第四話 零戦虎徹見参!
初撃墜から何か月も過ぎた。その間にも、坂井先輩や西澤一飛曹の訓練を受けたわたしは、度重なる戦いで五機を撃墜し、エースパイロットの仲間入りを果たした。
戦況は日に日に激しくなっているらしく、ほぼ毎月のように増援部隊が送られてくる。
そんな中の十一月十四日、真新しい零戦を駆り、十数機の部隊を率いて、一人の男がラバウルに降り立った。
この人がほかの人と違う点は、何個もある。髪はかなりの長髪だし、目つきも結構優しい。それに、救命胴衣の背に書いてあるものが、他の搭乗員とは違っていた。
救命胴衣の背中には、普通なら所属部隊と名前、階級が書いてある。わたしの場合は、「V空 二等飛行兵曹 山ノ井彩音」だ。
でも、この人の背にはそんなの書いてない。そこには墨書きで大きく「天下の浪人零戦虎徹」と記されていた。
「あれがあの有名な『零戦虎徹』。岩本徹三一飛曹か」
羽藤二飛曹がぼそりとつぶやく。
「有名なんですか?」
「帝国海軍一の戦闘機乗りだよ。腕もいいんだけど、何より自ら『零戦虎徹』と名乗ってるのが有名だよ。『虎徹』っていう名刀に腕のいい自分を重ね合わせてるんだ」
「へえー」
先頭を行く岩本一飛曹が少しこっちを向いた。
あれ?なんかちょっと微笑んだような・・・・・・・・・まあ、気のせいだな。
その翌日、いつものように三機一個小隊で哨戒飛行をしていると、無線機が鳴った。
《こちら航空指令、こちら航空指令、ラバウル方面に向かう敵機の群れを発見!迎撃を開始せよ!》
地上から、昨日配属になった零戦隊が飛び立った。翼の下に、見慣れないものをつりさげている。
「ん?」
どんどん近づいてくる敵機の上に零戦が到達。その瞬間、すさまじい光が炸裂した。
ドォーン!
あたりに煙が立ち込める。
しばらくして、煙がはれ始めた。その時、さっきまでたくさんいた敵機は、一機もいなくなっていた。
「え?」
いったい何が起こった!?
岩本分隊は、そのまま基地に帰投していく。
「あの技、わたしもやりたい!」
岩本一飛曹がよくわからない技で一瞬のうちに敵機を落とした日の夜。わたしは、宿舎の廊下を進んでいた。
「えーっと、ここだね」
一つの部屋の前に立つ。そっと、扉を三回ノックした。
「はい?」
岩本一飛曹の声が聞こえる。
「台南空の山ノ井彩音二飛曹であります。岩本一飛曹に用件があってまいりました」
「おう、入れ」
わたしは、扉を開けて、敬礼をした。
「失礼いたします!」
岩本一飛曹は、第三種軍服をピシッと着こなし、椅子にゆったりと腰かけていた。
「台南空の方とは、珍しいね。初めまして、第二八一航空隊の岩本徹三だ。階級は一飛曹。君のことはよく聞くよ。皇軍唯一の女性エースパイロットってね」
岩本一飛曹がふわっと笑った。ちょっと眉が垂れて、はにかんだような笑顔だ。
「身に余る光栄であります」
「まあまあ、そんなにかしこまらなくてもいいし、普通の敬語で大丈夫だ」
「はい」
岩本一飛曹は、ほほ笑んだまま、室内にある椅子を指した。
「まあ座って。で、用件はなに?」
「はい、今日の岩本一飛曹の戦闘を見てたんですけど、すごい技を出してて、それが気になりまして・・・・・」
岩本一飛曹は、ちょっとの間話を聞いて、口を開いた。
「あれは、三号爆弾だ」
「三号爆弾?」
岩本一飛曹は、うなずいて続けた。
「横須賀航空技術廠が開発した新型爆弾だ。敵大型機の編隊に対して使う。上空から投下すると、爆発し、中に入っている何万個もの鉄片が降り注ぎ、敵機を撃墜する」
す、すごい・・・・・・
「ぜひ、わたしにも使い方を教えてください!」
身を乗り出したわたしに押されるように、岩本一飛曹が体をそらす。
「わかった、今度教えてやるから、今日のとこは帰って寝ろ。そろそろ就寝のラッパの時間だぞ」
「はい」
その次の日から、毎晩のように岩本一飛曹の部屋で三号爆弾の使い方について教えてもらったけど、三号爆弾を使う機会はあまりなかった。
わたしが本格的に三号爆弾を使うのは、もうちょっと後かな。
早く使ってみたいな~。
保信「保信とぉ!」
春音「春音とぉ!」
みやび「みやびのぉ!」
三人『次回予告外伝番外編~~~!』
―♪さらばラバウルよ また来るまでは しばし別れの涙がにじむ・・・・・・・・
保信「さて、今回は、日本海軍のトップエース。『零戦虎徹』こと岩本徹三一飛曹が登場しました!」
春音「ちなみに、撃墜数は多く見積もって二百二機、少なく見積もっても八十機です。わたしのおばあちゃんが確実撃墜七十五機ですから、かなりのすごさだったということがわかります。」
みやび「ちなみに、坂井一飛曹は八十九機、笹井中尉は五十四機、西澤一飛曹は百機ほどだそうです。」
保信「そう言えば、ハルも結構模擬空戦では相手のこと撃墜してるよね。」
みやび「何しろ模擬空戦大会で全国一位、世界でもベストファイブの腕前ですからね~。」
春音「いわないでよ~。恥ずかしいじゃん!」
みやび「大会で勝つたびに撃墜マーク入れてますもんね。わたしが描いてるんですけど、この前で二十五個目だったような気が・・・・・・・」
保信「ちなみに、撃墜マークは入れる人と入れない人とがいるようです。個人の好みかな。今回初登場の岩本一飛曹は桜の花を撃墜マークにしてて、機体後部はピンク色に染まってたらしいけど。」
春音「わたしは撃墜マークとして五芒星を書き込んでるよ。ヤスは?」
保信「僕はヤマブキの花。みんなそれぞれだよね。」
みやび「書き込む整備員のほうとしては、シンプルなほうが助かります。」
春音「ところでさ、そろそろ終わりだから次回予告しちゃお。」
保信「そうだね。じゃあみやび、よろしく。」
みやび「次回は、ついにあのガダルカナルの戦いが始まります」
春音「それでは皆さん」
三人『お楽しみに~!』




