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第8話

会合での張り詰めた空気から一転、今日の私は「ただの真白」として、街一番のパンケーキショップのテラス席にいた。


目の前には、お嬢様学校時代からの親友、リサとエミ。

彼女たちは、私が組織の「ボス」になったことを知っている。それどころか、私が銃弾を浴びることに悦びを感じる「ひどい女」だということも。


「ちょっと真白! またコートの下、血が滲んでない? せっかくの新作ブラウスが台無しじゃないの」


リサが呆れたように紅茶をすすりながら指摘する。

私は「あはは」と笑って、ボルドーのコートの隙間から覗く、包帯がうっすら赤くなった脇腹を隠した。


「昨日、ちょっとわがままな『お客様』の相手をしてね。でも大丈夫、この傷はもう乾き始めてるわ」


「真白ってば、昔からそうよね」

エミが、ふわふわのパンケーキを口に運びながら微笑む。

「お父様に『外に出るな』って言われてた頃も、勝手に抜け出してはボロボロになって帰ってきて。私たち、いつかあなたが本当に壊れちゃうんじゃないかって心配してたんだから」


「……ごめんね。でも、今の私は自由よ」


私は優雅にフォークを動かし、甘いシロップのかかったパンケーキを口にする。

裏社会を支配する冷徹な女帝としての私と、親友と恋バナや流行りの服について語り合う私。その両方が、紛れもない「真白」なのだ。


ふと、店の外に目をやると、路肩に停めた私のピンクのポルシェ356が、午後の陽光を浴びてキラキラと輝いている。その周囲では、私の部下たちが一般人に溶け込むような私服姿で、鋭い視線を配っていた。


「ねえ真白。ボスになって、もう嫉妬で惨めな思いをしなくて済むようになったのはお祝いしてあげるけど……たまには、穴の開いてない綺麗な体のままでデートとかしなさいよ?」


リサの少し寂しげで、けれど深い愛情がこもった言葉に、私は胸が温かくなるのを感じた。


「……努力はしてみるわ。でもね、リサ。この傷跡の一つ一つが、私が自由を勝ち取った証なの。だから、私はこの『ズタボロな自分』が、世界で一番可愛いと思っているのよ」


私は悪戯っぽくウィンクをして、親友たちと笑い合った。

友達と過ごす穏やかな時間も、戦場で肉を裂かれる熱い快感も、すべてが私の人生を彩る大切なピース。


「さて、お茶が終わったら、私のポルシェでドライブに行かない? 久しぶりに、女の子らしい楽しみをしましょう」


私は、あちこち穴だらけの、けれど最高に満足した体で席を立った。

たとえ明日、また死地へ向かうとしても。今この瞬間、私はただの「幸せな女の子」として、親友たちの手を取った。

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