4.そのデートは危険な香り
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「この、ここからここに繋がるこのライン」
「なんというか、グッとくるな」
「言葉があっているのか分かりませんが、エロティック」
「存在の根源が揺さぶられるというか」
「わかります。胸の奥がこう、きゅきゅっとするというか」
「辛抱たまらんというか」
「我慢できなくなるというか」
「……我慢なんて、しなくていいんじゃないかな」
「所長。あっこんなところでっ。マナー違反んんンッ」
「アイシャくんも。自分の心に正直になった方がいい」 私はもう、我慢できないっ。
「しょ、しょちょう、ずるい」 あぁ、情熱に、流される。ながされて、しまう。
「はいはい。駄目ですよ。博物館内での魔法陣の模写はご遠慮ください」 なにやってんだ、床に魔羊皮紙とか広げんな。魔力インク壺の蓋開けっぱなしにすんな。カラス口はよく拭いてからじゃないと床にインクが垂れるだろこら!!!
「あぁっ。せっかくもう少しで書きあがるところだったのに!」 あと1時間あれば。
「はいはい没収没収。おねーさんはこの人を止めてると思ったのに。なんであんたも書いてるんですか」 嘘だろ、揃いもそろって駄目似合いカップルかよ。
「だって所長が楽しそうにしてるから……つい」 羨ましくなっちゃったの ><
「ついじゃないですー。見学の邪魔です。強制退去させてもいいんですよ?」 ごるぁあぁぁ(怒)
「それだけは堪忍を!」 こんなに楽しそうなアイシャくんを見れるのはここだけなんだ!
「『古代魔術史。魔法陣大全そのすべて』の展示ってあと一週間しかないんですよ?」 まだまだ見たりないのよ。
「私の記憶が確かなら、おねーさんたち、3回目ですよね」 うっそだろぉ。
「いいえ、5回目です」
「まだ見たいんだ」
「だってこの古代文字。今伝わっているのとはカーブのラインが違っていて。見てると胸がきゅんってしてくるじゃないですか」
「しませんよ」
「するよするする!」
「ねー!」
「ねー!」
「ねー! じゃねーよ。博物館の見学に来て模写するくらいなら出口の売店で目録買ってくださいよ。ウチの学芸員が本気で模写したすべての魔法陣が掲載されていますよ」
「もう買った」
「3冊買いました」
「私は18冊買った」
「自分で使う用、保存用、布教用以外にも?」
「職場で配って、実家の図書室や領地の図書館にも寄贈しようと思って」
「私にも、下さるんですか?」 え、やだ、きゅんだわ。うれしい。
「そうか3冊。迷惑だったろうか」 早く渡せばよかった。しょんぼり。
「いいえ、嬉しいです」 自分で買った1冊を領地へ送ろう。そうしたら里帰り中に読むこともできる。
「アイシャくん!」 初めての贈り物を喜んでもらえて嬉しい。
「所長!」 これで、恋人っぽさを演出できましたよね!
「魔術師さんたちって、静かに見学できないんですかね……」 意味わかんねぇ。特に最後の方……いや、最初から最後まで分かんないな、やっぱ。
香りはインクの香り
倒したら危険なのだよ☆
このお話しはかなりコメディ寄りでしたな




