交易都市のギルマス
思わぬ収穫のあった『薬屋』から出た私達は、ある場所へ向かっていた。
「中級街にあるんですよね?冒険者ギルド。」
「そのはずだけど…どこにあるのかしら?」
「この街のギルドは大きいから、すぐに見つかるって聞いたんですけど…何処にも見当たりませんね。」
もしかして、反対側だったのか?
だとしたら、かなり時間かかるけど…
「あ!あれじゃないですか?」
「え?…あれね、冒険者ギルド。」
よかった、合ってた。
サフィーは嫌そうにしてるけど、手紙を預かってるし、私はサフィーを説得して、中に入った。
ギルドの中は、結構綺麗でかなり装飾がされている。
交易都市のギルドだけあって、金が流れてくるのかな?
私は、手紙受け取りの受付嬢のところへ向かった。
「クレステのギルマスから手紙を持ってきたわ、ここのギルマスに渡しておいて。」
「えーっと?ほんとですか?」
「調べる方法とかないの?」
「ありますよ?ちょっと待っててください。」
最初からそうしろよ。
まぁ、よくわかんない小娘が、ギルマスの手紙持ってきたら怪しいけど。
「失礼な受付嬢ですね。」
「サフィーもそういう事言わないの。」
サフィーはすぐに毒を吐くから、喧嘩になりそうね。
「失礼しました!ギルマスが会いたいそうなので、来てもらえませんか?」
「いいですよ、案内してください。」
背中の小さくなった受付嬢に連れられて、私達はギルマスの部屋に着いた。
「失礼します、お客様を連れて来ました。」
受付嬢に続いて、私達も中に入る。
部屋は、骨董品や本など、コレクターが好きそうな物がずらりと並んでいた。
そして、やたら豪華な机に、若い男が座っていた。
「君達が…ご苦労さま、仕事に戻っていいよ。」
「はい。」
受付嬢は、部屋を出ていった。
「さて、これで心置きなく話せるかな?」
「手紙はもう読んだの?」
「ああ、君達の事情はよく分かった。もちろん私も討伐指示を出す気はないから、安心してくれ。」
そして、立ち上がったギルマスは、
「少し遅れたが、自己紹介させてもらおう。交易都市『エリーレ』のギルマス、ハーウェイだ。よろしく。」
「ハーウェイね?知ってると思うけど、一応私達も自己紹介しておくわ。元女王候補のルビーノよ。」
「元女王候補のサフィーアです…」
「うんうん、ビーノちゃんにサフィーちゃんだね?手紙に書いてあったよ?」
なんか、『ちゃん』で呼ばれるの慣れてないから、ムズムズするわね。
サフィーは…うわ!凄い嫌そう。
まぁ、そこは我慢しよう。
それに、少し気になる事がある。
「貴方、何者?人間ではないわよね?」
「よく分かったね、私はハーフエルフなんだ。」
「ハーフエルフ…それで精霊みたいな力を感じるのね。」
私がそう言うと、ハーウェイは目を細くして、
「精霊みたいな?…確かに君からは精霊の力を感じる…魔物が精霊と契約した?」
コイツ、堂々と人様の過去に…
「昔、傷付いた精霊を助けたら、いつの間にか契約してたのよ。」
「傷付いた精霊を?精霊は下級でも相当の魔力を持っていかれるぞ?…いや、嘘をついているという訳ではなさそうだな。」
確かに、倒れそうになるほど魔力を持っていかれた。
やっぱり、私は魔力がずば抜けて多いのか…
「取り敢えず、君が精霊と契約しているなら、時折精霊に魔力をあげるといい。」
「どうして?」
「精霊は魔力を食べて成長するからな、精霊が成長して強くなるのはいい事だ。」
確かに、この精霊は魔力の制御が未熟だ。
成長してもらって、強くなってもらわないと。
宿に帰ったら、魔力をあげてみよう。
「それと、とても重要な話しがあるんだが、いいか?」
「ええ、お願い。」
「今度、オークションがあるんだ、かなりギリギリのラインの。そこで、とある奴隷がオークションに出されるらしい。」
ギリギリのライン…
胡散臭い話しね。
「その奴隷なんだが…マンイータービーの女王候補だと、噂されている。」
「なんですって!?」
「それ本当ですか!?」
私達は、思わず立ち上がってしまった。
「実際に見たわけじゃないが、こういう噂は、大抵の場合本当だ。」
「…客を引き寄せるための、甘い蜜という事ね。」
「姑息ですね…私達の姉を使って…」
サフィーは、怒りで震えている。
それに、魔力が乱れて漏れ出している。
「サフィー、落ち着きなさい。魔力を漏れ出しているわよ?」
「そうですね…」
サフィーの魔力の漏れ出しは止まったが、乱れはなおっていない。
私も、怒りで荒れ狂う魔力を抑えるのに精一杯だ。
「君達は、どうする?」
「オークション何でしょう?私達が落札すればいいじゃないですか?」
「そのお金はどこから出てくるんだい?」
サフィーは、私の方を見る。
「お金を出す気はない。」
すると、サフィーは目をひん剥いて、私に掴みかかってきた。
「なぜですか!?お姉様の誰かが人間共に奴隷にされてるのですよ!?」
「分かってるわ。」
「ならどうして!?」
どうして?か…
「わざわざ、金を出して落札する必要はない。」
「はい?」
「誰かが落札したお姉様を、奪えばいい。そうすれば、こっちに損失はない。」
サフィーは、少しだけ納得したような顔をした。
ハーウェイからは、批難の目を向けられた。
「いいのか?罪を背負う事になるぞ…」
「私は、人非ざる人外の魔物。魔物が人間を殺したところで何か罪に問われるの?」
「そうか…覚悟があるなら止めはしない。だが、証拠は残すなよ?」
流石ギルマス、“そういうこと”をしたことがあるのか…
いったい誰が捕まっているのか…
私は、どうやって人間を殺すか考え始めた。




