幼馴染のレオ・ギルベルトだ
時は流れ、学園に入学した。復習だから授業は虚無の連続だ。前の時に友達だった子ともまた友達になり自動歩道にのっているかのように時は流れる。
時折、女生徒の噂でルカ・ハニエルの人気の高さを実感する。
学園に入学するときにはすでにルカはその顔に微笑を張り付け、微笑みの天使、理想の王子様だと女生徒の黄色い歓声を一身に受けていた。
メアリも遠巻きにその姿を確認したことがある。穏やかに甘くほほ笑むルカの表情を見て、前の人生の彼を思い出し、メアリの心はずだずだに切り裂かれるように痛んだのだった。
「よ!」
声の主は幼馴染のレオ・ギルベルトだ。
彼の濡れ羽色の黒髪に夕日のような橙の瞳が夕暮れ時と夜を思わせる。とても幻想的で綺麗な色だと個人的に思う。
彼とは家が近いこともあり、道ですれちがったら一言二言会話を交わすような間柄である。
「今日は部活あんの?」
下校前の騒然とした廊下でレオははにかんだ笑顔で声をかけてくる。
そんな飾り気のない笑顔が今のメアリには眩しいくらいだ。
「今日は園芸部の先生が会議に出るから部活中止になったの」
帰り支度をして園芸部とは反対側の廊下を歩いていたから不思議に思って声を掛けてきたのだろう。そんなレオに返答すると、レオは一瞬驚き、もごもごととした。
ごほんと咳ばらいをして、斜め右方向に向けた顔から目線だけ左に泳がせて少し震えた声で言う。
「俺もちょうど帰るとこ。門まで送ってやんよ。ついでだし」
廊下の窓から夕日が差し込み彼の右側をオレンジ色に染め上げる。耳まで赤く染まっているのは夕日のせいだろうか。
彼の好意をありがたく受けて並び歩きながら門まで向かう。レオの最近の面白話を聞いて思わず笑い声が零れる。
ふと視線を感じて遠くに目を向けるとルカが彼の友人のジョー・マーカスと連れ立って下校しているのが目に入る。ジョー・マーカスは前回もルカの一番の友人で茶髪に黒目の爽やかな塩顔の好青年だ。おそらく性格もいい。
視線の主はルカの方だったようで目が合って三秒ほどで雑に逸らされた。ジョーの方はこちらに気付いていない。
ルカの方は以前垣間見た憎々し気な表情ではなかったのが救いだった。なぜかその瞳はハイライトを失い、淀んでどす黒くなっていたかのように見えたがきっと光の加減だろう。




