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乱された群れの調和

前の二作とは、全く異なった作風になっておりますので、イメージを壊したくない方などはご注意ください。別作品のようになっております。


たまたま、二人の姿を目撃した彼の友人視点です。

作中の「あいつ」などの表現は、彼のことを指しています。



……俺は何も見てない


いないったら、いない!!

念仏のようにそう唱えてはいるが、先ほど目撃してしまった友人とその彼女の姿が会話が…鮮明に頭を巡っていた。

いや、普通に何時もだったらほのぼのとした、一人身の俺には羨ましくて堪らない光景のはずだったんだ。―――それなのに、どこで間違った?



俺の友人の一人に、最近彼女が出来た。

そいつは終始笑みを絶やさぬ、穏やかな性格のいい奴なんだ。―――まぁ、出会ってから何度か見た、本気で切れた姿については口を閉ざさせていただくが。


い、いやしかし!

基本、筋が通っていない事が大っ嫌いで、その時もマナーがひどすぎる人間相手だったり、友人を罵倒されただとか。真っ当な理由があっての事だったから、実害は無いに等しかった。だ、だから何が?かは分からないが、大丈夫だ!



あぁ、思考が変な方向に飛んでしまった。

話を戻すのなら、そんないい奴であるがゆえに、ずっと想い続けていた彼女と付き合えた時は自分の事のように嬉しかった。


ぶっちゃけ何度断られても諦めず、彼女一筋に思い続けている姿は、涙ぐましいと感じるのを通り越して仲間内では、ストーカーになってしまうのではないかと心配していたほどだ。

だからこそ。ちょっとぽやーんとしている彼女と、幸せそうに微笑みあっているのをやっかみまがいに邪魔することはあっても、心の底から応援していた。




だが、最近のあいつの姿を考えると、どこか険悪な様子で歩き去っていった二人を追わずにはいられなかった。



さっきも言ったように、ぽやーんとしている彼女はよくナンパ目的で男に声をかけられる。その姿を見て、始めは「彼女は優しいからしょうがない」と苦笑していたあいつだったが、近頃では目に見えて不機嫌になり。彼女が友人と話をするのですら、嫌がっているようだった。

そこまでいくと行きすぎだと考えたりもしたが、彼女の性格を考えるとあながち的外れな心配ではないと感じてしまう…。彼女の男友達は、大抵が下心で構成されているといっても過言ではない。



人がいいあいつの彼女は、「酔っている男に不用意に近づくなと」彼女の女友達にすら注意されているのに、よく酔っ払いの介抱をしている。

それだけならまだしも、下心見え見えの人間ですら丁寧に相手するのだ。

そのせいで相手はつけあがり、彼氏であるあいつが出て行って場を収める事も一度や二度ではなかった。


…この間あいつとたまたま街を歩いている時に、明らかにナンパ目的な男に暗がりに連れ込まれそうになっていた彼女を見つけた時など。恐すぎて、隣りにいる友人を見れないほどだった。本来は彼女の心配をすべきであるとは思うが、俺が最初に心配したのは連れ込もうとした男の今後についてだった。


もうっ、本当に禍々しい雰囲気が横からこちらまで伝わってきていたんだ!



そんな、我慢の限界を迎えそうな友人の状態を知っている身としては非常に心配だ。いざとなったら、どんなに射殺されそうな瞳で睨まれようとも、暴走を止めない訳にはいかないだろう。ここで恐怖心に負けてはだめだ。

彼女に嫌われてしまおうものならば、その後に待ち受けているあいつの暴走が怖くて仕方がない。



まるで、ラスボスにこれから挑むへっぽこ勇者の気分だったが、二人のためにも俺は後をついて行った。これから恐ろしい二人の本性を垣間見るとは知らずに…。






―――簡潔に言うとすれば、めっちゃ怖かった。


いや、だって普段ぽやぽやしている奴が、あんな事を考えているだなんて思わないじゃないかっ。何!?跡が残ればいいとか、どういう事!しかも、傷つけることが前提なの?


嗚呼、いやだいやだ。

中途半端な親切心なんて出すもんじゃないね。笑っているはずの人間を、ここまで怖いと感じたのは初めてだよ。鳥肌がいまだにとまらないからねっ。

おかしいのは友人だけかと思っていたら、その彼女まで、犯罪まがいの告白をしたあいつを見て笑っちゃってるしね!



類は…友を呼ぶという事なのだろうか?

じゃあ、あいつの友人であるはずの俺はどうなんだ…。

―――っというか、あんなの見せられたら、しばらく恋愛したくないかも…。



だが、そんなことは後で考えればいいことだ。

あれだけの執着心を見せている、あいつの彼女にどう接していけばいいのか分からないということも、後でいいだろう。





俺は、現在自分がおかれている状況を思い出したのだ。なぜ、こんな見たくもない場面に俺は出くわしたのか。簡単だ。あいつの姿を見かけて、追いかけたからだ。じゃあ、何故あいつの姿を見かけたのか。…それは、あいつと会う約束をしているからだった。


一瞬にして、俺の血の気が引いた。本当は今すぐドタキャンの連絡を入れてしまいたい。しかし、先ほども言ったように、あいつは筋が通っていないことが嫌いだ。だから約束まで後20分を切った今、ドタキャンの連絡をしてみろ。先ほどの苛立ちが、こちらまで回ってこないとも限らない。



長い付き合いの中で、初めてと言っていいほどの怒りを垣間見たあと、そんな一か八かの賭けをするギャンブラー精神を、俺は持ち合わせていなかった。


「俺、あいつの顔まともに見れるかな…」


っていうか、このチキンハートはどれだけもってくれるのかなぁ?




約束の時間は、後5分にまで迫っていた。




この後、可哀想な彼の友人は約束の時間に遅れ、結局怒られます。

いつもと違う反応をする友人に彼は訝しがりますが、それすらも怒っているからだと勘違いした友人は、その日一日冷や汗が止まらりません(笑)。


勢いで書いた感がぬぐえませんが、書いていて楽しかったです。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。




怒っている時の笑顔は、怒鳴り散らされるより怖いものがありますよね。

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