるくらいの気温だった。
私たちは修練場に集まり、次期王国騎士団員となるための入団試験を受けに来た人々を眺めていた。
試験官には、あの時と変わらずリッキーさんとダナソン公がいる。そして、カーラさん、リカメイさん、ジョイさん、リアンさんも試験官として参加していた。
ダナソン公が代表して挨拶を述べた。
「諸君! 本日はよく集まってくれた。皆、この日が来るまで必死に修練を積んできたと思う。本日は皆の決意と、修練によって培った力を見せてもらいたい! それでは、各騎士と試験官の指示に従い、試験を開始する! それでは健闘を祈る!」
皆、それぞれに隊列を組まされ、試験の準備を始めた。あの時と同じように、各班へと分かれていく。
さて、確か私たちの時には……。
試験内容は、剣技、体術、隠密術、探索術、魔法を使わない応急手当、そして魔法操作と魔法技術の確認だった。
どの試験から始めるかは、それぞれの試験官が決めていたようだった。
先ず私はダナソン公の班を見た。
すると、私の時と同じく体術の試験を始めていた。
……懐かしい。
最初に対戦するのは、鍛えられた長身の男性と、何やら態度の悪そうな女の子だった。
「テメェ! 貴族か……? 気に入らねぇ顔してるな!」
何か柄の悪い子だ。ヤンキー娘だ!
お父さんが見たら泣くよ……!
対する男性は、姿勢正しく立っている。紳士的な雰囲気だ。
「貴族が気に入らないのは構わない。ただし、言いたいことがあるなら実力を示せ」
その言葉に、女の子が反応する。
「言わせておけば!」
「両者、構え!」
そこにダナソン公の号令が掛かり、二人は構えた。
「始め!」
互いに打ち合い始めた。
荒々しくも、手数で攻めるヤンキー娘の猛攻は激しい。だが、それを難なくかわして受け流す紳士君も、なかなかの手練れである。
しばらく膠着状態が続いたが、紳士君がヤンキー娘の足を払い、カウンターの掌打を放った!
吹き飛ばされたヤンキー娘は宙に浮いたものの、後ろに下がって何とか持ち堪えた。
「まだだ! クソ貴族!」
一気に駆け寄り、スライディング蹴りを仕掛けた。
しかし、紳士君は上空へ跳ねて、それをかわした。
そして着地する瞬間、ヤンキー娘が、先ほどのスライディング中に取ったのだろう、右手の砂埃を紳士君に浴びせた!
「卑怯な!」
「戦に卑怯もクソもあるか!」
ヤンキー娘の蹴りが、紳士君の男性にしか分からない弱点、下腹部に直撃した!
「ギャー!」
紳士君のものとは思えない叫び声が聞こえた。
隣にいたサイラス副団長も、
「ぐっ!」
と、まるで我が身に起きたことのように声を漏らした。
男にしか分からない痛みだ……南無。
私は合掌した。
「何してるのよ……」
ルート団長が小声で私に訴えた。
そんなことをしている間に、ヤンキー娘は紳士君に馬乗りになり、殴り続けていた。
すかさずダナソン公が止めに入った。
「そこまでだ!」
「へっ!」
ヤンキー娘は素直に手を引いた。
紳士君は立ち上がり、悔しそうに言った。
「悔しいが、負けは負けだ! 次は醜態を見せん……。我が名はショーダだ」
その後、一礼した紳士君。やはり騎士らしい。
「はっ! 私の名はアヤーカだ……」
気に入らない相手とはいえ、一礼するヤンキー娘。やっぱりヤンキーだ。
その後、私はジョイさんの班を見た。
何と! そこには、いっぱいのジョイさんと受験者たちがいて、剣技の試験を始めていた。
「さっき言った通り、私の分身体といい勝負ができた者を選ぶわ!」
多分、本体のジョイさんが改めて説明していた。
ジョイさんはスキルで分身体を生み出すことができる。
うん、時間短縮だ……効率化だ……。
続いて、リアンさんの班を見た。
魔法の操作を確認しているようだった。
「この硝子球を割らずに宙に漂わせる。皆、力の調整を怠らないようにね」
受験者たちが一斉に硝子球を浮かべ始めた。
「あっ!?」
中には、すぐに硝子球を割ってしまう者も現れた。
思った以上に調整が難しいようだ。
続いて、リカメイさんの班を見た。
何だ? 鬼ごっこか!
皆、リカメイさんが数を数えている間に逃げ出していた……!
「十! 良いか? 先ほど伝えた通り、今から私が二十まで数える。その間に皆を捕獲する。最後まで残った者を試験通過とする。では行くぞ、一!」
そう言った矢先、一人がリカメイさんの投げた鉤縄に捕まった。
「二!」
また一人!
リカメイさん……全滅しません!?
「団長……止めた方がよろしいのでは?」
恐る恐る、サイラス副団長がルート団長に確認した。
「大丈夫よ。リカメイだって加減するに決まっているでしょう……」
「四!」
二人が一気に捕まった。
「多分……?」
ルート団長は自信をなくしたようだった。
結果、四名が残った。
試験ご苦労様……南無!
私は再び合掌した。
「だから、何してるの……?」
ルート団長のツッコミにも、少しキレがなくなっていた。
次にカーラさんの班を見た。
「もっと! 強くよ!」
バッシーン!!
「私に納得された者に、次の試験を受ける資格をあげるわ!」
何と、仁王立ちしているカーラさんの腹部に、受験者たちが順番に拳や蹴りを打ち込んでいた……!
中には、殴った腕を痛めて地面に転がる者までいる!
「あなたたちの決意と愛はこんなものなの!? 打撃に愛を込めるの!」
すいません、カーラさん。打撃、ましてや試験に愛は関係ありません……。
しかもカーラさんは、既に某世紀末救世主のようになっている。
身体からオーラのようなものまで見える!
「団長……。あれも止めた方が?」
「大丈夫よ……多分……」
団長は見ないふりをした!
「チェストーッ!」
一人の受験者がカーラさんに打ち込むと、カーラさんは腹筋の力で相手を吹き飛ばした……!
「団長……!?」
「私は職務がある……失礼する!」
今日は騎士団の入団試験以外、何も予定がありません……!
私は逃げようとするルート団長を止めた!
結局、三名が残った……。
騎士団の入団試験には、運も必要らしい……。
お疲れ様……南無。
私はまた合掌した。
「だ・か・ら! 何してるのよぉ?」
ルート団長のツッコミが復活した。
もう逃げないでください。
さて、最後は安牌のリッキー教官の班を見ることにした。
剣技の試験のようだ。
対戦しているのは、生真面目そうな青年。優等生といった雰囲気だ。
対するは、眼鏡を掛けたチャイナ服の女の子!
中華娘だ!
功夫のように槍を構えている。
好青年の方も槍を構えていた。こちらは正統派の構えだ。
「始め!」
リッキー教官の号令とともに、互いに槍を突き出した。
お互いに、自分が修練してきた技を繰り出し、一進一退の攻防を続けている。
私たちがその戦いを眺めていると、後ろから声がした。
「あの娘は私の従姉妹になります。エヴァですよ!」
後ろを振り返ると、眼鏡が浮いている……いや、薄ら笑いを浮かべたシュウレイだった。
何してるの? 試験官もせずに……。
いや、こいつに任せると、破壊と混沌しか生まれない?
もしかしたら、あなたが魔神王なの?
いや、魔神王がこんなショタ眼鏡ではない。
「相手の彼、もう少し幼かったら私の好みの範疇なのに……。ああ……会いたい、オロビオ君……」
まだ諦めていなかったか、ショタ眼鏡!
「相手の男は、俺の弟だ!」
さらに後ろから、真っ赤な炎が……いや、髪の毛が見えた。
出た、ヤンキーだ!
いや、ドンディさんだ。
「ドンディ殿、彼が弟なのですか?」
サイラス副団長が、皆が思っていた疑問を口にした。
「だよな……。見た目は俺とは真逆の優等生だしな。でも、槍さばきはなかなかのもんだぜ……」
似てません、本当に!
ドンディさんのヤンキー魂は、全く受け継がれていません!
「確かに、素晴らしい槍さばきだ。だが、シュウレイの従姉妹も、あの流れるような槍さばきはなかなかのものだ……」
ルート団長は、両者の戦いを見守っていた。
中華娘の流れるような槍の突きをかわすと、優等生が槍を一気に突き出した。
しかし、エヴァはひらりとかわし、一瞬、優等生の槍の上に乗った!
槍に体重が掛かり、体勢を崩した優等生の首元に、エヴァが蹴りを放つ。
倒れた優等生の目の前に、槍先が突き付けられた。
「それまで!」
リッキー教官の号令が掛かる。
お互いに一礼して下がった。
「ったく……。でも、良い戦いだったな……」
ドンディさんは悔しそうだったが、気を取り直して続けた。
「あの体術と槍さばきは見事だな。あんたと違って、将来有望だな、従姉妹は!」
ドンディさんは、シュウレイの従姉妹を称賛しながら、嫌味も添えた。
「ふん! 私は可愛い男の子以外、出世にも興味ありません……」
うん、情けない返しだよ、ショタ眼鏡!
今回の試験は、かなりのアクシデントがあり、入団合格者はたった六名となった。
団長は頭を抱えていた……。
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城塞都市の酒場で、俺は相変わらず情報屋と酒を飲んでいた。
「旦那……。最近、ちまちました依頼ばかりで、面白みに欠けませんか?」
おい、俺を何だと思っているんだ……。
確かに最近は薬草採取や、近辺に出没する野良の魔物の討伐、終いには溝さらいまでやっていた。
何かやらねぇと落ち着かねぇ。
ユリカを探すにも、あまりにも手掛かりがない……。
「以前からお願いしている、ユリカっていう名前の女性の手掛かりは……どうだ?」
酒を一口含んだ情報屋が、申し訳なさそうな顔をして答えた。
「以前お伝えした英雄さん以外には、聞きませんね。すいませんねぇ……。珍しい名前なのに、あまり情報に引っ掛かる様子がないんですよ」
あの時、英雄さんの顔を見たが、ユリカの面影はなかった……。
まあ、気長に探すか……。
「ところで……旦那! 旦那向きの依頼がありまして……」
どうせ難問依頼だろうな……。
「どうせ、ろくな依頼じゃねぇだろ……」
「旦那……。いい加減、あっしを信じちゃくれねぇかな……。悲しいねぇ……」
わざとらしい芝居をしやがって……。
「今回は、正義の依頼ですよ。教会の使徒の方々への護衛ですよ……! しかも、依頼料と成功報酬は別払いで、かなりの高待遇ですよ。いやぁ~、善行は積んでおくべきですよ……」
怪しいな。
それに、テメェが善行を語るな……。人の労力から掠め取る奴のくせによ。
「何か引っ掛かるなぁ。教会の使徒さんの護衛を、外部に依頼するのか?」
「それが、人員の増強が本来の依頼らしいです。何でも盗賊団が何度も教会の使徒たちの輸送を襲撃しているそうです。しかも、あの有名なカルミネ盗賊団がです!」
おいおい……。
それって、俺たちに肉壁になれってことか……。
まあ、俺ならやり過ごすこともできるがな……。
「いいぜ。受けるよ、その依頼……」
「流石、旦那! 危機と死地の間に生きる男!」
おい! その言い方だと、死ぬしかないだろう。
「そこは生と死の間だろうが……」
「細かいことは……なしにして。旦那! また、でかい仕事の前に乾杯でしょ?」
ホクホク顔の情報屋が盃を掲げてきた。
「わかったよ……」
俺はなすがままに乾杯した。
ああ……ったく、今日も飲むしかねぇな……。
今宵も更けていく……。




