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519、美術館強盗計画

FDVR、カオスな電脳空間メガシティにて。夜闇に紛れてボク達は美術館まで屋根上を一直線。ジップワイヤーでスイスイ移動してあっという間に美術館の屋根の上へ。


ぱっと見お城のように尖塔が立ち並ぶ美術館に、夜間侵入するルートは3箇所。その内の屋根ルートを選択。屋根の一部にはメンテナンス用のハッチがあって、そこから侵入する。


先ずはこの時点で最高レベルのハッキング能力を求められる。ハッキング能力を上げるには装備とインプラントが必要で、ハッキング自体にもミニゲームが要求された。


「ゆうてもリアルのハックと比べたら所詮はお遊びよ。」


タマさんはすっごいハッカーさんなんだから。鼻歌混じりにサッサとハッチを解錠しちゃう。ランプが青色に点灯してパカっと開いた。


「ではでは作戦通りに。協力者にも連絡を入れましたので。」


「はいっ!直ぐに盗み出しましょう!」


狭いメンテナンス通路を駆動魔具で疾走、ゲーム内にはステラヴィアは無いからブレードランナー。独特な操作感が好きで愛用するプレイヤーも多い人気種。こういう狭い場所での使用には向かないけど‥‥ボク達なら大丈夫。


「フィクサーさん、大丈夫ですか?」


「ワタシは駆動魔具に頼った移動が苦手でして。ゲーム内ならなんとかなりますが。」


「魔法が使えない悪魔だなんて、圏外になったスマイルみたいなものね。」


「にゃは、インターネットが使えなくとも最低限動作するから?知恵は時と場所を選びませんからね!」


フィクサーさんはちょっと覚束ない動きで後を付いてきた。けれどそれでも転んだりしない辺りやっぱり凄い技巧を感じる。ブレードランナーの経験は浅くても、他の経験の応用で乗りこなしていた。


ボクのゲーム内スマイルにポン、とタイマーが。メンテナンス通路を通るのは途中まで。そのままバックヤードに入り込んで、スタッフ専用エレベーターで地下階に降りるんだ。


フィクサーさんの計算によると、メンテナンス通路からバックヤードへ顔を出すタイミングジャストに警備隊の背中を見る。


でもこの期間の警備隊は凄まじく感知能力が上がってて、普段なら問題なくステルス出来る状況でも即座に発見アラートが鳴っちゃうんだ。先ずはここで躓くヒトが多かった。


だから、会敵した瞬間にピッタリヘッドショットで黙らせないと。今のボクは怪盗ラフィ!正義は無くてもお宝の為にやっつけちゃうよ!


タイマーが0に、飛び出したボクの手のスナイパーライフルがピタリ。遠くで背中を向ける警備隊の頭部へ弾丸を発射していた。半分振り向きかけた所で頭を撃ち抜かれて倒れ込む。


「最初の関門突破ね。」


「狙撃は得意ですから。」


ドキドキ、ワクワク。ここからは超反応で見つけてくる警備隊の視線を掻い潜って進む。


「にゃは、ステルスに見えて要は一人称視点パズルゲームです。」


つまり倒す順番が厳密に決まっていて、順番だけじゃなくてタイミングもしっかり守らないと見つかっちゃう。勿論フルステルスが大前提、アラートが鳴ったら秘宝が眠る宝物庫の大扉が開かなくなっちゃう。


ここを突破出来た強盗チームは居なかった。順番の割り出しとかは観察して半分ぐらい進んでいるけど、分かった事は‥‥


特定の時刻に屋根ルートで侵入した後、そのまま足を止めずに突っ切るしかない事。時間が経ってタイミングがズレると、どうしても発見されちゃうように視線が被り合っちゃう。警備隊は皆同じルーチンで動きつつも、ちょっとずつ時間差で動きがズレていくようになっていた。逆算して分かった時にはもうギブアップ。


ついでに3人以上居ると、この大部屋に追加で警備隊が5体配置されて突破不可能になる事も分かっていた。


「これクリアさせる気あんのかしらね?」


「毎回強盗に成功されて美術館なのに宝物庫が空な事はちょっと問題視されてましたし。今回新たに追加された宝物庫は死守するつもりでしょう。」


「ですが!」


ブレードランナーでボクは風になる。警備隊が10人居る大部屋は開けていて、遮蔽が殆ど無い。小さな体でスライディングすればギリギリ視線の範囲外をすり抜け、更にブレードランナーを片足だけ強く駆動してボクの体は地を這うよう回転する。


装備をフルオートライフルに変更、サプレッサーの付いた消音ライフルは短射程だけど火力は高め。1回転が終わるまでに5発の弾丸が飛んで、5人がその場で崩れ落ちた。


更に駆動して大きく宙返り、後1秒で死体を発見する1人の後頭部をズドン!


からの‥‥2段ジャンプ!!インプラントで脚を強化したボクは2段ジャンプが出来ちゃうんだ!ゲーム的な四次元殺法、空中を無法地帯にライフルが暴れる!


2段ジャンプ&ブレードランナーの片足駆動で錐揉み回転しながら吹っ飛ぶ。そして壁に着地するまでに弾丸が4発、警備隊は全員倒れ伏したのだった。


タマさんの賞賛する口笛に、フィクサーさんの拍手。


「常識じゃ考えられない無茶苦茶ね。」


「凡人達が捻り出したパズルの解答とは違いますが、ラフィさまなら3人のシビアな連携が求められる場面を1人で突破してしまいます。」


本来ここは3人でタイミングを合わせて狙撃していく場面。同時に‥‥じゃなくて微妙に撃つタイミングが不揃いでとんでもなく鬼畜だって話題になってた。


「ここまで来れたのもタマさんのハッキングとフィクサーさんの立案あってこそです。3人でチームなんですから。」


2人に撫でて!と催促。少しの間甘えて満足したら宝物庫へ足を向けた。


目前には赤外線センサーがズラリ。


「こういう罠ならハッキングツールで躱せるわね。」


ブラックマーケットと呼ばれる、希少な銃やハッキングツールが高額で出回る場所がある。並ぶ商品は日替わりランダム、無価値だけどやたら高い詐欺商品もズラリ。攻略情報が出回って尚、自動生成AIによって見た目が形成される模造品にプレイヤー達はリスキーな賭けを強いられていた。


タマさんもレジェンダリーランクのハッキングツールを求めて、暇さえあれば覗きに行ってお金を溶かしていた。それでも数打てばその内当たりを引ける。


「ハッキングツールがインプラント扱いで助かるわねー。」


死んでもドロップしないのは運営の良心かな?“微睡みの鐘”というレジェンダリーツールの効果は、範囲内のインターネットに繋がった全セキュリティを3分間ダウンさせる事。リチャージにリアル3日掛かるから、ここぞと言う時にしか使えない。


でもここが切り札の切り時だよ!警備の網に開いた大穴からボク達はそそくさ。


「アレを突破した後にエグいセキュリティですよね!普通の連中なら心が折れてしまうでしょう。」


「もう宝物庫は目の前ですよ!」


目前の大きなドア。如何にもな装飾のドアには厳重な電子鍵が掛かっているけど、タマさんにとっては無いも同然。


「いや流石に緊張するわよ?ここでミニゲームにシクったら台無しじゃない。ま、ゲーム程度の緊張でヘマはしないけどさ。」


遂に中へ!


きゃーっ!!(˶ᵔᗜᵔ˶)

突入!!


「さて、こっからね。」


宝物庫の中には沢山の美術館が仕舞われていた。どれも新実装された、レジェンダリーランクの装飾品の数々!ボク達で総取り!!


けれど触ったら警報が鳴っちゃう。


「さっきのやつはもう使っちゃったし、こっからは強行突破よね。」


「はいはい、ですから協力者を用意しました。」


前半ステルス、後半は銃撃戦。満足感たっぷりな強盗ミッション。


「先にどれを持ってくか吟味しましょ。」


所持重量っていう縛りがあって、美術品はタイプによって1個でとんでもなく重いのもある。そういう物のレアリティはレジェンダリーを超えるゴッズランク。一部の美術品だけに設定された間違いなくゲーム内でも最高峰のレアリティ。


そんな重たい美術品が目玉で、一回の強盗でゴッズランクはどう頑張っても1個までしか持って行けなかった。


「ゴッズは収納に入らないのよね。文字通り台車かなんかに乗せて運ぶ必要があるわ。」


収納から大きな台車を取り出す。バリア装甲を展開出来るこの台車自体もレジェンダリー。ブラックマーケットでタマさんが掴んだハズレなのか当たりなのか判断が難しい品の一つ。3億円したんだって、この台車。


「3億台車に使い所が来るとは思いませんでしたね!今までは悔し紛れに部屋の隅に飾っていたと言うのに。」


「うっさい。全部はこの為だったのよ。」


茶化すフィクサーさんと並んで歩くボクの目にはキラキラが映る。宝石を贅沢にあしらった、歴史的価値が凄い‥‥らしいネックレスや王冠。フレーバーテキストが王族がどうだとか、貴族がどうだとか仰々しく語ってくれた。

社会の最上位のヒト達へ献上され、時に外交の手札にもなった稀代の芸術家が手掛けた品の数々。納得感のある煌めきは正に美術の極み。


「ラフィはキラキラしたの好きよね。」


「はい、大好きです。綺麗‥‥!」


見た目もそうだけど、レジェンダリーという付加価値が更に煌めかせる。美術品のアイコンがキラキラ輝く金色!レアリティの暴力!


一つでも触ったら即座に宝物庫のドアが閉まって、プレイヤーには開けられなくなってしまう。そうなった時点でゲームオーバー。それで活躍するのがまたもやクイックハック。レジェンダリーランクだけど、入手難易度低めのツールの中に“フリーズドア“っていう物がある。


これを掛けたドアは、セキュリティトラップによって閉じるまでの時間を大きく引き延ばせた。この時間までに美術品をインベントリにかき込んで脱出しなきゃいけない。そう、そもそも盗むのにもレジェンダリーが要求される。他の宝物庫も同じだったけど、正にエンドコンテンツだった。


時間は僅か20秒、広々とした宝物庫の全部は持って行けないから吟味しなきゃ。


良いな、と思った美術品に目を付ける。それと宝物庫内のスクショも沢山撮って、後に来る他のユーザー達へ高く売ろうかなって。ゲーム内のお金は幾らあっても困らない。

一度強盗ミッションを成功させると、その施設で手配されて再チャレンジが実質不可能になるから。

美術館強盗任務自体は先着順、先行者が失敗した場合に他のプレイヤーが挑戦出来るようになる。制限時間自体シビアで、意外にも回転率は良いんだよね。早いと1、2分で前の挑戦者が失敗して順番が回って来る。

手配されているとボク達が侵入した時だけ警備隊の数が激増して、とてもじゃないけど攻略出来なくなっちゃう。


1プレイヤーチームで全部独占しちゃわないよう、運営なりに縛りを入れていた。このゲームはルール無用だけど、そういう細かな配慮も評価を上げているポイントなんだ。チャンスは誰にでもある!ってのが宣伝文句。


だからこそ手付かずな宝物庫内のスクショは価値が高いし、どれでも好きに選び放題なんて胸が躍っちゃう。


「おー、これ面白そうじゃない。」


タマさんが見上げたそれは、薄っすらと輝く大きな宝珠。宙にふんわり浮いたソレは、『万華鏡の宝珠』なんて名前のゴッテス。見た目に反して重量が凄い重い。台車に乗せて運ばないといけないレベル。


「ぱっと見ただの綺麗な宝珠ですが‥‥見た目を変えられる?」


一緒に美術品の説明が載ったプレートが浮いていた。


「触った奴の理想通りの形に変形するなんて面白そうじゃない。どんなもんか試してやりましょ。」


人々の理想を具現化しちゃう現代アート的な美術品。吟味出来る時間も無限にある訳じゃないし、そろそろ出発しないと。


「ではでは協力者に連絡を入れておきましょう。」


「はいっ!ボクが小さなのを目一杯持って行きますから、タマさんはゴッテスをお願いします!」


「りょー。さぁて、アタシの理想がどんなもんか見てやろうじゃない!」


さぁ、強盗‥‥開始っ!!


ボクはパパッと飾り立てられた美しい宝飾品に飛びついた!直ぐに警報が鳴ってドアが閉まりそうになるけど、タマさんがクイックハックを飛ばして20秒稼いでくれる。この時間が強盗に掛けられる時間!


ボクの小さな手が、欲望のままにキラキラを掴んではインベントリへ投げ入れた。


瑠璃色の宝石‥‥! 欲しい!!


宝石を加工して作ったコンゴウインコ! 欲しいっ!!


よく分からないけど凄い価値のある絵画! 欲しいよっ!!


並んだ何かの記念コインを駆動魔具ですれ違いざまに全部掻っ攫う!


美術品扱いの限定衣装にも片っ端から手が伸びる!あれも、これも!


ほしい、ほしいっ!と掴んでは、懐があったまっていく快感に気分が高揚した。きゃー(,,>᎑<,,)楽しいっ!!


そんな中、急にタマさんの素っ頓狂な叫び声を聞く。


見やれば‥‥アレ何?!


万華鏡の宝珠が台車の上で姿を変え、タマさんの姿になっていた!!クニークルスさんのように胸元がむっちり主張激しく、お尻が凄い見た目の彫刻がセクシーポーズなまま台車に積まれてる。


水着姿のタマさんのグラビア彫刻?!


「何よコレ?!」


「良いから早く脱出しましょう!もう時間無いですよ!」


「にゃはは!!ヒヒヒ‥‥!笑わせないで下さいよ!!」


「笑うんじゃ無いわよ!!あー!!もう!!これ抱えて逃げるの?!」


台車を押すフィクサーさんを先頭に、ボク達は慌ただしく宝物庫から飛び出したのだった!!

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