明日の話
洗い物をして、明日のご飯の準備をして、ようやく今日の仕事はひと区切りだ。
あたしは自分の小屋に戻って、もらったばかりの蒲団を敷いて転がった。
蛇神様のことはいろいろ気に食わないけれど、蒲団はいいものだ。今日は蒲団なしで眠る羽目になりそうだったから、余計にそう思う。
今日はいろいろあったような気がする。
庵さんのノートは、そのまんま烏丸さんに預けてきた。あのノートはそのまま烏丸さんが持っていてくれるといいんだけれど。庵さんのことはどうにかならないのかなって思うけれど、たぶん彼女はここにはいられないんだろうなって思う。歯がゆいって思うのは、あたしの勝手なのかなあ。
兄ちゃんと氷室姐さんの関係は、妙だなあと思った。あのふたりは本当によくわからない。氷室姐さんはお酒好きみたいだし、兄ちゃんは普通にあしらっているみたいだし。それとも神様はお酒が好きだから、ああいうのが普通なのか。あたしが知らないだけで、あのふたりにもなにかあったのかは、聞いても教えてくれないかもなあ。兄ちゃんはあれで格好つけだから。
正直、一番驚いたのは海神様と蛇神様の関係かもな。あのふたりの関係なんて、誰が想像できたのかって思うんだけど。少なくともあたしは想像できなかったけれど、氷室姐さんの言い方からして、皆知っていたことみたいだし。
それになあ……。
あたしはごろんと天井の梁を見ながら考える。疲れているはずなのに、なにがどう興奮しているのか、なかなか寝付けずにいた。
御先様と話ができた。そのことが、少しだけ誇らしかった。
あの人は大した話なんてしてないって言っていたけれど、それでも十分だった。あの人が何者なのか、すこしはわかったような気がするから。
わかった気になっているだけで、大してわかっていないのかもしれないけれど、それでも。あたしには嬉しいことなんだ。
古い物が壊れて、全部更地になって、忘れられる。それは当たり前なことかもしれないし、仕方がないことなのかもしれないけれど。ただそれを「そのとおり」って肯定はできなかった。
もしかしたら、あたしがしたことは無駄なことかもしれないし、後悔する日が来るのかもしれないけれど、今は。
この時間をもっと長く引き伸ばしたい。
いつかあたしがここに必要なくなる日までは、ここにいたい。
それは子供のわがままかもしれないし、きっと御先様に言ったら鼻で笑われるかもしれないけれど。あたしは、ここにいたい。
そこまで考えたら、冴えていたはずの頭に一気に霧がかかったようになり、そのまま眠気が押し寄せてきた。
うつらうつらとしながら、ぽつんと思う。
明日はいったいなにをつくろう。
あまりにもいつもどおりのことを頭に浮かべたところで、すこんと眠りについてしまった。
本日8月22日に、書籍版「神様のごちそう」発売となります。
本屋で見かけましたら、どうぞよろしくお願いします。




