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とある兵士と少女達の別れ4

 第24話です。



 荀コウと李儒の話し合いは辺りが暗くなるまで及んだ為、ジェフ達一向は荀家の屋敷に一晩泊まることになった。

 豪勢な食事、とまでは行かなかったが、荀イクと戲志才が帰ってきた事と2人がまた旅立つという事もあって、ささやかながら小さな宴会を、と荀コウが手配したようだった。


(まあ、自分の娘を死なせない為とはいえ、親なら何かしてやりたいと思うのが普通だわな)


 ただでさえ狙われている為、火が使いにくい状態で夜遅くに食事の準備をしているので、時間がかかっているようだった。

 そんな暇な時間をジェフは庭で頬杖をついて1人で、ボーっとしていた。


(徐栄に聞いた感じじゃあ、こっからかなり遠いみたいだからな、しかも徐栄の故郷も近いらしいし、あの親父も多少は考えてるらしいな…だが、ちっと遠すぎるんじゃねぇか?)


 話が終わり徐栄達と共にあてがわれた部屋に徐栄と李儒を呼んで、青州の大体の位置をノートPCで指し示して貰った為、場所自体は理解したジェフだったが、森の二倍以上の距離を子供連れで踏破する算段を考え、ハッとして首を振った。


(何考えてんだ俺は? それを気にすんのは徐栄達であって俺じゃねぇよ)


 顔を振ったジェフは、再び頬杖をついて自身の次の目的地へと思いを馳せるのだった。


 〇


 所変わって、徐栄と李儒は部屋で顔をつきあわせて考えていた。

 荀コウとの話し合いの末、今は荒れている為、誰も行きたがらない青州の端まで移動する羽目になったのだった。

 徐栄の故郷近くとはいえ、洛陽から青州の端まで行けるのか、と言う難題に徐栄と李儒は顔をしかめていた。

 そして徐栄は、李儒に疑問を投げかける。


「治安など、何処も似たり寄ったりだが、トルーマン殿がいない状態で果たしていけるだろうか?」


 徐栄の疑問に、目をつむって考え込んだ李儒が答える。


「何とも言えないわね。路銀を頂いたけれども、洛陽で買い物は出来ないし、足りない物はほかの地域で購入しないといけない上に大人数でわたし達は移動しないといけない。(ほう)ちゃんに沙摩柯と、微妙だけれど、(らん)と何平ちゃんかしら。どちらにせよやるしかないとしか言えないわね」


 言い終えて李儒は、はぁ、とため息をついた。

 李儒はジッと徐栄を見つめたが、徐栄と目が合うと徐栄は首を振った。


「絶対に駄目だ。(きょう)の言いたいことは分かるが、トルーマン殿を引き留めることは出来ないぞ」


 そう言われた李儒は、苦笑いをしながら答える。


「ええ、ごめんなさい。少し弱気になっちゃったわ。皆と行くしかないんだから、皆と考えながら行きましょう」


 ああ、と徐栄は返事をし、徐栄と李儒は互いに頷き合うと、用意して貰った服を着替え終えた頃に、準備が出来たと家人が呼びに来た為、直ぐに行くと返事をし、家人に荀イク達の下に案内されるのだった。


 宴そのものはつつがなく終わりを迎えた。

 騒ぐわけでもなく、荀イクと戲志才は荀コウと荀イクの母親に甘えるでもなく歓談していた。

 徐栄と李儒はその光景を見つめ、何とも言えない気持ちになっていた。


「悔しいものだな。(きょう)、何れ必ず此処に戻って来るぞ」


 徐栄の言葉に李儒も、勿論と頷くと徐栄と共に杯を傾けた。


 夜も更けて辺りは月明かりと虫のさざめきが支配していた。

 そしてそんな中、寝付けなかったのかジェフは部屋を出て屋敷の外壁近くを歩いていた。


(何でまた、眠れないのかねぇ。何時もなら、寝るときゃ何か無い限り確実に起きないんだが…)


 そんな事を考えながら歩いていたジェフは、ふと、人の気配を感じ辺りを見回すと、庭の中央にある池の近くに小さな人影があることに気付いた。

 ジェフは、足音を殺してその影に近付いていくと、人影の正体を確認する。

 池の近くにあった人影、荀イクと戲志才は抱き合って震えていた。


「桂花ちゃん~。きっと大丈夫ですよ~。何とかなりますから~」

「声の震えてる睦月ちゃんに言われても、説得力無いわ」


 荀イクも戲志才もお互い声が震えていた為、ジェフは何も言わずにその場を去ろうとしたが、荀イクと戲志才の会話が耳に入ったので立ち止まってしまう。


「やっと帰って来れたのに、今度は逃げなきゃならないなんて。何で私達なのよ…」

「まったくですね~。それに~、今度はトル~マン様がおられませんから~、桂花ちゃんの落ち込み具合も~、大変問題です~」


 戲志才に減らず口を叩かれた荀イクは、ボソッと言い返す。


「睦月ちゃんだって嫌な癖に」


 そう言い返された戲志才は、細い目を見開いて荀イクを見つめたが、直ぐにまた細い目になると、少しの沈黙後荀イクに答える。


「ですね~。とっても怖いし寂しいですよ~。萌さん達には悪いですが~、やっぱり~、私達が此処に帰れたのは~、トル~マン様のおかげですから~。まあ~、お互い様~、って奴ですね~」


 そう言われた荀イクは面白く無さそうに、頬を膨らませたが事実を言われたせいか黙っている。

 少しの間、沈黙が続いた為、話が終わったと感じたジェフは、邪魔しないようにそそくさと引き上げようと後ろを向いた時に、荀イクの声が聞こえた。


「今を何とか生き延びて、その後でトルーマンの手助けでもするわ」

「おお~、流石荀家の御息女ですね~。応援してますよ~」


 自分には関係無いという感じの戲志才に呆れながら荀イクがツッコミを入れる。


「睦月ちゃんも手伝うのよ」

「あれ~? まあ良いですけどね~」


 言葉とは裏腹に、戲志才も嬉しそうに答えるのだった。


 〇


 早朝、まだ朝日が昇っていない為、辺りは暗いままだったが、ジェフと徐栄達は荀家の裏門から出発しようとしていた。

 荀イクの母親が、門の近くで見送る為に徐栄達を一瞥した後、直ぐに門を閉じるのだった。

 少しの間、門を見つめていた荀イクと戲志才が、門に向かって頭を下げると踵を返して歩き始めた。

 その様子を見ていたジェフの口元が、うっすらと歪む。


(子供にこんな仕打ちをする野郎なんざ、ごまんと居るが相変わらず慣れねぇなぁ)


 ジェフがそう思いながら歯噛みしていると、その様子を見ていた戲志才がニヤリと笑って荀イクに耳打ちする。


「桂花ちゃん~。桂花ちゃんの為に~、トル~マン様は~、怒ってくれていますよ~。今なら~、ちょっとした~、我が儘も言えるかも~、ですよ~」

「睦月ちゃん、あんたはどうしてそう…」


 ツッコミを入れようとした荀イクに、ズイッと顔を寄せた戲志才が先制してトドメを刺しに来た。


「嬉しくないんですか~?」


 その言葉につまった荀イクは足早にジェフ達の前を移動し始め、それを見ていた戲志才が、おやおや~、などと言いながら荀イクに纏わりついていた。


「はぁ…、あいつらも、まあ今の所は大丈夫そうだな」


 呆れた表情のジェフに、徐栄と李儒も苦笑している。


「まあ、あの子達があの調子なら、今の所は何とかなるかと」


 徐栄がジェフにそう言いながら笑みを浮かべていた。

 その徐栄の様子を見ていた李儒は、徐栄の腕を引っ張ってジェフから少し離れた後、呆れ顔で徐栄に言った。


「萌ちゃん、良いの? 李栄様が行ってしまうわよ?」


 そう言われた徐栄は、李儒の言葉を理解出来ていないのか、困惑気味だった。


「う、うん? 確かに李栄殿とは別れることになっているが、一体どうしたんだ? 李栄殿の事に関しては、昨日話し合ったじゃないか」


 本当に分かっていないらしい徐栄に、李儒は両肩を落として溜め息をついた。


「萌ちゃん…鈍感も其処まで来たら対したものよ?」


 そう言って李儒に半眼で睨まれた徐栄は、どう言葉を返せば良いか困惑したまま押し黙っていると、荀コウから言われていた抜け道、今は封鎖された門前に到着した。


「あぁ…着いちゃった。漸く萌ちゃんが…」


 何か李儒が言いながら嘆いている様だったが、目的地に着いた為、ジェフが徐栄達に言葉をかけた。


「妙な旅だったが、此処でお別れだな。聞いた話だとかなり遠いが気をつけていけよ」


 言葉を切り出したジェフに、徐栄は頭を下げて答えた。


「此方こそ、大所帯だった私達を約束通りに洛陽まで連れてきていただいて、感謝の言葉が見つかりません。もし李栄殿がお困り事や青州に立ち寄った際は、是非私達に顔を見せていただけると嬉しいです」


 柔らかい表情で笑みを浮かべる徐栄に、機会があればな、と返すと徐栄はジェフに右手を差し出した。

 差し出されたジェフも喜んで右手を差し出して握手を交わし、自身の左頬を徐栄の右頬に合わせ口先でチュッと音を立てると、徐栄がビクリと身体を震わせた。

 徐栄が固まってしまった後になって、ジェフはやってしまったと気付いた。

 ジェフにとって親しい相手になっていた徐栄に、思わずBisu(ビズ)をしてしまったジェフは、大いに焦った。


(こりゃやべぇ!? 唯でさえ男に酷い目に合わされた奴に、迂闊にビズなんぞしちまった!? 握手してきたから思わずやっちまったが、何してるんだよ俺!?)


 考えてしまった為、一瞬沈黙してしまったジェフだったが、とりあえず固まった徐栄に声をかけようとすると、顔を真っ赤にした徐栄が涙目になって封鎖された門を通り抜けてしまった。


(さ、最悪だな。最後の最後で何をやってるんだ…)


 ガックリうなだれたジェフに、困惑気味の李儒が声をかけた。


「あ、あの~、李栄様? 今のは一体?」


 ジェフは落ち込んだ状態で李儒に、自分の国で親しい者同士がやる挨拶だと説明すると、李儒は満面の笑みを浮かべていた。


「李栄様、萌ちゃんにはちゃんと説明しておきますから大丈夫ですよ。ただ、まあ、気をつけて下さいね」


 そう言って右手を差し出して来た李儒に、ジェフは頭を掻きながら握手を交わすと、李儒が右頬を差し出して来た。


「お、おい、李儒?」


 困惑するジェフに李儒は、わたしは親しくないのですか? と言われた為、苦笑気味に李儒にもビズをする。

 すると、それを見ていた荀イクと戲志才が、右手を差し出して来た。


「李栄様~。勿論桂花ちゃんと~、私にもしてくれますよね~」

「なっ、睦月ちゃん!?」


 しれっと言う戲志才に、握手をした後、戲志才にもビズをすると、戲志才はにこやかになった。

 そして、荀イクの番になったのだが、荀イクはかなり慌てていた。


「う、うぅ…」

「桂花ちゃん~。絶好の機会ですよ~。藍ちゃん達もしてないんですから~、差を付けるんですよ~」


 そんな事を言っている戲志才を余所に、ジェフは荀イクと握手を交わすと頭を撫でた。


「なっ、へ?」


 ビズをされると思ってドキドキしていた荀イクだったが、頭を撫でられた為、拍子抜けした声を漏らした。


「嫌がってる奴に、んな事出来ねぇよ。じゃあな、荀イク。達者でな」


 そう言って後ろに下がろうとしたジェフの服の袖を荀イクが掴んだ。


「…いよ」


 袖を掴んで下を向いた荀イクが、ボソッと何かを言っているが聞こえなかった為、ジェフが耳を近付けると…


「私にもしなさいよ!! 私だけ仲間外れにすっむがっ!?」


 何故かと言うのも可笑しいが、キレた荀イクの口を塞いで辺りを見回したが、辺りに人の気配がしないことを確認したジェフが、荀イクに対してビズをすると、向き直る。


「焦らせんなよ、今度こそ、達者でな」


 そう言って後ろに下がるジェフに、荀イクが話し掛ける。


「萌姉さんと被るけど、何かあったら手伝うから来なさいよね!」


 そう言って頭を下げた荀イクに李儒と戲志才も倣い頭を下げた後、李儒達が門をくぐり抜けていく。

 ジェフはその場で3人の姿が、完全に見えなくなるのを確認すると、日が出始めた洛陽の街に消えていくのだった。



 遅くなってきましたが、少しずつ書いていきますので、ご容赦下さいませ。


 いよいよ、主人公が1人で行動開始いたします。

 洛陽の指定された場所には、一体何が待っているのでしょうか?


 漸く原作キャラ二人目が出せる!!



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