1.神隠し
世界…いやこの星はあと3年で崩壊するらしい
隕石が落ちるでもなく、異常気象による人類滅亡でもなく星自体が崩れるように壊れていく
そんなことを私は転移先にいた変なローブを着た怪しい軽薄そうな男に伝えられた
唐突に伝えられた言葉に困惑しながらも、私はなぜこんな所にいるのだろうと疑問に思う
こんなよく分からない場所に来てしまったのにはなにかしらの原因があるはずだ
私はその原因を探すため自分の行動を振り返った
☆
…大切な人やペットがいなくなってから始まる物語が嫌いだ
しかし、この世界にはそんな物語で溢れかえってしまっている
なのに、そんな物語が大量に売れてしまっているのはこの世界にいる人間の大多数が、大切な人やペットを失ってしまっているからなのかもしれない
かくいう私もそんな人間の一人で、嫌い大嫌いといいながらもそんな本を手に取ってしまう
主人公のように敵に復讐するために、敵を倒すために、強くなって最終的には大団円、ハッピーエンドそんな現実にはありえない主人公補正がかかってるとしか思えない内容でも、自分を主人公と重ねて復讐相手をボコボコにする
そんな馬鹿な妄想に浸ってしまう自分自身を嘲笑う
神結みな18歳、高校卒業まであと1週間。子供とは言えない年齢なのにいつまで私はこんな妄想をしてしまうのだろう…
一人暮らしをするための新しい家の内見が終わったあとに立ち寄った本屋でため息をつく
「そろそろ家に帰るか…」
時刻は夕方5時30分、日が長くなってきたとはいえそろそろ暗くなって来る頃
この街は他の街と比べて比較的治安がいいとはいえ女が一人で夜道を歩くのはかなり怖いし危ないから暗くなる前には家に帰りたい
家路を急ぎながら今日から父が出張でいない3日間の予定を考える
…とりあえずいつも作っていた夕飯サボっちゃおうかな
視界にコンビニが映ったことでそんな考えが浮かんだ私はそのまま流れるようにコンビニに寄りミートソースといつもは食べない生クリームがたっぷり入ったロールケーキを買う
目当ての雑誌と漫画に新規で気になって買った漫画、さらにいつもは買わないコンビニ弁当、家にはだれもおらず一人の時間を満喫できるということにルンルンとした気分で今度こそ予定を考える
明日はとりあえず家電、家具を見て新しい家のカスタマイズを考えようかな…それとも、せっかくの自由時間だし、カフェ巡りとかしようかな…いや、両方同時にできるから、カフェ巡りしながらカスタマイズを決めよう!
色々つらつらと考え、明日の予定が決まった所で顔を上げてハッと気がつく
「あれ?ここどこ?」
空は薄暗く周りは見たことない小さい建物が複数並んでいる一本道
真っ直ぐ歩いていたはずなのにいつの間にか知らない場所にいて恐怖を感じる
慌ててスマホを開き電波を確認するも圏外
しかも、さほど歩いてないはずなのに時刻は6時
なんで?どういうこと?と焦りと恐怖で頭が混乱に満ちる。家までの距離は15分もかからないはずだし、電波だってこんな街中だったら繋がっているはずなのになんで繋がってないの?
そもそも路地裏とかいってないはずなのにまるで路地裏のような一本道に車の音や野鳥の声が一切聞こえず人っ子一人もいない
とりあえず使えないスマホをカバンにしまって駆け足で来た道を冷や汗をかきながら戻る
けれどいくら走っても元の道にたどり着くことが出来ず街灯の無い道は周りさえ見えなくなるくらい暗くなっていく
自分の走る音、コンビニの袋とカバンの揺れる音しか聞こえず自分以外の音が聞こえない恐怖に泣きそうになりながらそれでも諦めずに走っていると目の前に青白い光が見えてきた
ようやく元の商店街にたどり着けるかも
目に涙を浮かべ、汗を流し、体力も底を尽きそうだけどそれでも最後の力を振り絞りさらに走る速度をあげる
しかし青白い光に近づいて私は唖然とする
その光は商店街の街灯や店の光でも何でもなくアンティーク調の精巧な両開きの扉だったからだ
いつの間にか周りに建物がなくなり当たりが真っ暗に包まれている中ただただその扉が青白く佇んでいるその光景は妖しくけれどどことなく荘厳な雰囲気を感じ私は思わずへたり込んでしまった
罰が当たってしまったのだろうか…?証拠もないのに母の手紙を信用して父に対して憎しみを募らせてしまったことに…
頭の中で自分が漫画の主人公みたいに復讐相手である父親を何度も倒していることに…
神様が怒っているのかな…
そんなことを考えながらポロポロと涙を流す
いや、でも母がいなくなってしまったのは確実に父のせいだし私よりも父の方が圧倒的に悪いことをしているはずなのになんで私がこんな怖い目に合わなきゃいけないの…?
しばらく時間が経ち息切れも涙も収まって来た頃この謎の場所に恐怖を感じていた気持ちよりも理不尽な目に遭っている怒りが勝ってきて私はノロノロと立ち上がった
こんな理不尽なことをしている推定神様がこの扉の向こうにいるなら一言文句を言ってもいいよね…?
扉の目の前に立ち恐怖を通り越し怒りに包まれている私は変に気合いを入れて扉の取っ手を押し思い切り扉を開けた




