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聖剣の墓標  作者: 必殺技を顔面で受ける
プロローグ
1/7

プロローグ「剣士を夢見た日」

よろしくお願いします。

基本はレオ目線です。

ここは聖国エリュシオン


 その広大な領地の端に、ひっそりと存在する小さな村があった。


 外れと呼ばれる場所だが、そこには人の温もりがあった。風は穏やかで、朝は鳥の声に満ち、夜は静寂が優しく降りてくる。


 そんな村の一軒の家から、にぎやかな声が響いていた。


「レオ! 7歳の誕生日おめでとう!」


 父の明るい声が響く。


「女神の祝福がある事を願ってるぞ!」


 そう言って父は豪快に笑った。


母のサラも優しく微笑みながら頷いた。


「本当におめでとう、レオ」


 レオは少し照れくさそうに頬をかきながら、


「……ありがとう」


 と答えた。


 すると、隣にいた姉のリアが前に出る。


「はい、これ。誕生日プレゼント」


「え?」


 差し出されたのは、丁寧に編まれた手拭いだった。


 母が優しく言葉を添える。


「リアが頑張って作ったのよ」


 レオはそれを受け取り、じっと見つめる。


 少し歪なところもあるけれど、それが逆に温かかった。


「……お姉ちゃん。ありがとう」


 そう言って少し恥ずかしそうに笑うと、リアは満足げに腕を組んだ。


「当然でしょ?わたしの力作なんだから!」


その口元は、わずかに緩んでいた。


家族の笑い声が、部屋を満たす。


 そんな和やかな空気の中、レオは少しだけ視線を落とした。


 そして、言いづらそうに口を開く。


「あのさ……」


「ん?」


父が顔を向ける。


「そろそろ……僕も、お父さんみたいな剣士になりたい」


 一瞬、静寂が落ちた。


 父は目を丸くしたあと、ふっと笑う。


「そうかぁ。もうそんなこと言う年になったか」


 そう言って、レオの頭を大きな手でわしゃわしゃと撫でた。


「なら、そろそろ教えてもいい頃かもな」


「ほんと!?」


 レオの目が輝く。


 だが、すぐに横から声が飛ぶ。


「えぇー? レオにはまだ早いんじゃないの?」


 リアがからかうように笑う。


「そ、そんなことないって!」


 レオはむっとして言い返す。


「僕、お父さんみたいに強くなるんだ!」


 その言葉に、母が眉をひそめた。


「ダメよ。まだ早いわ」


「えー!」


 不満を漏らすレオに、父が肩をすくめる。


「まあまあ、サラ。今日は誕生日だぞ?」


 父に軽く抱き寄せられ、母はため息をついた。


「……もう、あなたったら。怪我させたら怒るからね」


「任せとけって」


 父はにやりと笑った。


 レオはそのやり取りを見て、胸が熱くなるのを感じていた。


 ――父は元Sランク冒険者。

  名をサイラス・バレットと言う。


 しかも、上位の剣技を使える数少ない剣士だ。


この世界には何を扱うにしてもいくつかの階位がある。


 確か、下位、中位、上位……そして、そのさらに上の階位もあったはずだ。


 名前までは覚えていない。


 けれど――


(上位が、すごいってことだけは知ってる)


 下位の剣技は努力で届く。


 だが中位からは違う。


 女神の祝福がなければ扱えない。


 そして上位ともなれば、それは“選ばれた者”の証だった。


(お父さんみたいに……なりたい)


 その想いは、もうただの憧れじゃなかった。


 翌日。


 朝早く、レオは父のもとへ駆けていく。


「お父さん! はやく教えてよ!」


 父は準備をしながら苦笑した。


「おいおい、朝から元気だな」


「だって約束したでしょ!」


「まあな。でもな――」


 父は剣を背負いながら言う。


「やることやってからだ。今日はゴブリン退治に行かないといけない」


「えぇー……」


 レオは露骨に肩を落とす。


「じゃあ、待ってる」


「いい子だ。すぐ戻るさ」


 そう言って父は出ていった。


 その背中はやっぱり大きくて、かっこよかった。


 ――だからこそ。


 レオはこっそり父の剣に手を伸ばした。


「……これくらい、持てるって」


 ぐっと力を込める。


 だが、


「う、うわっ……!」


 剣は想像以上に重く、体がふらつく。


「ちょ、ちょっと! 危ないってバカ!」


 リアが慌てて叫ぶ。


「だ、大丈夫だって……!」


 必死に踏ん張るレオ。


 その時、


「レオ!」


 母の鋭い声が飛んだ。


「すぐに置きなさい!」


 びくっとして、レオは慌てて剣を置いた。


「ダメでしょ!」


「……はい」


 しゅんとするレオの横で、リアがくすくす笑う。


「ほらね、無理なんだって」


 レオはじっと姉を睨んだ。


「……なんだよ」


「なに?」


 火花が散りかけたところで、


「レオ、罰として今日はお母さんの手伝いね」


「えぇー!?」


  その後、罰として母の手伝いをすることになり、半日が過ぎた。


 リアはというと、本を読んでいる。


「ねぇ、それ何の本?」


「……どうせレオに言っても分かんないから」


「分かるし!」


 言い返そうとした瞬間、


「二人とも、祈りの時間よ」


 母の声がかかる。


「はーい」


 二人は並んで祈りを捧げた。


 レオはふと疑問を口にする。


「ねぇ、これって毎日やる意味あるの?」


 リアが呆れたようにため息をついた。


「レオはバカね」


「ぬ!?」


「毎日祈ることで、選ばれた人が女神に役割を与えてもらえるの」


「役割?」


「そう。力の方向性みたいなもの」


 リアは少しだけ真面目な顔になる。


「……わたし、お母さんみたいな聖職者になるのが夢なの」


「えー?」


 レオはにやっと笑う。


「お姉ちゃんみたいな意地悪な人が選ばれるわけないよーだ」


「なにそれ!?」


 再び始まりそうな喧嘩。


 当然、


「はい、掃除!」


 母の一声で強制終了。


 そして夕方。


 父が帰ってきた。


「ただいま」


「おかえりなさい」


 父は疲れた様子で腰を下ろす。


「最近、魔物が活発になってるな……」


 母が少し心配そうに言う。


「結界、貼り直した方がいいかもしれないわね」


「ああ……そうだな」


 その会話を、レオはぼんやり聞いていた。


 でもすぐに思い出す。


「あっ! ねぇお父さん! 剣!」


「ああ、そうだったな」


 父は立ち上がる。


「よし、まずは――筋トレだ」


「え?」


「腕立て伏せ、いくぞ」


「えぇ!?」


 レオの想像していた“剣の修行”とは違った。


 だが、


「最強の剣士になるんだろ?」


「……うん!」


 歯を食いしばって、腕立てを始める。


 さらに走り込み。


 気づけば体は限界だった。


 その夜、レオは布団に入った瞬間、眠りに落ちた。


「ふふ……可愛いわね」


 母が寝顔を見て微笑む。


 リアはため息をついた。


「こんなんで最強の剣士なんて……何年かかるのやら」


 その言葉に、父は静かに笑った。


「レオはなるさ」


 確信に満ちた声で言う。


「最強の剣士にな」


 小さな村の、小さな少年の夢。


 それはまだ、始まったばかりだった。

ありがとうございました。

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