最終回:魔王発狂、俺は|溺愛《お世話》係なんざ頼んでいない!
突然ノクティスの身体が眩い光に包まれ、辺り一帯を照らし出す。
「うにゃあああああああ!? (な、なんだこれはああああ!?)」
慌てふためくノクティス。しかし、そんな彼とは裏腹に、光が静かに収まると、彼は人型へと戻っていた。
だが――その姿は全裸。
日に当たることがないからか、陶器のような白い肌にほどよい筋肉がガッツリと露出しており、ここに魔族警備隊がふらりと通ってしまえば、秒で露出狂だ! と捕獲され兼ねない痴態。
そんな彼の全裸を凝視しながら、エミリアがふと口を開く。
「魔王様って、引きこもりの割にいい体してますね? 形や大きさも……とてもいいと思います!」
「は? 何を言っているのだ、お前は……」
自身がまさか裸であるとは思っていないノクティス。不思議そうに首を傾げながら彼女をまじまじと見つめる。
だが、エミリアと視線が交わることがない。というか、彼女の視線はなぜか“体”と言っているにもかかわらず、下の方に釘付けになっている。
ノクティスはその視線に怪訝しながら、釣られて自身の視線を下げ――
「な──っ!」
あられのない姿を直視してしまう。
「な、なな、なんだこれはああああああ!? み、み、見るな! 見るなぁぁぁ!」
それは急所すら隠されることなく放り出され、ノクティスは顔を真っ赤にさせながら両手で必死に身体を隠す。
しかし、かなり動揺してしまったらしい。久しぶりに魔力が戻ったこともあってか、急激に魔力が暴走し始め、周囲には稲妻や炎が荒れ狂い始める。
「魔王城が崩れるぞ!」
「逃げろ逃げろ!」
久しぶりの魔力暴走で、なおかついつもより威力が増し増しなそれに、場内にいた魔族たちも大混乱。
「もう~魔王様ったら、仕方ないですね?」
そんなノクティスや魔族たちに呆れた様子でエミリアは肩をすくめると、ポケットから砂漏を取り出しそれをくるりと反転させる。
すると、砂がひたひたとゆっくり落ち始め、魔力暴走が次第に収まっていく。
「あ……?」
その状況に唖然とするノクティス。エミリアはそんな彼にくすりと微笑むと、そっと近づき素早く服を掛けてやる。
「はい、これで大丈夫ですね! 魔王様、一旦落ち着きましょうか? 深呼吸しましょ!」
「なぜ魔王である俺が深呼吸などせねばならんのだ!」
「魔王様? そんなに魔王だ魔王だって言ってると、逆に威厳が下がっちゃいますよ〜? ほら、深呼吸ひぃ――はぁ……って!」
「なんだ、その深呼吸は! 怖がって落胆するってどんな心境なんだ!」
相変わらず鋭いツッコミを入れるノクティスだが、やはりエミリアは気に留めない。
ケラケラと笑いながらも落ち着きました? とにこり。
そんな彼女の発言で、ふと我に返るといつの間にか動揺していた気持ちが薄れている。
ノクティスは顔を赤くしたまま目を逸らしボソリ。
「……くっ。助かった……。だが、それとこれとは別だ!」
そう言うと厳しい表情に変え、地面に崩れ落ちたエミリアの父親を指差し、問いかける。
「こいつはどうするつもりだ!」
その疑問に、一瞬首を傾げるエミリア。しかし、すぐハッとした様子で手をポンッと叩く。
「うーん、殺さなければなんでもいいんですよ? あっ! 爆h……」
だが、すべてを言う前にノクティスによって遮られてしまう。
「いや、それは殺してるだろ!? なぜそんな平然と物騒なことを言えるんだ!? しかも血の繋がりはないとはいえ、育ての親だぞ!?」
彼女の唐突な言葉に、ノクティスは再びツッコミを入れるがエミリアは本当に問題ないと思っているのか――無邪気に笑うと元気よく言い切る。
「あはは〜! 私の目の前で死ななければノーカンなので!」
「ええい、もういい! お前の謎理論など誰が聞くものか! こいつを牢屋に放り込んでおけ!」
ノクティスはそう言うと、魔族警備隊がやってきて、手際よくエミリアの父親を魔法無効が施された牢屋へと連行した。
彼女の父親は、最後まで「泥棒猫魔族!」「私が失敗しても、子孫たちがお前の首を討ち取ってくれる!」とかなんとか喚いていた。
だが、ノクティスもエミリアも特に気にした素振りは見せず……。
(よく分からんが、ようやく終わったか)
そう内心で呟くと、彼はホッと肩の力を抜いた。
「いやあ〜なんか大変でしたね〜!」
「他人事みたいに言っているが、お前も私の猫化に一枚噛んでるだろ!?」
「いやいや! 私は魔王様専属の溺愛係ですよ? そんな悪さしたみたいに言わないで下さいよ〜!」
エミリアはケタケタと笑いながらもうーんと大きく伸びをしてみせる。
そんな彼女の首元には、未だに着いた謎のチョーカーが。ノクティスはそれを一瞥すると、なんの迷いもなくチョーカーに触れる。
「あ、魔王様ダメですよ〜? ビリッ、ビッ、ドーン! になっちゃいますからね?」
瞬間、エミリアは彼から離れようとするが、ノクティスはエミリアの動きを封じ一言。
「これはもう必要ないだろ?」
そう言うと、ニヤリと不敵な笑みをひとつ。魔力をチョーカーに込めると、いとも容易く破壊してしまう。
すると、エミリアの体が急激に光を放ち始める。
「え、なんですかこれ!」
「いや、俺に聞かれても分かるわけないだろ!?」
「え、え、え、なんか体が変です! なんか熱い? 違う。え、魔王様助けてください!」
突然のできごとに、あたふたとするエミリア。ノクティスは落ち着けと、彼女に腕を伸ばした瞬間――
パリンッとガラスが砕けるような音とともに、エミリアの身体が大人の姿へと変化していく。
「……は?」
ノクティスは思わず目を見張り、素っ頓狂な声を上げる。
そんな彼の眼前には、胸元こそ“残念”さが残るものの、まるで精巧な人形のような美しい女性の姿が。
「──お前は誰だ!」
思わず怒声をあげるノクティス。しかし、女性はにこりと微笑むと当たり前な様子で口を開く。
「え〜! 魔王様、冗談でもそれはダメですよ? いやあ〜私ってこんな姿になるんですね!」
女性はにこにこしながら自分の体をまじまじと見つめ、どこか嬉しそうにキャッキャしている。
だが、そんな彼女とは裏腹に、急に大人の体へ成長してしまった服はほぼ機能せず、隠れているのは恥部のみ。
「お前、エクレア……なのか?」
ノクティスは露出面積の多いエミリアを直視できず、顔を逸らしながらも尋ねた。
「はい、魔王様の溺愛係のエミリアです!」
「誰がお世話係だ! お前が勝手に――っ!」
ノクティスはその言葉に脊髄反射するように、一瞬だけエミリアを見やるが、すぐに顔を逸らし、部下である魔族を呼び寄せると、彼女に適切な服を与えてやる。
「えへへ〜この服、私にピッタリですね! どうですか〜?」
エミリアは、用意された服を着るなり、くるりと回りながら微笑む。ノクティスはそんな彼女を凝視しながらも、無意識に胸が高鳴るのを感じた。
(なんだこの感覚……)
そう訝しげるが、すぐに疑問を一蹴すると、声を荒らげる。
「ど、どうもこうもない! 着れる服があって良かったな!」
そう言って適当に取り繕うが、その様子を見たエミリアは、優しく微笑みながら彼に一歩近づく。
「ふふっ。魔王様、お顔が真っ赤ですね〜いちごみたい!」
「はあ!? こ、これはただの風邪だ! そうだ、風邪なのだ!」
「そうなんですね~? なら私がうーんと甘やかしてお世話してあげなきゃですね!」
そう言って優しく彼の手を取るエミリア。ノクティスは真っ赤になりつつも、小声でぼそりと呟く。
「……ふん。別に、俺はそんなもの望んでなどいないからな!」
そう抗議の声をあげるノクティスだが、その表情はどこか満更でもない様子。
彼女をチラリと横目で一瞥すると、そっと視線を逸らし内心でポツリ。
(俺は溺愛係なんざ頼んでいなかったが――これはこれで良いな。エクレアよ、もう少しだけ、私のそばにいることを許してやる)
小さく口角を上げるのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございました!この後、後日談をちょこっとだけ掲載予定です!
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完結は4/6を予定しております。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします!




