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魔族との出会い

「そろそろ降りましょうか。」

「はい。」

これ以上近づくと、見つかるかもしれない。

それは避けたい。

だから、この辺りで降りて、歩いて行った方がいい。

森に降りた私達は、まず外套を脱いだ。

「外套は、私が預かるから、貸して。」

「はい。」

私は、サフィーの外套も回収する。

「さて、こっちよ。こっちから人間の気配がする。」

「分かってますよ、これくらい、私でも感じられますよ。」

「ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったの。サフィーにいい所見せたくて…」

サフィーのマネをしてみる。

こうやって悲しそうにしていると、励まさないとって気持ちになる。

「ありがとう、お姉様。私は怒ってませんよ?」

「本当に?」

「本当です。だからそんな顔しないで下さい。」

サフィーが抱きついて来る。

うん、やっぱりこの作戦いいわね。

バレたら絶対怒られるだろうけど…

「さぁ、人間の所に行きましょう。」

「はい…なんか、気配が弱くなってるような…」

「もしかして、マズイ状況なんじゃ…」

私達は、心配になり走り出した。







「クソが…」

俺は毒にやられてしまっていた。

「なんで、魔族が襲って来るんだよ…」

魔族、大陸北方に国を持つ種族だ。

三百年前の戦争以来、良好な関係を築いていたはず。

「なんで?もしかして、あの腰抜けが魔王なのが災いしてるかしら?」

目の前の魔族の女は、魔王を腰抜けと呼んだ。

「お前、『革命派』の魔族か!」

『革命派』

今の魔王は、人間と良好な関係を築いている。

しかし、それをよく思わない魔族もいる。

そいつ等の集まりを、『革命派』と呼んでいる。

そいつ等は、魔族の国だけでなく、人間の国にも攻撃を仕掛けて来ており、危険人物指定を受け、魔族の国では指名手配されるほどだ。

「そうよ、あの腰抜けを打ち倒し、強い魔族の国を取り戻す。そのための生贄として、死んで頂戴。」

魔族が剣を振り下ろそうとした時、

「ッ!?」

横から炎の槍が飛んできた。

「人間じゃないね。何者?」

二人の女が現れた。

何者って、見れば分かるだろ?魔族に決まってるじゃねか。

「貴女達、人間じゃッ!?」

さっき、炎の槍を飛ばした女が、また炎の槍を放つ。

「サフィー、そこの男を気絶させておいて。」

「はーい。」

そして、サフィーと呼ばれた少女が、俺に杖を振り下ろして来た。

「ぐぁ!?」

そして、俺の意識はそこで途切れた。







「私達が人間じゃない事は認めるわ、でも、それを人間の前で言うなよ?女。」

「随分な言い方ね?何者?」

私は、ペンダントの人化を解消する。

「なるほど、蜂の女王候補か…」

女は、ニヤリと笑って、

「ねぇ、私と一緒に来ない?人間への復讐を手伝って上げるわよ?」

私を、一つの駒として使おうって魂胆か?

「貴女が何者か知らないけど、私は人間を恨んでいないわよ?」

「は?…巣を破壊され、親を殺されたのよ?どうして恨まないの?」

「巣を破壊したのは私だし、お母様は人間に殺されなくても、死ぬつもりだった。私達のせいで。」

あの女は、訳が分からないという顔をする。

「お姉様、あいつ魔族だと思います。」

「魔族ね、魔族って友好関係にあるんじゃなかったけ?」

「あんな腰抜けの下僕と一緒にするな!!」

腰抜けの下僕…

過激派か?

世界や種族が違えど、思想の過激派ってのは居るものね。

「私は、この人間を回収するだけ、こっちから危害を加える気はない。」

「逃がすとでも?」

女魔族から強烈な魔力が放たれる。

「そっちがその気なら容赦はしない。」

私も、魔力を放つ。

数の利はこっちにある。

森の異変の原因もなんとなく分かった。

この人間が死んでも問題ない。

「人質なら諦めなさい、こいつが死んでもなんの痛手でもないわ。」

「チッ、いいわ、見逃してあげる。」

女魔族は、踵を返して歩き出した。

「人間共に伝えて置きなさい。抵抗する為の、準備時間はくれてやるって。」

「はいはい、あ、そうだ。」

私は、行こうとする女魔族の肩を掴む。

「人間が何人死のうが関係ないけど、私達に手を出すなら、本気で殺しに行くから。」

「分かった、私は直接手は出さない。」

魔物をけしかけるって訳か…

まぁ、畜生の群れに負けるほど弱くはないけど。

私は、倒れている男を担いで街へ向かった。









「厄介なものが居たものだ。」

交易都市『エリーレ』

要塞都市の役割も持つこの街を魔物の群れだけで落とせるとは、思っていない。

市壁の一部を破壊出来れば良かったが、イレギュラーが現れた。

「女王候補、不安の芽は摘んでおきたいが、あのデタラメな量の魔力。まともに戦えば私とてタダでは済まないだろう。」

まともに戦わなかったとしても、本来の目標が達成出来ない可能性が高い。

市壁を破壊するのが今回の目標。

戦力を削るより、街の防御を削る。

「出てくれば、ある程度の数で足止めして、残りで壁を破壊しよう。」

アリノア王国が弱体化すれば、隣のイベリル帝国が黙っている訳が無いだろう。

人間が潰し合っている間に、新魔王様に着任してもらえれば、憎き人間共への復讐は完了したも同然。

潰し合い、弱った所を我ら魔族が奪い取る。

そのために、ここを落とす必要がある。

私のこれは、単なる独断による行動だが、成功すれば、本格的な作戦が進めやすくなる。

「失敗するわけにはいかんのだよ、女王候補。」

私は、エリーレ攻撃の準備を再開した。


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