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第13話◇親友・レジーナと、初めて見た品種の薔薇

ライランズ伯爵家とはもう何年も行き来があるため、わたくしはその次の日にはレジーナの元を訪れることができた。


「どうぞ、アメリア様。レジーナお嬢様が中でお待ちです」

「案内ありがとう。感謝するわ」


ドアを開けてくれたメイドのアンに、ニコリと微笑む。


「やっと来て下さったわね、アメリア!!」

「ごきげんよう、レジーナ。しばらくぶりね」


レジーナは既に待ち構えていたようで、ソファーから立ち上がってわたくしを迎えてくれた。


アンがそこにいる間は、しっかりと令嬢スマイルで気持ちを保っていた。

けれども、彼女の足音が少しずつ遠ざかっていって、やがて完全に立ち去っていった、という状況を確認してしまうと、もう駄目だった。


「レジーナぁ~!!もうっ、もうっ、会えない時期が辛かったわ!!話したいことがたくさんあるの!!色々聞いて~!!」


わたくしはまるで子供のように音を上げながら、レジーナに泣きつく。


「ちょっとちょっと~、随分と消耗してるじゃないの!!」


そんなわたくしの突進を、レジーナは全く嫌がることなく、優しく受け止めてくれた。


「だって、色々あり過ぎたのよ……」

「そうねぇ。ルーカスの浮気に窃盗に婚約破棄に、ウィリアム様との婚約……。盛りだくさんの展開が続いたものね」


ポンポンとあやすみたいに背中を叩かれる。

ちゃんと分かっているから、とでも言うかのように。


「いいわよ、聞いてあげる。そのかわり、私の話も聞いてね」


ウィンクをしてくるレジーナ。

さっすが、話が早いわ。

これだから、ついつい毎回頼っちゃうのよね。


「あっ、そうだわ。わたくし、今日も試作品を持ってきたのよ。薔薇の形に絞り出したクリームが乗ったケーキに、薔薇の形のクッキー、マフィンもあるわ」


ホッとしたところで、わたくしはそんな優しいレジーナに貢物を献上する。

この子は無類の甘味好きなのだ。


「やだ、最高じゃない!!」

「さっきアンに手渡しておいたから、楽しみにしていて」


想像してみただけでとろけた顔になって抱き着いてきたレジーナを、今度はわたくしが受け止める。


「座りましょうか」

「そうね」


そうして応接セットに案内されようとしたわたくしだったけれど、そこで初めて見る薔薇に出会ってしまった。


「あら……この薔薇、少し珍しいわね」


飾り棚の花瓶に飾られた、薔薇の切り花。


それは赤と白が刷毛目のようにまだらになっている、複雑な色合いの中輪の薔薇だった。

芳香は強い。

けれど、フルーティな甘さで爽やか。


「クラリッサお祖母様が住んでいる別邸に咲いていたお花をね、先日、頂いてきたのよ」


レジーナの言葉に、ふと、これまでも何度かその名前が出てきていたことを思い出した。


彼女の父方の祖母だったわね、クラリッサ様……。

とてもしつけが厳しい人で、一緒にいる時は緊張するのだと、レジーナ自身がかつて語っていた記憶がある。


「そうなのね。素敵な薔薇。でも、見たことがない品種。最近の流行より、少しレトロね」


わたくしは近寄ってみたり、遠ざかってみたり、匂いを嗅いでみたり、四方八方からまじまじと薔薇を観察する。


最近の流行は花びらの先がもっと丸くて、柔らかい雰囲気を醸し出しているもの。

色も比較的淡めのものが人気。

そのため、この薔薇は人によっては「強すぎる」とか「懐かしい」とか「古くさい」と感じるかもしれない。


「え、アメリアでも知らない品種?」

「ええ。完全にチェック不足だわ。ここ最近の新種ばかり追っていてもダメね」


そこはしっかりと反省することにした。

ちゃんと昔の品種についても学んでおかないと。


私たち「育種家」は、古き良き種から新しい種を生み出して過去から未来へと種を繋げていく、そんな次代への架け橋のような存在でもあるのだから……。


「品種名って聞いてる?」

「さぁ、何だったかしら……。お祖母様がまだ新婚だった頃に植えて以来、ずっと引き継いできているらしいわ」


ただ、分からないなりに、このレジーナの補足でヒントは得られたのかもしれない。


「だったら、その頃に流行していた品種かも」


お父様とお母様に訊くか、家にある古い専門書をあたって情報収集してみよう……。


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