ルカは私を憎んでる
ルカを家に送り届けたあと、メアリは祖母の家に行き、しばらく時を過ごしてまた自宅に帰ってきた。自室のベッドに腰かけ、そのまま仰向けに転がる。
あんなことがあった後にしては元気にふるまっていたつもりだったが、祖母には少し赤みがかった目を心配されてしまった。
実際サンドイッチの味がわからないくらいにはメアリは傷ついていたのだ。
ルカは私を憎んでる
そう実感してしまったのだ。
以前の人生でもそうだったのだろうか。ルカがうちの子爵家と婚約を結んだのは、ルカの伯爵家が彼の叔父との権利争いで派閥が割れ、うちが援助することで締結したと聞いていた。
そのときは大変だなとどこか他人事のように思ってしまっていたのだが、つまるところ政略的な婚約だ。ルカの今日の態度といい、本当はメアリのことを憎むほどに嫌っており、そのうえで好きな演技をしていたのではないだろうか。
ふと、前の人生でルカにプロポーズされた瞬間が思い返される。
真っ赤に染まった顔で涙目になりながらストレートに気持ちをぶつけてくれたところに心を打たれ、あの情熱に絆されたのだ。
頬をつたった感覚で、自分が涙したのだと気づきメアリは両手で顔を覆った。
苦しかった。