報告
「帰ったよ。」
私は、ギルマスの部屋に、ノックも無しに入る。
「ノックくらいしたらどうだ?」
「あー、次からはそうするわ。覚えてたら。」
ハーウェイは、呆れたように額に手を当てる。
「それで、その担いでるのが証拠か?」
「そう。私も詳しく知らないから、こいつから聞きましょう。」
私は、男を地面に落とす。
「痛っ!?」
男は、地面に落とされた痛みで目を覚ます。
そして、キョロキョロと辺りを見回した後、
「俺は、生き残ったのか?」
まだ、状況を理解出来ていないらしい。
「もう一回殴ったら、正気を取り戻すかな?」
「そうですね、それか股間辺りを蹴り上げてみます?」
「うん、君達はほんとに姉妹だってよく分かるね。」
そんなにヤバイ事を言ってただろうか?
ん?
「サフィー、こいつ顔色が悪いわよ?ちゃんと治療したの?」
「お姉様、喧嘩売ってるんですか?あの程度の傷も癒せないとでも?」
どうやら、嫌味に聞こえたらしい。
「ごめんなさい、サフィーを馬鹿にした訳じゃないの。」
「分かってますよ。本気で怒ったりしてません。」
急にイチャつき始めた私達を見て、男は困惑している。
「取り敢えず座ってくれ、何があったのか説明してくれないか?」
ハーウェイは、私達を無視して話を進めだした。
取り敢えず、私達も座ることにした。
男が話した内容は、私が把握している内容とほぼ同じだった。
魔物が一箇所に集まっていて、魔族が魔物を操っている。
魔族は、この街を襲おうとしてる。
「そうか…」
「魔族の目的は何なのでしょう?」
それは、私も疑問だった。
革命派の魔族が、何故魔族の国ではなく、アリノア王国のこの街を狙うのか、甚だ疑問だった。
「この街は、交易都市と言われている。この街で発生する利益はかなりのものだ。」
「…経済的な疲弊が目的?」
今日のサフィーは、なんだか頭が切れるわね。
「アリノア王国が経済的に疲弊すれば、隣のイベリル帝国が黙ってないでしょうね。」
「…もしかして、2カ国を戦争させるのが目的でしょうか?」
「…サフィー、貴女変なものでも食べた?」
「お姉様、後で覚えておいて下さいね?」
あ、これは謝っても許して貰えないやつだ…
「まぁ、要塞都市とも言われる、エリーレを魔物群れだけで落とせるとは思えないが…市壁を破壊される危険があるな。」
「むしろ、それが目的なんじゃないですか?」
どうしよう、サフィーがおかしくなった。
「この街を落とすというより、壁を破壊して、防御力を落とすことが目的なんじゃないですか?」
「…本格的な作戦の前の、準備ということか?」
「壁が一箇所でも壊れているだけで、攻略難易度は大きく下がりますよ?壁を壊せなくとも、冒険者の数を減らすだけでも、いいですし。」
サフィーの予想が正しければ、革命派の魔族は、この街の戦力を削り、壁を破壊して攻略しやすくするのが目的なんだろう。
「取り敢えず、革命派の魔族がスタンピードを起こそうとしている事に違いはない。冒険者の緊急招集をする。」
ハーウェイは、これでもギルマス。
判断は早い。
「ヘリスには、私の方から言っておこうか?」
ハーウェイが驚愕したような顔をする。
「何!?侯爵とつながりがあるのか!?」
「まぁね。それで、なんて伝えればいい?」
ハーウェイは、すぐに真剣な顔に戻って、
「スタンピードが起こりかけている、ということを伝えてくれ。最悪それだけで伝わる。」
まぁ、後で対策会議みたいなのが開かれるだろうし、そこで詳しく話すでしょ?
「分かったわ、じゃあヘリスにそう伝えてくるわ。」
私は、サフィーを連れて、侯爵邸へ向かった。
私は、ヘリスの名前を使って無理矢理中に入った。
「まさか、そっちから来るとは、何か面倒事か?」
「ええ、特大の面倒事よ。」
ヘリスは、なんだか嬉しそうにしている。
「ハーウェイからの伝言よ、スタンピードが起こりかけているってね。」
「スタンピードだと?規模は?」
規模?そんなの知らないわよ。
「森の魔物が全部集まるくらい。」
「そんなにか…」
「ちなみに、革命派の魔族が起こしてるわ。」
「何だと!?」
ヘリスは、机を叩いて立ち上がる。
「サフィーの予想だと、街の壁の破壊と、戦力を削るのが目的だと思われるわ。」
「壁の破壊?」
「本格的な作戦の準備じゃないかって話。」
ヘリスは、真剣な顔になる。
「なるほど、この街を落として、アリノア王国を疲弊させる気か…」
「王国が疲弊すれば、帝国が黙ってないと思うけど?」
ヘリスは、深いため息を吐く。
「分かった、街の兵を動かす。それと、このことを陛下に報告する。」
「この国の王は、正しい判断が出来る賢王か、それとも愚王か…」
ヘリスは苦笑して、
「陛下は、こういうときに正しい判断が出来る方だ。問題ない。」
まともな王だったか…
それなら、簡単にこの国が滅びる事は無いだろう。
魔神教が暴れなければ…
「二人は、参加するのか?」
「するに決まってるわよ。オークションをしてもらわないといけないから。」
「オークション?」
ヘリスは、オークションで出されるものの噂を知らないのか…
「オークションで、女王候補が出てくるって噂があるの。」
「何だと!?」
「だから、欲に塗れた馬鹿貴族に買わせて、夜襲して取り返そうって作戦があるの。」
そのためにも、オークションを開催してもらわないといけない。
「分かった、後始末は任せてくれ。」
「フフ、これでギルマスとヘリスの後ろ盾が出来たわね。」
安心して、貴族をぶち殺せる。
そのためにも、今回のスタンピードを防がないと。
私は人間スタンピードに向けて、準備を始めた。




