第66話:再生のカウントダウン(その1)
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8月5日午前12時45分、谷塚にあるフリーフィールドに姿を見せていたのはDJイナズマだった。
「まさか、ここまで時間がずれ込むとは」
専用のメット型のガジェットを用意し、それを被る。目の前のバイザー部分に見えるのは音楽ゲームのオープニング画面。
結局、使う予定だったフィールドにはイナズマの探していたゲームは入っていなかった。
その為、別のフィールドを探した結果が――プレイ時間の遅れた原因である。
不幸中の幸いと言えば、最初に発見したフィールドから徒歩で5分と少しと言う距離だった事か。
「あいつのプレイしようとしている機種――まさか?」
「あの音楽ゲームをプレイする気か?」
「正気の沙汰とは思えない」
集まり始めたギャラリーからは、そんな声も聞こえた。イナズマがこれからプレイするゲームは、稼働したのが3年前の音楽ゲームだからである。
起動準備に手間取り、その間にはお昼となって簡単な食事、そうしている間にもプレイしようとしていたゲームで先客がプレイしていた。
どうやら、あまりの懐かしさにプレイを始めてしまったと言うべきか。イナズマが先客と言う訳でもないので、プレイの様子を見守る事に。
「あのプレイヤーネームは――あり得ない」
イナズマがゲーム画面を見ると、そこに表示されていたDJネームは「NAGUMO」と書かれていたのだ。
音楽ゲームで南雲と言うと、おそらくはあのシリーズを生み出した人物を思い浮かべる。そして、この世界では同じポジションの人物がもう一人存在する。
「この感覚――そう言う事か」
偶然発見し、1曲モードで慣らしプレイ……のはずが、まさかのフルコンボである。
この光景を見たギャラリーは目の前の光景を受け入れられないような表情で立ち尽くすしかなかった。
その人物の外見は、ARゲーム用のインナースーツに巨乳、スタイルの方は胸に集中しがちだが……見る人が見れば萌えなのかもしれない。
「君が――」
イナズマが彼女に声をかけようとするのだが、次の瞬間には姿がなかった。素早い動きで姿を消した訳ではないが、そう受け取られても仕方がない部分はあるだろう。
「仮に彼女が、こちらの想定している人物だとしたら――急ぐ必要性がありそうだ」
イナズマはタブレット端末を起動させようとしたが、バイザーの影響もあって電波が安定しない。仕方がないので、バイザーの方で誰かを検索し始める。
「このニュースは――?」
彼女が誰なのか調べる前にイナズマが発見したニュース、それは超有名アイドルグループのCD総売上が日本一に鳴ったというニュースだった。
しかし、これがアイドル投資家によるFX投資にも似た大人買いや爆買い、更には超有名アイドル商法によるコンテンツの消費を加速させる現象によって生み出された幻想なのは言うまでもない。
「思いだした。確か、あのFPSゲームで超有名アイドルのタイアップが決まって、素の主題歌を担当したのが――」
このニュースを見て、彼女が何者なのかを理解した。ARFPSゲームで有名と言われていた人物だ。
その人物の名前は夕張あすか、何故かFPSゲームを何種類か渡り歩いているプレイヤーでもある。
渡り歩く事情に関しては彼女に聞かないと不明だが、一部作品では数回しかプレイ記録を残していない事も調べてみて判明した事だ。
「熱しやすく、冷めやすいという事か。ARゲームが抱える問題と言うよりも、コンテンツ業界全体の課題にも思える」
しかし、今は夕張を追跡するよりもARリズムゲームをプレイするのが優先である。その為にフィールドへやってきたのだから。




