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幕間 米軍航空隊内の噂

 空には南十字星が輝き、南太平洋の海は波も穏やかだ。

 そんな海を切り裂き、巨大なフネが現れる。真っ平らな甲板に小さな艦橋。マストに翻る星条旗。その姿は、まぎれもないアメリカ海軍空母だった。



「そう言えば、ジャップの奴らにヤバいのがいるってよ。敵を墜としまくる飛行機乗り」

 空母「ワスプ」甲板で一人の航空兵が夜空を見上げて言う。ポケットからラッキーストライクの箱を取り出し、一本を抜いて口にくわえると、火をつけた。

「サイコパスか?」

 隣に立つ整備兵が話しかける。

「いや、そういう殺人狂ではないらしいんだ。冷徹で、敵機を撃つことにためらいがない。狂ったような奴じゃ戦闘機乗りなんてやってられんさ。」

 即座に撃墜されるのがオチだ。と続けると、航空兵は紫煙を夜空に吐き出した。

「どこにいるんだ?」

 整備兵が問う。航空兵は、煙草の煙を吸い込むと、いった。

「ラバウルだ。」

「ラバウルって、ヤバい奴らしかいないとこじゃないか。そもそも俺たちのワイルドキャットであのクッソ忌々しい零戦ジークに勝てるわけねえだろ・・・・・・」

 整備兵が眉をひそめる。

 ラバウルには、日本海軍トップエース岩本徹三をはじめ、坂井三郎、西澤廣義、笹井醇一、山ノ井彩音など、撃墜王が多く配属されていた。

「・・・・・とくに『コテツ』とかには」

 「コテツ」、零戦虎徹の異名をとる岩本徹三一飛曹のことだ。そのあだ名は、米軍内でも有名である。

「腕が立つ奴ならあそこにはごまんといるさ。だけどな、女の戦闘機乗りなんてジャップにもうちにもあいつくらいだろうよ。」

「女!?」

 航空兵の言葉に整備兵が目を見張る。

「ああ、しかも腕は一流というんだからな。恐ろしいよ。」

「ジャップどももそこまで追い詰められているのか?女を戦場に出すほどにまで。」

「急ごしらえであそこまで強くはないだろう。とにかく。俺たちはソイツをこう呼んでいる。」

 航空兵は少し黙った後、言った。

「・・・・・・・・『ラバウルの魔女ウィッチインラバウル』と」

「で、それがどうした?」

 整備兵が聞くと、航空兵はつぶやいた。

「いや、一度でいいからお手合わせしてみたいな・・・・・・・って」

「これから行く方面で出会えるんじゃないか?そもそも、他の零戦ジークの中からソイツを見つけられるかが問題だけどな。」

 整備兵の言葉に、航空兵が返す。

「そいつは、機体に桜の花チェリーブロッサムを描いているらしい。だから俺は、こう呼んでやってるんだ。」

 航空兵は、闘志に燃えた目で言った。

「Flower Fighterってな」

 ワスプはゆっくりと舵を切った・・・・・・・ガダルカナルのほうへと・・・・・

今回のあとがきは都合によりお休みです。

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