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墓地の戦い11

 門を後にして、街の大通りをしばらく歩いたが、通りを照らす街灯が灯っているだけで店はどこも閉まっていた。

 大通りを抜けると行き交う人がちらほら見えてきた。

 そして酒場などの立ち居並ぶ繁華街に近づくと、その店の中から溢れる光が通りを明るくしていた。

 酔っ払いや男たちに声をかける夜の女たちが通りに至るところに見えている。

 そんな喧騒が静かになってきたら、オレたちの住む住宅街に入った。

 住宅街といっても、店を兼ねた家が多いので昼間は買い物客などで賑わっているが、

 さすがに夜は大通りと同じく開いている店はなく、通りを歩く者は少なかった。

「それじゃ、また明日」

 パムがオレたちの方に振り返って、にこやかな笑顔で別れを告げ家へと帰っていった。

 パムはテッドとウィルの顔を見たのに、オレには顔を向けようとしなかった。

 まだパムの怒りは収まっていないようだ。

「明日、ちゃんと謝れよ」

 テッドは、わざとオレの傷めている左肩を小突いて自分の家のほうに歩いて行ってしまった。

「何があったか知らないけど、どうせアルが悪いんだから謝りなよ」

 ウィルのそう言い残すと帰ってしまった。

 そりゃ、メイスを投げつけたオレも悪いかもしれないけど、あの時は危なかったんだから、そんなに怒らなくても良いと思うけど。

 まあ、あの二人が謝ったほうが良いって言うならそうした方が良さそうだ。

 昔からパムとオレが喧嘩した時にはテッドとウィルが間に入ってくれて、仲直りさせてくれていた。

 あとになって考えたら、その喧嘩のほとんどの原因はオレにあったことも事実だ。

 明日パムに会ったら、さりげなく頭を下げて許してもらうことにするか。

 オレは夜空を見上げ、明日なんて言ってパムに詫びの言葉を切り出そうか考えたが、うまい言い方が浮かばなかった。

 いくら考えての浮かんでこない。仕方ない、もう帰って寝よう明日になれば何とかなるだろう。

 オレは表通りを少し歩き、一軒の店の前に立った。

 店の看板には、葉っぱの絵が描いてある。

 店で葉っぱを直接売っているわけではない。薬を葉っぱに包んで、それを店に並べて売っている。

 葉っぱは、いろいろな種類があり、薬草は煎じて使ったり、すり潰して痛い所に塗ったりする。

 そして薬草以外の葉っぱは、すり潰した薬草を包んでおくこともできる。

店の脇の路地に行き、勝手口の戸に手をかけたが閉まっていた。

 母さんはもう寝てしまったようだ。

 戸には鍵のような上等なものは付いていない。

 家の中から戸につっかえ棒をしているだけのことだ。

 別に慌てるようなことではない、いつものことだ。

 オレは腰のベルトにぶら下げた皮の袋から一本の鉄の棒を取り出した。

 棒の長さは手のひらよりも少し長いぐらいで、太さは細い木の枝ぐらいだ。

 オレはその棒を手に持って、戸の前にしゃがみ込んだ。

 そして戸の隙間に差し込み棒の先に意識を集中させ、つっかえ棒のある場所を探った。

 すると棒の先が何かに当たった。それを棒で少し押してやると、同時に家の中に何かが外れる音がした。

 そして戸に手をかけて、物音を立てないようにゆっくりと開けて家の中に入った。

 戸を閉めてつっかえ棒をして戸締りを済ませて、台所の中を見たが暗くて何も見えなかった。

 何も見えなくても勝って知ったる自分の家である。

 目を閉じていてもどこに何があるかまでわかっている。

 明かりはつける必要などない。

 オレは台所を出て、廊下を通って、自分の部屋に向かった。

 その途中に母の部屋の前で立ち止まって、起きてやしないかと耳をすませたが何も物音がしない。

 戸の隙間からも明かりは漏れてこない。

 もう眠っているようだ。

 小言は明日聞くことになりそうだ。

 オレは物音を立てないように自分の部屋に入って、剣や盾、身につけていた皮の鎧などを外し床に置いた。

 そして倒れ込むように自分のベッドに横になった。

 疲れた。かなり左腕は痛むが、それよりも眠気の方が優っていた。

 明日起きてから母の作った薬を塗っておけば痛みもすぐに治るだろう。

 オレがベッドの上の薄い毛布を体にかけ眠ろうとした、その時。

 オレの部屋の戸の前で声がした。

「早く寝るんだよ」

 母の声だ。起こしてしまったようだ。

 母はその一言を言うと、また自分の部屋に戻ったようだ。

 微かに戸の閉まる音が聴こえた。

 やはり小言は明日聞くことになるようだ。

(おやすみ母さん)

 オレは心の中でそう呟くとすぐに睡魔がおそってきて深い眠りについた。


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