三ヶ月間 ~席替え~
朝のホームルーム。
「今日の6限目のホームルーム、席替えするぞ~」
担任の夏山先生がさりげなく言った。
クラスの生徒が騒ぎだす。
うるさい…
席なんてどこでもいいだろ
騒ぐ必要なんかない。
ため息をつきながら、なんとなく隣を見る。
カイカが目を見開いていた。
口まで半開きになっている。
「口開いてるぞ…」
「あっ?あぁ」
慌てて口を閉じるカイカ。
……なんだこいつ。
「お前、席替え嫌なのか?」
「っ!?」
カイカの耳がぴくっと跳ねた。
「別に……違う」
「そっか」
僕はそれ以上何も言わない。
ただ、落ち着きなく揺れているカイカの尻尾を見る。
…ほんと、わかりやすいやつだな。
ーーーー
昼休み。
最近のこの時間が少し楽しみになっている。
カイカの作ってきてくれる弁当がうまいからだ。
「ほら、今日の分だ」
カイカが弁当箱を差し出してくる
「ありがとう」
ふたを開けると、いい匂いがする
いつも通り、おいしそうな匂いだ。
自然と尻尾が揺れる。
そのとき。
「ウェルベル、カイカ、ちょっといいか」
担任の夏山先生が声をかけてきた。
せっかく弁当を食べる所だったのに…
「…俺たちですか?」
「ああ。二人ともだ」
弁当のふたを閉める。
カイカと一緒に夏山先生のもとへ向かった。
「二人とも飯食ってるときに、悪いな。ちょっとこっちでいいか」
夏山先生の後をついていく。
「二人とも今日の席替えの件なんだが…」
他の生徒がいない事を確認した夏山先生が口を開いた。
「二人には同じ席でいてもらいたい。まだ二人を恐れている生徒がいるんだ」
あぁ…なんだ、そんなことか。
別にどうでもいい。
それに下手に恐れる人間より、
カイカが隣のほうが気が楽だ。
「なんだよ…それ…」
カイカが口を開く。
いつもより数段低い声だ。
「よく知りもしないで狂暴だと思って、勝手に恐れてるのはあいつらだろ…」
カイカの耳がピンと立つ。
毛がわずかに逆立っていた。
「……ああ、その通りだ」
夏山先生が小さくうなずく。
「お前の言ってることは間違ってない」
少しだけ視線を落とす。
「でもな」
先生は静かに言う。
「先生としては、他の生徒のことも考えなきゃいけないんだ」
短く息をつく。
「……すまない」
少しの沈黙。
カイカの耳がゆっくりと下がる
「僕は別にいいですよ」
「……え?」
カイカが驚いた顔でこっちを見てくる。
「カイカは僕の隣は嫌か?」
カイカの耳がピンと立つ
「嫌じゃない」
「だろ?」
「すまない…二人とも」
黙っていた夏山先生が口を開いた。
「飯を食う時間が無くなるから戻って大丈夫だ」
「はい」
夏山先生を後に教室に戻る。
「ウェルベル…カイカをよろしくな」
後ろから声をかけられる。
僕は何も言わない。
カイカの保護者でもないし
世話をしているわけでもない。
「なんで俺が世話されてるみたいなんだよ…」
少し不貞腐れたようにカイカが言う。
「さあ?カイカが子供っぽいからじゃないか?」
「は?…なんだよ、それ」
「違うのか?」
「違ぇよ」
軽口を叩きながら教室に戻る。
二つの尻尾が、少しだけ揺れていた。
ーーー
6限目、ホームルーム
「それじゃ、席替えをするぞ~」
教室がざわつく。
「ウェルベルとカイカはそのままな」
一瞬空気が止まる。
「えー」「なんで」「ずるくない?」
ほかの生徒から声が上がる。
「いいからくじを引け」
夏山先生は軽く流す。
まだ少しざわついたまま、くじ引きが始まる。
…相変わらず騒がしい。
そう思いながら横を見る。
カイカは何も言わない。
「隣のままでよかったな」
カイカの耳が、びくッと震えた。
「まぁな……」
カイカが小さくつぶやく。
やっぱり席替えは嫌だったんだな。
でも、今はわかりやすいくらい嬉しそうだ。
カイカの尻尾に目を向ける。
嬉しそうに大きく揺れていた。
投稿するの忘れてた…
リアクションもらえてるのめっちゃうれしい…




