011 初めての生産活動とパーティの勧誘
翌日、俺は午前中に森に行き、素材をとってきた後再び宿に戻り、午後は生産活動に従事することにした。
えっ、森はどうなのかって?前回と同じ感じで素材を回収しながらビックビーとフェイスツリーを適当に倒したりしたから、特に語ることはありません。せいぜい戦ってる時に木を切り倒してしまい、楠の幹というアイテムを獲得したくらいです。
足りない材料を道具屋で買ったり井戸で水を採取したりした後、俺は宿で生産活動をはじめるのであった。
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「さてと、まずはこいつを作ってみるか。」
俺は今の段階で《忍具製作》スキルで作れるものを確認し、まずはスキルのレベル上げがてらあるものを作ることにした。
まず、楠の幹の一部を切り出し、下駄の形に加工する。木を加工するには刃物が必要だが、それはチャクラムで代用させてもらった。
次に、再び楠の幹を切り出し、それを板状に加工する。
加工した板をさらに加工して、ドーナツのような形の板にして、それを四分割する。
四分割したドーナツ状の板を道具屋で買った紐でなるべく隙間ができないように繋げ、その中央に最初に作った下駄を置き、下駄の四つの頂点とドーナツ状の板を繋げ、完成である。
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水蜘蛛
重量:2 レア度:2
制作者:海月
両足につけると、水上を歩けるようになる。
《忍術Level 4》で、《水蜘蛛の術》が使用可能になる。
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水蜘蛛の術というのは、漫画やアニメでよくある水の上を歩くあれである。
これを使う機会があるかどうかは分からないが、作っといて損はないと思い、作っておいた。
というかこれ携行炉いらないな。もう少し早めに作っておけば良かった。
そのあと同じ手順で水蜘蛛をもう一つ作った後、今日の本題に入ることにした。
まず携行炉を用意し、そこにベースチャクラムとビックビーの針を入れて、溶かす。
次に再びビックビーの針をとりだし、そこから毒液を抽出し、それを井戸水と混ぜる。
ベースチャクラムとビックビーの針を溶かして混ぜ合わせたものを道具屋で買ったやっとこで掴み、それを携行炉に付随しているハンマーで叩いた後井戸水と毒液を混ぜた液体に漬け、冷却する。
そのあとは熱しては叩いて冷やしを何度か繰り返し、完成である。
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蜂戦輪
重量:2 レア度:2
制作者:海月
攻撃力:15
ビックビーの針と毒液を使って作られたチャクラム。
稀に敵を毒状態にする。
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戦輪というのは、チャクラムの別名だ。また戦輪は忍具であるから、《忍具制作》スキルでも扱えるのだ。
そのあともう一つ蜂戦輪を作り、それで今日やりたかったことは終わりだ。手裏剣や苦無は鉄が必要なようで、まだ作ることができない。
このあとは、そうだな、誰か適当な職人クラスの人に防具を作ってもらうか。
そう思い、俺はある人にフレンドメッセージを送った。
その返事は、神託所の前で待っているというものだった。
アイテムボックスから必要なアイテムを取り出した後、俺は神託所へと向かった。
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神託所につくと、そこには既に俺と同じくらいの身長の青髪を腰くらいまで伸ばした女性がいた。 俺は女性に近づいて声をかける。
「よ、待たせたか?」
「いえ、今来たところよ。」
俺が声をかけると、その女性、エレナが答える。
俺が防具製作を依頼したのは、エレナだ。まあ伝手がある職人クラスはエレナしかいないため、それも当然だろう。
「確か防具製作の依頼だったよね?」
「そうだ。とりあえず防具一式と素材を全部預けるから、それで適当に作ってくれないか?」
「分かったわ、そういうことなら引き受けるわ。明日の朝に引き渡すわ。」
「明日の朝って半日じゃねーか。防具の製作ってそんなに時間がかかるものなのか?」
「ものにもよるけど、今の段階なら遅くても今夜中には完成するわ。でも、そんな時間に引き渡されても迷惑でしょ?」
「いや、べつに問題無いぞ。こちとら忍者だ、夜には強い。」
「それはクラスじゃなくて、PSの問題でしょ。分かったわ、そういうことなら今夜受け取りに来て。」
「分かった、そうさせてもらう。」
俺とエレナがそんなやり取りをして、今着けてる防具や素材をエレナに渡したりしていると、突然神託所の中からぞろぞろとプレイヤーが出てきた。
みんな沈鬱な表情をしている。
スキルをとったりクラスを変えたりしたときは、少なからず表情が緩むものだから、それは恐らく違うだろう。
彼等は恐らく死に戻りをしたのだ。
このゲームでは死に戻りをした際は、神託所の神父さんのところに行くらしい。
確か逝きかけた魂を神が捕まえてそれを神父さんが現世に固定しているとかそんな設定だったと思う。
死に戻りプレイヤーの中に見知った顔を発見したので、声をかける。
「よ、イルカ。おまえがいるってことは、こいつらは攻略組か。随分とこっぴどくやられたみたいだな。」
「海月か。見ての通りだよ。ちょっと愚痴っていいか?」
「おう、聞くくらいならしてやるぜ。」
俺はイルカに愚痴を言う許可を出すと、イルカは話しはじめた。
「今日ベータの時に倒せた草原のボスに挑んだんだが、元々の仕様か巽稔が何かしたのかは知らないが、ベータの時よりやたら強いんだわ。明らかにスピードも防御力も上がってるし、攻撃力も段違いだ。」
なるほど、それは由々しき事態だな。
まあ気の毒だとは思うが、気ままなソロプレイヤーの俺には関係ないことだ。
「なるほど、それはお疲れなことで。まあ俺には関係ないことだな。せいぜい頑張れや。」
俺がそういうと、イルカがにやりとあくどい笑みを浮かべた。あー、これは何か企んでる時の顔だ。
「今日は宿もとってあるし、帰らせてもらうよ。エレナ!いい防具を期待しているぞ!」
「状況がよく分からないのだけど。あ、防具の方はしっかり仕上げておくね。」
俺は若干呆然としているエレナにそういうと、その場から|去る(逃げる)ことにした。
「まあまあそういわずにちょっと話を聞くだけでいいので。というかいつの間に女性プレイヤーと知り合ったんだこの野郎。」
しかし回り込まれてしまった!
「エレナとは昨日宿がとれなくて路頭に迷っていたら、泊めてくれたんだよ。これでいいだろ?」
「女の子のところにお泊りしたのか、そうなのか。ならなおさら手伝ってもらわないとな。リーダー!こいつが前掲示板に上がってた俺の友人です!」
俺の言葉が終わるか終わらないかと言うところでイルカはそういって誰かを呼んだ。畜生!薮蛇だったか!
「どうしたイルカ、いきなり呼んだりして。」
イルカに呼ばれてきた人物は、迷彩服に身を包んだ人物だ。
その人はだいたい俺より少し高いくらいの身長で、年齢は俺よりも上のようだ。いかにも軍人ですという顔で、黒髪を角刈りにし、目の色も黒だ。
「リーダー、こいつが前言ってた奴です。」
「ん?ああ、君が件のイルカの友人か。始めまして。私は正哉吾赤勝々(かつかち)速日というものだ。呼びにくいだろうから、リーダーと呼んでくれ。」 リーダーはそういいながらチャットで漢字を教える。昨日から読みにくい名前の人によく出会うな。
こうなったらもう諦めるか……
「始めまして、俺は海月といいます。で、何のようですか?」
「話というのは、今回のボス戦はご覧の通りの有様だった。こうなったからには次も挑むだろうが、その時は君も一緒に来てほしいんだ。」
俺のそっけない返答を歯牙にもかけずにリーダーがそういう。というかちょっと待て、今のは俺の聞き違いか?
「ええっと、今何て言ったんですか?」
「次のボス戦の時に一緒に戦ってくれといったのだ。」
どうやら聞き違いではなかったらしい。つーか、戦力が足りないのは分かるが、何でソロの俺に白羽の矢が立つんだ。
「君の戦いが掲示板に上がっていたから見させてもらったんだが、回避も攻撃もなかなかうまいと思ったので、誘わせてもらった。」
リーダーが俺の疑問を読み取ったかのようにそういう。
つーか、いつの間に撮られてたんだ俺。後で掲示板をチェックせねば。
しかし、ボスには元々適当に野良パーティーを組んで挑むつもりだったから、渡りに船である。だが一つだけ懸念事項があるから、そこを確認させてもらおう。
「一緒にボスに挑むこと事態は吝かでも無いが、一つ確認させてもらう。ドロップアイテムの分配はどうするんだ?」
「その辺はとった人が貰うということになっている。」
俺のその疑問をまるで予期していたかのようにリーダーはそう答える。
なるほど、一番一般的だが、このゲームのアイテムドロップは完全にランダムだから、それが一番いざこざが怒らずにすむか。
「そういうことなら、協力させてもらいます。期日はいつですか?」
「三日後だ。集合場所は、ボスの石像のところだ。」
そのほかにもリーダーからボスの情報を聞いたら、俺はイルカとリーダーと若干空気になってるエレナに別れを告げ、宿に戻った。
リーダーの名前は、正哉吾赤勝々速日といいます。忘れないように。
……これ多分作者も忘れるな。
水蜘蛛については作者のにわか知識ですので、間違いがありましたら指摘の方をお願いします。




