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008 砂浜でのクエスト-2

 「あいつは今回のクエストとは関係ないが、一応倒しておくか。」


 俺はあのあとも狩りを続け、もう一体ストーンシェルタートルを倒した。残念ながら今度は石の甲羅はドロップせず、変わりにストーンシェルタートルの肉というアイテムがドロップした。亀の肉とかあまり聞かないが、美味しいのだろうか?

 そのあとも狩りを続けていると、内側が鋸のようにぎざぎざとしている鋏を持った蟹を見つけた。姿は、西表島にいるノコギリガザミに似ている。ただし、大きさはあれより上だが。

 俺は仮称ノコギリガザミに向けて牽制の意味合いを込めてチャクラムを放つ。

 チャクラムがノコギリガザミに当たろうとしたその瞬間、ノコギリガザミは俺から見て左の鋏でチャクラムを掴んだ。ノコギリガザミの鋏には耐久度の減少効果があるらしく、暫くしたらチャクラムは消滅した。っておいおいそんなこともあるのかよ……


 「相手に掴まれることもあるのかよ、畜生!」


 俺はそう叫びながら、ノコギリガザミに向かって走っていった。いっておくがこれは近接戦闘に持ち込むためのものであり、決して武器を一つ壊されてやけになってる訳ではない。

 というか、ここで知れて良かったわ。もし壊されたのがベース系の武器じゃなくてたっぷり強化してあるやつだったら、立ち直れん。

 若干逃避気味にそんなことを考えながらノコギリガザミに接近し、まずはチャクラムを破壊した憎き鋏にむけてバク宙するようにして蹴りを叩き込む。


 するとノコギリガザミはもう片方の鋏を振り下ろしてくるので、それを右手に握ったチャクラムで防ぐ。するとチャクラムの刃に当たったせいか若干のダメージがあったようだ。

 これは森の中でフェイスツリー相手に接近戦をやってる時に気づいたことだが、どうやらチャクラムによる格闘は、防御すらも攻撃になる超攻撃型のスタイルになるようだ。

 ノコギリガザミが最初に蹴りあげた左の鋏で薙ぎ払ってきたので、俺はそれを避けずにあるスキルを使ってみる。

 スキルを発動するために手で印を切り、印を切り終えたら、スキルの名称を言う。


 「《変わり身の術》!」


 俺がそういうと、俺がいた場所から煙が発生し、その煙がおさまると、俺は既にノコギリガザミの攻撃範囲にはおらず、変わりに丸太がある。

 《変わり身の術》とは、ご想像のとおり変わり身を置いて避ける術だ。何故変わり身が丸太なのかについては、分からない。クールタイムは5分だ。本来は印を切るか音声認識のどちらかで十分なんだが、その辺は一種のRPだ。

 そのあとも俺はさながら踊りでも踊るかのように攻撃と|防御(攻撃)と回避を繰り返し、その間に5分経過したので《変わり身の術》を使って攻撃を避けたりしながら、ノコギリガザミを倒した。

 ドロップアイテムは、これだ。


――――――――――――

ノコギリシザーの足

重量:1 レア度:1

 ノコギリシザーの身がたっぷりと詰まっている足。

 ノコギリシザーの身の味は濃厚で、美味とされている。



――――――――――――



 説明を見るかぎりでは、なかなか美味しそうである。というかリアルでもノコギリガザミは美味とされてるので、間違いなく美味しいであろう。

 これは後でゆっくりと味わわせてもらおう。

 そんなことを考えつつ、俺は狩りを続行した。


――――――――――――



 あのあともストーンシェルタートルとノコギリシザーを倒しつづけ、ノコギリシザーを4体、ストーンシェルタートルを16体倒したところで石の甲羅が10個揃い、後は防具屋に持っていけばクエスト完遂である。 ノコギリシザーはまたチャクラムを破壊されたら堪らないので、出来るだけ無視したのであまり倒していない。

 ちなみにストーンシェルタートル相手に接近戦をやってみたりもした。ストーンシェルタートルの行動は、回転攻撃と甲羅の中に篭るだ。

 回転攻撃は前兆が分かりやすいので、楽に避けられる。《変わり身の術》を使って《忍術》スキル上げの相手になってもらったりもした。《忍術》スキルは、これで覚える特殊スキルを使うことによりレベルが上がる。

 問題は、甲羅に篭るだ。

 この状態になると防御力が上がるらしく、低火力のチャクラムとの相性は最悪だ。チャクラムを使っても無駄に耐久度を減らすだけなので、無手でタコ殴りにさせてもらった。

 ストーンシェルタートルからは甲羅と肉以外はドロップしなかったが、ノコギリシザーからは、鋏と味噌がドロップした。

 ここまでの所用時間約3時間。モンスターとの戦い自体はそんなに手間取っていない。精々甲羅に篭ったストーンシェルタートルに苦労したくらいだ。

 では何故こんなに時間がかかったのか。答えは簡単だ。モンスターが少ないのだ。

 べつにモンスターが少ない分には楽でいいのだが、こういうレベリングや素材集めの時に苦労する。怠惰ボスには怠けるにしてももう少し仕事をしてから怠けて欲しいものである。



 「さて、後は帰るだけだ。」


 俺はそういって帰ろうとした次の瞬間、何やら《気配探知》スキルで海の方から何かが近づいてくる気配がしたので、立ち止まって海の方を見る。

 暫くすると巨大な影が見えてきて、それは徐々に形になり、やがて大きな蟹になった。大きさは俺の1.5倍はある。どう見てもボスである。

 そういえばWikiでここには雑魚を20体倒すとフィールドボスが出現すると載ってたな。すっかり失念してた。


 またしても逃避気味にそんなことを考えていると、仮称巨大蟹が近づいてきた。フィールドボスには石像がないので、これだけは例外的に戦闘前に名前を知ることができない。蟹らしく横歩きである。

 敵にやられて死に戻りしてしまうと、クエストは達成できない。しかし、今の戦力で勝てるとは思えない。しかもノコギリシザーを見たかぎり蟹系のモンスターと投擲武器の相性最悪。いくら《格闘》スキルがあるとはいえ、それだけでは勝てないだろう。

 瞬時にそこまで思考を巡らせた俺がとった行動は、もちろんあれである。


 「あばよー、とっつぁーん!」


 20世紀の末に第一作が作られ、今でも大人気の某怪盗風に捨て台詞を吐きながら、俺は逃げた。



――――――――――――



 各種の忍者装備による補正がかかった俺の《隠蔽》スキルは、ボスにも通用したようで、駄目押しで《無音歩行》スキルも使い、さらに《敏捷強化》スキルの恩恵で移動速度も上げ、《跳躍》スキルで歩幅も稼ぎながら移動する。それに加えてあのフィールドボスは、それほど足が速くない。

 これだけ条件が揃っていれば、敵を撒くには十分である。

 巨大蟹を撒いた後、俺はオーランの村に歩きで戻った。

 あの蟹野郎め、覚えてろ……

巨大蟹「待てー、ル○ンー!」

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