人という字は
「そうか…よくやった、もう下がってもいいぞ。」
「はい。」
私は、お母様へ報告を済ませると、部屋を出る。
部屋を出るとやはり妹が待っていた。
私は何も言わず通り過ぎる。妹も何も言わずついてくる。
妹は、初めて会ったときのようにオロオロしている。
私が殺気立っているからだろう。すれ違う働き蜂達も、私から距離を取っている。
この不快感、どうやって解消しようか?。
取り敢えず、自分の部屋に帰るか。
私の部屋に着くと、急に妹が抱きついて来た。
「約束、忘れてませんよね?」
「え?」
約束?そんなのしたっけ?
「…忘れたんですか。」
「そ、そんなこと無いわ。」
「じゃあ、何の約束か答えてください。」
「えーっと。」
やばい、この子怒ってる。
えーっと、約束って何だっけ?
「遅い」
黒いオーラが漏れてる!仕方ない。
「ごんめんさい!忘れたわ!」
「…どうして嘘ついたんですか?」
「それは…考える時間が欲しかったから…」
「はぁ~~」
どうしよう、嫌われちゃったかな?
「我慢するから、私が満足するまで抱きしめて、頭ナデナデしてくれる、という約束です!」
「あ~」
そう言えばそんな約束したね。
「さっ!抱きしめて下さい!頭ナデナデして下さい!お姉様!」
「分かった!分かったから押さないで!」
結局、一晩中妹の相手をすることになった。
翌朝
「あ~、眠たい。」
「そうですね、お姉様。」
寝不足で、目の下にクマが出来た私達が欠伸をする。
「落ち着きました?」
「え?」
「お姉様、昨日は怖かったです。帰ってから、いや、冒険者を焼いた後から怖かったです。」
私は、想像していた何倍もこの子を怖がらせていたらしい。
「だから、お姉様に落ち着いて欲しくて、つい、沢山甘えてしまいました。」
怖がらせるどころか心配させていたようだ。姉として失格ね。
「お姉様、また自分を責めてませんか?」
「どうして分かったの?」
心読術でも覚えたのかしら?
「お姉様、私が落ち込むと、いつも自分を責めるじゃないですか。私は知っているんですよ?」
「そうだったの…」
この子、よく私のこと見てるわね。雰囲気的なもので私の考えを読むなんて。
「私は、元気なお姉様が大好きです。だから、いつも元気に笑ってて下さい。そうしたら、私も笑顔になれるので。」
どうやら、支えられていたのは、妹ではなく、私だったらしい。いや、違うわね。
お互い、支え合って来たんだ。
どこかの先生も言ってたね、
『“人”という字は、人と人が支え合ってできてる』って。
私達は、まさにその関係なんだ。
人ならざる人外の魔物でも。
「ありがとう。」
「はい!」
そう話す私達は、とてもいい笑顔だった。




