第7話
各国のファミリー、武器商人、そして冷徹な殺し屋たちが一堂に会する裏社会の最高幹部会合。
会場は緊張感で張り詰め、タキシードや軍服に身を包んだ男たちが、新参の「女ボス」である私を品定めするように見つめていた。
私は、いつものボルドーのコートにミニスカートという、血生臭い会合には不釣り合いなほど「普通」の、そして「女の子らしい」格好で円卓に座る。
「……おい、あのお嬢ちゃんが例の? 随分と可愛らしい格好で来たもんだ」
「マフィアのボスというより、大学の講義をサボってきたようにしか見えんな」
男たちの嘲笑がひそひそと聞こえてくる。けれど、私が優雅に指先を動かし、ティーカップを口に運んだ瞬間、その場の空気が凍りついた。
ブラウスの袖口から覗く手首。そして、脚を組み替えた際にミニスカートの裾から露わになった太もも。
そこには、並の男が一生かかっても負いきれないほどの、無数の弾痕と縫合跡が刻まれていた。
私はわざと、コートを脱いで椅子の背にかけた。
白いブラウス越しでもわかる。肩、鎖骨、脇腹——私の体は、銃弾によって穿たれ、それを悦びとして受け入れてきた「地獄の地図」そのものだ。
「あら、皆様。私の顔に何かついていて?」
私は至って冷静に、そして花が綻ぶような完璧な微笑みを向けた。
男たちの視線が、私の傷跡と、その傷を負いながらも一点の曇りもなく微笑む「狂気」に釘付けになる。
彼らは理解したのだ。
目の前の女は、守られているお嬢様などではない。
自ら弾丸の中に飛び込み、肉を裂かれ、骨を砕かれ、それでもなお平然と紅茶を嗜むことができる、本物の怪物であることを。
「……失礼した、真白殿」
さっきまで私を鼻で笑っていた北欧の巨漢が、思わず視線を逸らして頭を下げた。
どれだけ着飾ろうと、どれだけ武装しようと、この「傷跡」という名の勲章に勝る説得力はない。
一発の銃弾で震え上がるような男たちにとって、体中を穴だらけにされながら「もっと」と微笑む私という存在は、死神よりも恐ろしい対象だった。
「いいのよ。私はただ、美味しいお茶と、楽しい『お仕事』の話ができればそれで満足だわ」
私は優雅に背筋を伸ばし、円卓を見渡す。
もはや私を侮る者はいない。
穴だらけの体、血の匂いが染み付いた普段着、そして誰よりも美しい微笑み。
「さて、次は誰が私を『楽しませて』くれるのかしら?」
私の問いかけに、裏社会の猛者たちは一様に口を噤み、ただ畏怖と共に私を見守るしかなかった。




