とある兵士と少女達の別れ3
第23話で御座います。
荀家の門前に着いた、ジェフと徐栄達一向はジェフと徐栄が辺りを警戒している状態で、李儒が門を叩くと守衛が出てきた。
何者かと守衛が聞いてきた為、李儒が荀イクを手招きして呼び外套を取らせると、守衛は目を見開いた後、辺りを見渡し壁になっていたジェフに徐栄と李儒達を門の中へと押し込めた。
「私まで入れられるとは思いませんでしたね」
ジェフは守衛が居る手前、とりあえず偽装を解かずに『李栄』のままで通すことにしたのだった。
守衛が案内した場所に待ちかまえていたのは、背丈こそ違うが、顔立ちが荀イクに似た女性だった。
「桂花…戲志才ちゃんも…良かった、生きていたのね…」
荀イクと戲志才は女性にされるがまま抱き締められており、2人共身体を震わせていた。
対する女性も2人を抱き締めたまま、静かに震えている。
その様子を見ていた、徐栄と李儒は安心した様な表情を浮かべていたが、ジェフだけは相手が予想でしかない為、一応徐栄に聞いてみる事にした。
「徐栄さん、ちょっと…失礼ですが、あの方は?」
小声でジェフに話しかけられた徐栄は、ハッとして説明しだした。
「はい、李栄殿。あの方は桂花の母君です。一度だけお顔を拝見しただけですが、間違いないかと」
徐栄がそう言われ、釈然としていないジェフだったが、感動の対面中暇だった為、周りの気配を探ったジェフは、妙な気配を感じ取った。
その為、ジェフは違和感の無いように室内へと促す事にした。
「夫人。対面中大変失礼かと思いますが、荀イク様と戲志才様は大変お疲れのご様子なので、何処かお部屋で休息を取られながらお話なさっては如何でしょうか?」
そう言うジェフを見た荀イクの母は、ジェフの目を見て何かを感じ取ったのか、そうですね、と言った後、荀イク達を部屋へと連れて行き、守衛に命じてジェフと徐栄、李儒の3人を別の部屋へ案内させた。
「此方でお待ち下さい。では、私はこれで」
そう言ってサッサと移動した守衛を見送ると、ジェフ漠然と室内を見渡していた。
ジェフの態度に妙な気合を感じた徐栄と李儒は、質問してみることにした。
「李栄殿。一体どうしたんですか? 何かありましたか?」
そう聞かれたジェフは、右肩を回しながら答える。
「いや、特になにも無いですよ」
そう言いつつ、ジェフは徐栄と李儒に体の前で小さく出した指で上を差し、一度だけ右人差し指で唇を抑えた後、笑顔になった。
だが、徐栄と李儒はジェフの目を見た瞬間に、同じ様な笑顔をして笑いながら世間話をしだした。
(おーおー、2人共、俺の意図を理解してくれたか)
内心でそう思ったジェフが、世間話に付き合っていると、扉が開いて身なりのよい男が入ってきた。
徐栄と李儒はすぐさま両手組んで礼を取った為、ジェフも同じ礼を取ると、一瞬男が訝しんだが直ぐに表情を引っ込めて話し始めた。
「ああ、3人とも顔を上げてくれ。ようこそ、私の名前は姓は荀、名はコウだ。娘を救い出してくれた事を、深く、深く感謝する…」
そう言って男、荀コウは頭を下げてきた。
顔を上げそれを見た徐栄と李儒は、神妙な表情で見つめていると、ジェフは頭上の空気が動いた瞬間に剣を抜き天井に向かって投げると、剣が天井に突き刺さる。
勢いを殺さずジェフは徐栄に指示を出す。
「徐栄!! 外だ!!」
そう言われた瞬間、徐栄は外に飛び出すと男が1人外に逃げようと塀の方向へ逃げていた為、外套で隠していた短槍を投げると、逃げていた男の足に突き刺さる。
屋敷内が騒然とする中、徐栄は逃げた男に追いついて男を確認するが、直ぐに徐栄は舌打ちをする。
徐栄を追い掛けてジェフに李儒と荀コウが来ると、徐栄はジェフ達に向き直る。
「申し訳ありません。賊を捕らえられましたが…」
ジェフも逃げた男を確認するが、肩を竦めるしかなかった。
「まあ、仕方ないな。徐栄、良い動きだった」
ジェフに言外で誉められる事はあったが、口に出して言われたのが初めてだった為、顔を真っ赤にして照れていると徐栄と笑いそうになっている李儒を余所に、荀コウは男の顔を見て自身の顔を振っていた。 その直ぐ後に、男が荀コウの近くに走って来た。
徐栄が身構えるが、荀コウが手で制し、男が荀コウの耳元間で移動すると、何か二、三言話したと思ったら直ぐさま走り去ってしまった。
「3人共すまないが、違う部屋で話がしたいのだが、構わないかね?」
男の言も合間ったのか、苦虫を噛み潰した様な表情でそう言う荀コウに、3人は頷くと荀コウの後をついて行くのだった。
暫く屋敷内を歩くとジェフ達は、小さな部屋に案内された。
四角い卓の上座に荀コウが座ると、ジェフ達にも座るように促された為、荀コウの正面に李儒が、左右にジェフと徐栄が座る。
3人が座ると居住まいを正して、再び荀コウは頭を下げた。
「重ね重ねすまない。やはりと言うか、私の屋敷にも宦官の手の者が居たようだ」
無念そうに顔をしかめる荀コウを、同じ様な表情で黙って見つめる徐栄と李儒だった。
その一方、ジェフは誰も見ていなければ欠伸をしそうなくらい、暇そうにしていた。
(空気的に付き合わないと駄目だろうなぁとは思ったけどよぉ、暇すぎるな。気配も今んところ感じねぇし)
ジェフがピシッとした態度を見せながら、内面では完全にだらけている中荀コウと李儒は話し合いを始める。
「初めまして荀コウ様。私は、李儒と申します。賊を仕留めた2人は、殿方が李栄様と申します。もう1人が徐栄で御座います。私は洛陽で文官をさせて頂いておりました。徐栄は武官で御座います。そして、李栄様は私達と共に荀イク様と戲志才様をお助けする際に尽力して下さった旅の武人です」
其処までを話すと、荀コウは名前を言われた相手に対して黙って頭を下げた後、続きを促した。
「荀コウ様。先ほど宦官の手の者を始末致しましたが、いずれまた用意して来るかと思われます。私達も非才なれど武官と文官の身、荀イク様達を助けた事が探られるのも時間の問題です。其処で…」
其処まで言うと、荀コウが李儒の発言を右手で制し、言葉を返した。
「うむ、今の状態ではいずれにせよ、良い状態になど、出来る訳がない。お主等に頼みがある…桂花を守ってやって欲しい。準備として、此処に少ないが金がある。これで、当座を凌ぎつつ青州に向かってくれ。かなり遠いが、それだけ奴等も手出しし難いはずだ」
荀コウと李儒が重苦しい中、話し合いをしている最中、徐栄は荀コウと李儒の話を真剣に聞いていた。
(うむぅ…やはりこうなるか…トルーマン殿抜きであの子達と共に東の果てへ、か)
徐栄はジェフを一瞥した後、静かに目をつむるのだった。
短くて申し訳ないです。
調べ物で時間を食われてる作者で御座いました。




