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第1話

雨上がりの路地裏は、排気ガスと湿ったコンクリートの匂いがして、私の大好きな「戦場」の香りがする。


私の名前は真白。この街を支配する組織の「お嬢様」なんて呼ばれているけれど、中身はそんなにおしとやかなものじゃない。


目の前には、私の愛車。サクラ色のポルシェ356。

ボディに刻まれた黒のスライプに、泥跳ねひとつ付いていない完璧な曲線美。この子を傷つける奴がいたら、その瞬間に頭をぶち抜いてあげるけれど、私自身の体はどうでもいい。


むしろ、壊れれば壊れるほど、自分が「生きている」実感が湧いてくるの。


「ふぅ……。今回も、ちょっと欲張りすぎちゃったかな」


私はお気に入りのボルドー色のコートの裾を払い、愛車のボンネットに軽く腰をかけた。

制服風のブラウスは、もう真っ赤に染まって使い物にならない。スカートの下の足も、ブーツも、どこもかしこも銃弾の痕で穴だらけ。


右肩に一発、脇腹に二発、太ももを掠めたのが数えきれないくらい。


普通の人ならショック死しているか、激痛で叫んでいるはず。でも、私はこのズタボロな状態がたまらなく愛おしい。弾丸が肉を裂く瞬間の熱さ、血が噴き出す解放感。


「あはは、またお父様に『ひどい女だ』って嘆かれちゃう」


手に持ったリボルバーの熱を感じながら、私は独り言をこぼす。単独で敵のアジトを壊滅させた代償は、私の体中の「穴」だけど、そんなの安いもの。私は、痛みを感じることでしか、お嬢様という退屈な檻から抜け出せない。


コートの下で、肉がゆっくりと再生し始める奇妙な感覚。私は、まだ血が滴る指先で、ポルシェのドアハンドルに触れた。この子だけは、私の代わりに綺麗でいてもらわなきゃ。


「さて、次はどの組織が私を『可愛がって』くれるのかしら?」


ピンクのポルシェが、重厚なエンジン音を響かせて路地裏を抜ける。

サクラ色の車体に、真っ赤な私の足跡。

私は真白。街で一番可愛くて、一番壊れた、マフィアの「お嬢様」。

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