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退屈な馬車の旅

「暇ね」

「暇ですね」

「旅って暇なのね」


出発してから一日

早くも退屈していた。

魔物や野生動物が私の探知に引っかかると、捕まえたり、倒したりして、遊んでた。


「昼飯は、肉ばっかりになりそうだな。」

「御三方が見つけた魔物や野生動物を片っ端から倒して肉に変えてますからね。」

「いいじゃん、お肉が沢山食べられるよ?」

「だとしてもあんなに食わねーよ!!」


余ったら、肉屋にでも売れば良いんだしさ。

後は、乾燥させて干し肉にするとか。

…お腹空いてきたね。

私は、いい感じの肉を鉄串に刺して、炎魔法で炙る。


「もう、お昼ごはんにするのですか?」

「小腹が空いたから、間食にするのよ。」

「美味しそうな匂いしてるけど、味付けはどうするの?」

「素材の味を楽しむの。」

「つまり、何も付けないかと…」


海辺の街に行ったときに、塩を大量に買わないとね。

そこらの街で買うよりは、安く買えるでしょ?


「このくらいかな?」

「ちゃんと火は通してるんでしょうね?」

「お腹痛くなっても知りませんよ?」

「大丈夫、肉の内側に炎魔法を発動して、中からも熱で焼いてたから大丈夫よ。」


魔法の練習も兼ねての焼肉だったからね。

結構調整が大変だった。

まぁでも、結果的に成功したんだし、取り敢えず食べてみよう。

私は、一番上の肉に齧りつく。


「…………」

「どうですか?」

「硬いし臭いし食肉用ではないわね。」

「まぁ、野生動物の肉ですからね…」


正直、予想はしてたけど、やっぱり美味しくないわね。

まぁ、食べられない事は無いけど、好んで食べるような肉ではないね。


「私も一つ貰っていい?」

「どうぞ?」

「……硬いわね。」

「肉たたきでもあれば、少しは柔らかくなったかも知れないんだけど…」


まぁ、そんな物持ってないんだよね〜

ローケンの店には売ってるかも?

今度買いに行ってみるか…


「サフィーはいる?」

「私はいいです。美味しくないのは、分かりきってるので。」

「そうね、取り敢えず臭みを消せる香辛料が手に入るまで、美味しい肉は食べられないでしょうね。」


肉たたき、塩、香辛料、この3つが揃わないと、ジビエが美味しくならないでしょうね。

肉屋に売り付けるか…

結局、焼肉は失敗だった。














「これは?」

「『ショーギー』という、勇者がもたらした「またお前か…」はい?」


またお前か…勇者。

異世界に影響与えすぎでしょ?

料理、家電、ギルドときて、次はゲームか…

将棋、きっとそれ以外のボードゲームもあるんでしょうね…


「いいわね、それやりましょう。私はルール分かってるけど、一応こっちで変化してないか確認するために、教えてくれない?」

「分かりました。まずは…」




基本的に、日本のものと大した違いはなかった。

変わった所は、何故か王将が2回動けるところくらいだろう。


「ショーギーか?俺結構得意だぜ?」

「ガッスがショーギーをできる?なんの冗談かしら?」

「酷くね?これでも傭兵団のリーダー何だから、どうやって動かせば勝てるかくらい分かるつーの!」

「ふ〜ん?じゃあ私と勝負する?」

「やってやろうじゃねえか!!」


二時間後


「王手、即詰みね。」

「そんなバカな!?も、もう一回だ!!」


更に二時間後


「はい王手。」

「い、いや、まだだ!まだ俺は本気出してない!!」

「そう?じゃあもう一回ね?」


一時間後


「はい王手。」

「ふ、遂に重りを外す時が来たか…」

「ショーギーのどこに、重りを付ける要素があるのよ。」


三十分後


「ガッスさん、相手が悪かったんです。落ち込む事無いですよ。」

「そうだぜ団長。きっと、ビーノ様はこういうのが得意なんだ。」

「ビーノ様は、転生者なんだぜ?本場のショーギーをしたことがあるんだよ。」

「どうせ俺は雑魚なんだよ…」


ガッスは、落ち込んでしまった。

正直、こういうボードゲームでは負ける気がしない。

断片的な、前世の記憶の中に、将棋を何度もやってる記憶がある。

きっと、前世でも将棋が強かったに違いない。


「見てて、なんとなくやり方は分かったわ。ビーノ、私と勝負しない?」

「リン姉と?別にいいよ?」


将棋が初めてのリン姉が私に勝てるとは思えないけど…まぁ、リン姉も賢いし、いい勝負になるかも。


四時間後


「姉様ー、晩ごはんの時間ですよ〜?」

「ちょっと待って、いや、先に食べてて。今いいところだから。」


更に四時間後


「ふぁ〜…姉様ー、もう寝ましょうよ。」

「先に寝てて、もう少しで終わるから。」


翌朝


「………まだやってるんですか?」

「なかなか勝負がつかないのよ。」


正午


「………………」

「先にご飯食べてて。」


夕暮れ


「ああああああああああああ!!!!」

「「ええええ!?」」


なんと、発狂したサフィーが、将棋盤を彼方へ蹴り飛ばしたのだ。

何故か、ガッスの頭に直撃したことで、何処かへ飛んでいく事はなかったけど。


「なんてことするのサフィー!!」

「今、良いところだったのに!!」

「それ昨日からずーっと聞いてます!!姉様達は楽しいかも知れませんけど、こっちはこれっぽっちも楽しくないんですよ!!むしろ、無視されてイライラするくらいです!!」


確かに、サフィーのことを蔑ろにしてたかも…

けどな〜、あれは酷いんじゃ…


「だからって、あそこまでしなくてもいいでしょ!!」

「うるさいですね!!あれくらいしないとやめてくれないでしょ!!」

「ちょっと落ち着いて。サフィー、放置してごめんなさい。沢山遊んであげるから許して?リン姉も大人気ないよ?サフィーは寂しくてあんな事したの。許してあげよう。ね?」

「「ビーノ(姉様)は、黙ってて(下さい)!!」」


うーん、二人ともブチ切れてる…

どうすればいいんだろう?


「ビーノ様、ちょっといいですか?」

「ローケン!どうしたの?」


比較的冷静そうな私に、ローケンが話しかけてきた。


「実は、ガッスさんが…」

「ガッスが?…うわぁ。」


ガッスは頭から血を流して倒れていた。

なるほどね、それで私を呼んだわけか…

私は、言い争いをしてるサフィーの首根っこを掴んで、ガッスの所へ連れて行く。


「急に引っ張ってきたと思えば、こんなことですか…まぁ、自分で治そうとしなかったのはいい判断ですけど。」


ん〜、不機嫌そうだなぁ。

これは、落ち着くまで時間がかかるかも。

取り敢えず、ひたすら撫で続けて落ち着いてもらうか。

それか、抱きしめてあげるか。


「終わりましたよ。これからどうしまっ!?」

「サフィー、貴女を落ち着かせるのを、これからするわ。やってほしい事が有ったら言ってね?」

「じゃあ、しばらくこのままでいたいです。」


不機嫌な時は、大体私に抱きついて気持ちを落ち着かせてるもんね。

私の、たわわな胸に顔を埋めて抱きつく。

これが、落ち着きたかったり、不機嫌な時のサフィーのいつもの体勢だ。

柔らかい胸をクッション代わりにして、全体重を私にかけてくる。

まぁ、サフィーは軽いから、大して重たく無いけど。


「ハァ…そうやって、すぐに甘やかすから、あんな事になるのよ。もう少し自立させたらどう?」

「うるさいですね?今、私はゆっくりしてるので、静かにしてもらえませんか?」

「あら?貴女に話しかけたつもりは、無いのだけど?」

「そうですか?私もビーノ姉様に言ってたのですが?」


サフィー、流石にそれは無理があると思うんだけど?

というか、喧嘩しないで欲しいな〜

取り敢えず、どんな盤面だったか覚えてるから、もう一度並べ直して、続きをしようかな?


「サフィー、もう一回するけど、今度は放置したりしないからね?だから…」

「私が撫でてって言ったら撫でてくれますか?」

「もちろん!」

「…好きにしてください。」


よし!サフィーの許可も得られたし、駒を並べ直して再戦だ。


「愛する妹より、ゲームを優先するんですね?」


…………………やっぱりやめよ。


将棋って、昔は一局で一週間かかる事もあったらしいですよ?

凄いですね。

次回から、一ヶ月近く時間を飛ばします。

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