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第一話 台南空の一員に

 わたしを乗せた駆逐艦「雪風」は、トラック泊地をたって数日後、ニューブリテン島ラバウルの波止場に着岸した

「両舷停止!」

「錨鎖下ろせ~!」

 乗組員さんの声が聞こえてくる。荷物をまとめて立ち上がろうとしたその時、わたしの隣にぽわんとした光が現れた。中から、二人の少女が出てくる。

「彩音さん、もうお別れですね。わたし、寂しいです」

 この駆逐艦「雪風」の艦魂、雪風がわたしに言った。その巫女服の右手を握る。

「大丈夫、また会えるよ。矢矧もね」

 雪風とその隣に立っている。軽巡洋艦「矢矧」艦魂、矢矧がわたしに向かって敬礼する。わたしも敬礼を返すと、タラップを降りた。

 ここラバウルは、この聖戦におけるニューギニア地方の一大要衝。数多くの航空隊が配属されている。その中の「台南航空隊」がわたしの所属部隊だ。

 波止場わきに整列している搭乗員の中から、一人の男が出てきた。わたしの前に立って、右手を差し出す。

「君が山ノ井彩音君だね。台南航空隊笹井中隊の隊長、笹井醇一だ。階級は中尉。以後、よろしく頼む」

 わたしは敬礼して、返した。

「わたくしが、今回配属されました山ノ井彩音二等飛行兵曹にございます!こちらこそ、よろしくお願いいたします!」

 笹井中尉はフッと笑うと、わたしの右手を握った。心臓が、どきんと跳ね上がる。だって、笹井中尉はすごい美男子なんだもん。これでときめかない女はいないと思う。

「そんなにかしこまる必要はない。あっそうだな、君は坂井小隊に配属だ。坂井、ちょっとこっちに」

 笹井中尉が手招きすると、人垣の中から、一人の搭乗員が出てきた。やせていて、背はわたしよりちょっと大きいくらいかな?見た目だけで言うと、近所にいるお兄さんみたいだ。

「坂井、こいつがおまえの小隊の新しい仲間、山ノ井二飛曹だ。山ノ井君。こいつが君の所属する小隊の隊長、坂井三郎一飛曹だ」

 笹井中尉の言葉に、坂井一飛曹はちょっと会釈をした。

「俺が坂井三郎だ。よろしく頼む。好きなように呼んでくれ。あと、お前を台南空の一員として、厳しく鍛えてやるから、覚悟しろ!!」

 わたしは、また敬礼して答える。

「わかりました!坂井先輩!」

 笹井中尉がわたしに耳打ちした。

「あとのことは坂井に任せてあるから。坂井にきいてくれ」

「わかりました」

 坂井先輩は、親指をちょっと動かして、言った。

「ついて来い。おまえの飛行機のとこに、案内してやる」

 先輩について行った先の格納庫には、たくさんの飛行機が翼を休めていた。そのほとんどは、主力艦上戦闘機の「零式艦上戦闘機」通称「零戦」だ。

 その中の一機の前で、坂井先輩は足を止めた。

「こいつ、零戦二一型だ。覚えておけ」

 明るい灰色に塗られた機体を指さす。機体番号は「V―121」。

「はい」

 先輩は、踵を返して庫の外に出ていく。

「ちょっ、待ってください」

 先輩の背中を追って外に出たわたしの目に飛び込んできたのは、もうもうと噴煙を上げる火山だった。先輩がそれを指さす。

「あれが花吹山、ラバウルの目印みたいなものだ。帰投するときは、あれを目印にしろ」

「はい!」

「あそこのやぐらが偵察所。着陸するときに翼をひっかけるなよ」

 一通り説明をしてくれた先輩は、わたしのほうを振り向くとニコッと笑った。

「そろそろ指揮所に帰ろう。中隊のみんなが歓迎会の開始を今か今かと待ってるぞ」

「え・・・・・・?」

 先輩は、笑いながら言う。

「新しい仲間が来たんだぞ。歓迎しないわけあるか」

 笑いながら指揮所に歩いていく先輩の背中を追いかける。滑走路にならぶ飛行機たちの肌に、真っ赤な夕日がきらめいていた。






「それでは、我々の新しい仲間を祝って、乾杯!」

『かんぱ~い!』

 カチン!

 笹井中尉の音頭で、みんなが乾杯する。

 ラバウル飛行場からほど近い山の上にある料亭「山の家」。そこの座敷の一つに、台南空非番のみんなが集まっていた。

「やっぱり酒はうめぇなぁ!」

 誰かが叫ぶ。まだ十八歳のわたしは、その気持ちがわからない。

「よ~し!軍艦行進曲歌うぞ!一二っ三はいっ!」

『守るも攻むるも黒金の 浮かべる城ぞ頼みなる・・・・・』

 歌声は南国の夜空に響き渡る。わたしはその調べに合わせて体を揺らしながら、コップの中のサイダーをちびちびと飲んだ。






 そのあとの歓迎の宴は、日付が変わるころまで続いた。

 その翌日、二日酔いでフラフラしている坂井先輩が基地関係者に目撃された。

保信「保信とぉ!」

春音「春音とぉ!」

みやび「みやびのぉ!」

三人『次回予告外伝番外編~~~!』

―さらばラバウルよ また来るまでは

保信「今回の作品は、ハルのおばあちゃんである山ノ井彩音二飛曹のお話です。」

春音「わたしの飛行機好きの理由であるおばあちゃんの思い出です。楽しんでいただけたら幸いです。」

みやび「今回はわたしたちの出番は少ないですけど、楽しみです。」

保信「さて、ここらへんで次回予告に入りましょう。」

春音「次回は、おばあちゃんが初めての空戦を経験します。それでは皆さん」

三人『お楽しみに~!』

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