さらば、交易都市
「じゃあ、出発しますよ?」
「メリーちゃん、元気でね。」
「うぅ………うん、行ってらっしゃい、サフィーお姉ちゃん。」
出発の時間になり、泣き止まないメリーちゃんをサフィーがなんとか落ち着かせた。
本当、メリーちゃんを見てると、新しい妹が出来たような気持ちになる。
サフィーは、特に可愛がってた。
やっぱり、子供の力は凄いな〜。
あのサフィーが、私以外にあそこまで興味持つなんて。
それも、愛情に近いものをメリーちゃんに向けてたし。
「きっと、また来るから。その時、また遊ぼうね?」
「うん!」
「じゃあ、またね。」
サフィーは、メリーちゃんを抱きしめてあげた。
メリーちゃんとのお別れは、サフィーに任せて、私も挨拶しておかないとね。
「色々とお世話になりました。この恩は必ず返します。」
「おう、その時は例の蜂蜜トーストでも食わせてくれ。」
「そうだな、俺も一度、黄金の蜜を塗ったトーストを食べてみたいもんだ。」
「せっかくしっかりした挨拶したのに、貴方達は食べることしか頭にないの?」
「それくらい、黄金の蜜は魅力的なんですよ。」
貴族や王族の嗜みみたいなものらしいしね、黄金の蜜って。
ん?
「お、間に合ったか!」
「それは?」
「ちょっとしたプレゼントだ。お酒、好きなんだろ?」
「なるほどね…いいの?こんなに貰って?」
何せ、樽が数十樽ある。
相当な金額になるはずだけど…
「ああ、全部持っていってくれ。貴族の贅沢は、もっと凄いからな。これでも少ないくらいだ。」
「金の力は凄いわね。流石、交易都市の領主だけはあるね。」
「ああ、ここの出す利益は凄いからな。少国家群が統一されれば、更に利益は拡大するだろうがな。」
「その時には、また城塞都市の役割も復活するけどね。」
「そうだな!」
ここは元々『大帝国』から、国を守る大要塞。
防御力は伊達じゃない。
今は、大帝国が無くなって、交易都市として活躍してるけど、少国家群が統一されれば再び城塞都市の役割が戻ってくる。
でも、それはいつの話になる事やら。
「古代神殿に行くんだろ?お宝があったら教えてくれ。宝探しはロマンだからな!」
「ええ、国が欲しがるようなお宝を見つけてくるわよ。」
「そうか!それは楽しみだ!!」
その時、ちょうど検問が終わり、商隊が出発した。
私は、サフィーを呼んで馬車に乗る準備をする。
酒樽を全て、空間収納の中に入れて回収する。
そして、私達が馬車に乗ると、商隊は出発した。
「サフィーお姉ちゃーん!また来てねーー!!」
「うん!絶対来るからねーー!!」
サフィーとメリーちゃんが大声で約束する。
きっと、旅の途中で来るだろうし、その時は、絶対メリーちゃんの所に行かないとね。
あれ?サフィー、泣いてるの?
サフィーの目には大粒の涙があった。
「サフィー、旅に別れは付き物よ。けど、我慢しろとは言わないわ。その気持ちを大切にしなさい。それが、人と関わる時、一番大切な事だから。」
「そうですね…でも、姉様とメリーちゃん以外に、この気持ちを持てるとは思えませんが…」
「そう?私以外に興味を持たないサフィーが、メリーちゃんとあんなに親しくなったのよ?きっと、一人や二人、そう思える人が見つかるわ。」
そう、こうやって、サフィーが心を開いてくれれば、人生が豊かになる。
一人っきりの人生なんてつまらない。
色んな人と出会って、笑って、泣いて、喧嘩して、旅はそれを世界へ広げる手段。
きっと、これからも色んな人に出会うだろう。
その度に、新しい世界が待ってる。
自分一人の世界じゃなく、沢山の人と笑える世界の方が、生きてて楽しいからね。
「リン姉も、これから人と関わる楽しさと、大変さを感じると思うよ?」
「そうね。でも、大変さまで感じる必要あるの?」
「あるよ!自分と同じ人なんて、この世に一人として居ないんだから。自分と同じじゃないからこそ、意見の食い違いが起こるんだ。そこが、人と関わる大変さだよ。」
「つまり?」
「自分はこの世に一人しか居ない。だから、自分らしさを大切にしなきゃいけないんだよ。人と関わるから、自分らしさが生まれるんだ。人と関わらないと、自分らしさなんてわからないよ?」
自分の存在証明を出来るのは、自分らしさ。
人と関わらないと、自分らしさは分からない。
旅は、多くの人と関わるから、自分らしさを理解するチャンスが沢山ある。
「よく分からないけど、取り敢えず、自分らしさを大切にすればいいのね?」
「まぁ、それさえわかればいいかな?サフィーは分かった?」
「分かりません!!」
「でしょうね。」
サフィーに、こういう話は早かったみたい。
でもまぁ、サフィーもそのうち理解出来るようになるでしょ。
「ねぇ、ローケン。目的の街までどれくらいかかるの?」
「そうですね、順調に進んでも一ヶ月はかかりますね。」
「一ヶ月!?」
「途中、何度も街に寄りますが、用事がないので一日二日程度で出発するので、大した出会いも無いと思いますよ?」
「そう…つまり、最短で一ヶ月は暇な日常が続くわけね?」
「そうですね。」
「ええ〜〜!!」
サフィーが嫌そうな声をあげる。
分かるよサフィー、馬車の旅って、結構退屈だもんね。
それが最短一ヶ月って、どれだけ退屈な事か…
「そんなに嫌なの?」
「リン姉様もすぐ分かると思いますよ?馬車の旅の退屈さが。」
「そうね、楽しいのは最初だけだったわね。」
「そ、そう…」
姉様は、どう反応したらいいのか分からず、困った表情をしてる。
すると、ローケンが、
「馬車の旅の退屈さを少しでも紛らわす為に、色々なゲームを用意してるのですが…どうでしょう?」
「いいわね!今すぐとは言わないけど、退屈してきたらやりましょう。」
これなら少しは旅が楽しくなりそうね。
私は、早くも退屈してそうなサフィーの髪の毛を弄って遊ぶ事にした。
これをすると、機嫌が悪い時は指を掴んで、噛み付いてくる。
甘噛とかじゃなくて、本気で噛んでくる。
ただ、それも可愛くて、ますます虐めたくなる。
嫌な時は、「やめてください」って言ってくるから、しばらく抱きしめてあげると落ち着いてくれる。
逆に、サフィーは私に噛み付くのが好きなのか、退屈な時は、私に噛み付いて遊んでる。
何が楽しいのか分からないけど、サフィーの暇つぶしになるなら別にいいけどね。
「はぁ、古代神殿に行けるのはいつになるのやら。」
「気長に待ちましょうよ、ビーノ姉様。」
「そうよ、せっかち過ぎても良くないわよ?」
そうか、今はもう一つリン姉があるんだから、そっちでも遊ぼうかな?
サフィーが嫉妬しそうだけど。
こうして、一ヶ月の退屈な旅が始まった。
第二章完
退屈な一ヶ月の旅は、いちいち書くのも面倒くさいし、書くこともないので、一話だけ書いて、一気に時間を飛ばします。




