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13令嬢は恋愛するのも一苦労


「お嬢様は大恋愛をご希望なさっているようですが、貴族には政略結婚がつきもの。万が一にも間違いがあってはいけません。

 お嬢様を正当な当主であると認めた以上、わたくしどもは大恋愛は応援できませんわ」


「はぁ!? おまっ…わしがなんのためにここまで苦労したと!」


 シェリルの苦労は前世から始まり、転生の秘術を成し遂げたことも含まれるのだが、当然ながらそんなことを二人が知るはずもない。


「家名を汚さない程度であれば目を瞑りましょう。

 もしくは、相手がどんな人間であっても家名に傷などつかない名領主となってくださいまし。

 そうでなければ、わたくしはあらゆる手段を使って男を遠ざけます」


「なっ、なっ…」


 あまりの言い分にワナワナと震えているシェリルに、セバスが救いの手を差しのべる。

 それが本当に救いになるのかは、神のみぞ知るところだ。


「簡単ですよ、お嬢様。

 名領主になれば良いのです」 


「具体的には?」


 ジェーンが認めるほどの名領主ならば、少なくとも先代を超えなければならないだろう。

 明確な指針もなしに反対されては洒落にならない。

 誰が見ても客観的にクリアしたとわかる名領主の基準が必要になる。


「この国では年に一度領地の番付が行われます。

 武勇や研究など様々な部門があり、それらを総合して順位を決めます。表彰式もある一種のお祭りですな。

 ですが、この領地は先代様が亡くなって以来下降の一途をたどっています。

 借金を肩代わりしてもらう代わりに貸し出している領地もありまして…」


「借金を全部返済した上で、その番付とやらでトップに立てばいいってわけじゃな?」


 それであれば単純明快だ。

 詳細は色々あるのだろうが、ようはどの分野でも一位をかっさらえば良い。


「二位以下を大きく引き離した一位であれば磐石でしょう」


 ジェーンが念押しの一言を付け加えるが、そんなものは想定内だ。


「よかろう、やってやろうではないか!」


 今日来た客の大半は、シェリルへの認識を改めただろうが、実情を知らない者たちは侮ってくるだろう。

 たかだか14になったばかりの女に何ができる、と。

 それを想像するだけで、シェリルの負けず嫌いの血が騒ぐ。

 こうしてシェリルは今期の番付で順位の下克上を狙うのだった。



●●●●●



「ところでジェーン…」


「なんですか、あなた」


 かつてはたくさんの使用人と、屋敷の主の家族で賑わっていた邸内。今はお嬢様の他はセバスとジェーンの二人の夫婦しかいない。

 昔は部下がやっていたような仕事をするのは、少しばかり新鮮な気持ちになる。自分が新人であったことを忘れず、気持ちよく主が過ごせるように気を配ることの大切さを痛感していた。

 それと同時に、人が少なくなったからこそ、夫婦だけの時間が持てるようになったのも事実である。

 シェリルは予想外に良い領主になりそうだった。

 本来の計画では、とうの昔に他の領主に領地経営を任せるつもりだったのに、いつの間にか彼女の手足となって行動している。


「本当に一位であればどんなクズ男でも許すのか?」


「ほほほ、まさか。

 どんな手を使っても叩き潰しますとも」


 ニコリと微笑むジェーンは、自分の妻ながらそら恐ろしく見えた。

 事実、領主ともなれば人に会うとしても、使用人を通さなければならない。そして、使用人がそれを妨害するとなれば、シェリルが男性とお近づきになれる確率はグッと減るだろう。

 ただ、シェリルは型にハマったお嬢様ではないため、ジェーンの予想を超えた行動をとるかもしれないが。


「…そもそも、お嬢様、ひいてはこの領地が一位になるなど数年程度では無理でしょう?

 それに、お嬢様は『物語のような大恋愛』をしたいと仰ってますが、結婚とは言っていません」


「女領主の愛人、か。

 聞いたこともないが、そもそも女領主自体、数が少ない、か」


 結婚して種さえ残さなければ恋愛は自由である、とジェーンは暗に言っている。

 最悪の場合正式な旦那さえいれば、子供が出来たとしても養子にしてしまえばいいのだから。これは、男女が逆であれば普通に行われていることだ。


「そうですとも。今回のような破天荒があったとしても、お嬢様が前例になってしまえば問題などありませんわ」


 なんだかんだ言って、ジェーンもシェリルのことを気に入ったのだろう。

 気に入ったが故に、悪い虫は全力で叩き潰すつもりらしい。


「ともかく、そろそろ私たちだけでは手が足りないな」


「私たちが太鼓判を押せば戻ってくる者もいますよ。ただ、少々型破りなお嬢様であることだけは言い含めなければ」


「そうだな。

 一時はどうなるかと思ったが、先代様との約束は守れそうだ」


 セバス夫妻と先代領主夫妻は、年齢も近く、友人同士だった。そんな彼らの最後の願いが、領地を頼むというものだった。

 しかし、いかにセバスたちが優秀であろうとも、領主でなければ出来ない仕事は多い。そんなもどかしさを抱えて数年。最後の希望となったのがシェリルだった。


「どうなるかはわからないが、まだなんとかなりそうなのは確かだな」


 そんなセバスの呟きに、ジェーンは微笑みながら頷くのだった。


閲覧ありがとうございました。ここで一章が完結となります。

果たして見た目は美少女中身はBBAな彼女は望み通りの大恋愛ができるのでしょうか?

よければ評価や感想、ブクマなどもらえますと更新の励みになります。

毎日更新をしていましたが、次回以降の更新は未定となります。

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