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心と絆本舗  作者: ゲーカー
8/8

エピローグ

 

次の日の朝、いつものようにクロとタマを連れて事務所に向かい歩いていた。噛まれた傷は深かったのだが、引き裂かれてはいなかったので、大事に至る事はなかったようだ。 

クロは、責任を感じているのか、心配そうな顔をして何度も俺の顔を見上げている。

事務所に着いてドアを開けると、ネコが血相を変えて駆け寄って来た。

そんなネコに差し出されたのは、一冊の通帳。

「なんだよ、ネコ。いったい、どうしたんだよ」

「あんた、これ見たら絶対びっくりするわよ」

たぶん、奥様から報酬が振り込まれたのだろう。確かに、今回の依頼は命がけだったし、治療費も含めて、もしかしたら百万位は入っているのかもしれない。

ま、それ位の事はやったからな、そう思いながら通帳を開いた。

「な、な、なんじゃこりゃ―――――!」

 ゼロが七個も付いてる。と、言う事は……。

「今回の報酬は、一千万円か!」

「そうなのよ! ま、確かにすごい金額だけど、これが奥様の感謝の気持ちなのよ。奥様には一千万の価値があったって事。だから、気持ちは受け取らなきゃ、逆に失礼になるわ」

そう言って、すぐさま俺の手から通帳を奪い取り金庫にしまう。俺に背を向けたままの姿勢で、固まってしまったかのように、じっと動かない、ネコ。

ん? どうしたんだ?

その後、ネコはゆっくりと振り向いたのだが、何も喋らずなんだかモジモジしている。

こいつ、腹でも痛いのだろうか、と思っていたら口を開いた。

「昨日さ……たっちゃん、すごくカッコ良かったよ、見直した」

 おぉ、褒められた!

いや、待てよ……こいつが、こんな事を言うのはおかしい。

 だって、考えてみろ。今までの俺に対する、人を人と思わぬ言動。昨日だって、小学生の頃の失態を散々笑い飛ばしていたではないか。

 こいつは、サタン。なにか……なにか企みが、いやさ陰謀があるに違いない。

 そうか……金か。

 予想以上の報酬が入ったから、その分け前を多く分捕るつもりだな。

 ここは、俺が命を賭けて解決したのだ、と言う事を、はっきりと言うべきではないのか。

 そうすれば、こいつもバカな事を考えまい。

「ま、俺がいたから解決出来たような物だからな。てか、俺が解決したと言っても過言ではないな。散々今まで俺の事をバカにしてたけどさ、やる時はやる男なんだよ、俺は。やっと俺の凄さが理解出来たか!」

 おぉ、気持ちが良い!

ふと、視界に映るクロとタマに焦点があった。何故だか分からないが、呆れ顔で俺を見ている。

ネコに視線を戻すと、火山が噴火する直前のように、全身がぴくぴくと痙攣していた。

こいつ、核心を突かれたものだから、怒ってうやむやにするつもりだな。

そうは行くかよ。このサタンめ!

ここいらで、上下関係をはっきりしとく必要があるからな。

はっきりと言ってやろう、『お前は助手なのだ』と。

すると、足元のクロが鼻を鳴らし、

「たっちゃん、ここはそうじゃないだろ……」

と、言い残し台所に消えていった。

 直後、被害が及ばぬよう書籍棚の上に非難していたタマが、

「自分の飼い主ながら、あきれるねぇ」

と、言い残し開いている窓から外に出て行った。

え、どう言う意味ですか?

「はぁ? なに偉そうにほざいてんのよ! ちょっと、褒めたら調子に乗りやがって! 今からでも遅くはないわ、日高山に行ってボスと戦って噛み殺されてきなさいよ! てか、今すぐ死ね!」

そう言って、般若のような顔をしたネコは、事務所のドアが壊れるくらいに、思い切り閉めて出て行った。

「なんなんだよ! みんなして出て行きやがってさ、俺が何したって言うんだよ! クロ、何か間違っていたのか? ちょっと、こっちに来て教えてくれよ! クロ、クロ!」

 俺一人残して、誰もいなくなった室内。

悲壮感漂うその声が、しばらくの間こだましていたとかしないとか。


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