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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
ランカー再始動編
93/114

第65.6話:レジェンドアイドル、再び?

####


 その昔、伝説と呼ばれたアイドルがいた。その名はレジェンドアイドル。


 似たような名前のアイドルがタダ乗り便乗勢力等に利用され、風評被害もあって本物が復活出来なくなった事情もある。


 しかし、それより前にも姿を見せた例もあったが、警察の調査等で別のまとめサイト勢力が裏で動いていたことが判明、別コンテンツの評判を落とす為の――。


「結局、こちらが手を下す前に自滅したか。便乗勢力が原因で、本命が姿を見せられなくなるとは何という皮肉――消滅説は蛇足だとしても」


 ゲリラロケテに姿を見せた南雲蒼龍なぐもそうりゅうは、ネット上で出回っているレジェンドアイドルの消滅説を否定する。ただし、自滅に関しては認めるようだが。


 ここでいう便乗勢力とは、超有名アイドルとは無関係の勢力、転売屋やプロ市民、炎上請負人のようなカテゴリー、コンテンツ業界とは一見して縁がなさそうな勢力である。



 8月5日午前12時40分、コンビニでフレンチクルーラーを購入した南雲は、コンビニを出た辺りの数メートルでフレンチクルーラーを口にしていた。


「お前は――!?」


 南雲の目の前に姿を見せたのは、南雲も見覚えのある人物だった。しかし、周囲の人物が彼を知っているかと言うと、少数派だろうか。


「南雲蒼龍――噂は聞いている。ミュージックオブスパーダを使って、コンテンツ産業の弱点を公表するという手段に出たか」


 この人物はARガジェットのフル装備という事もあり、素顔を見ることは出来ない。それに加え、体格や声も作られている可能性があった。


 つまり、この人物が男性なのか女性なのか、それともバーチャルアイドルやアバターの類なのか――南雲には判断できる状態ではない。


「超有名アイドル勢力の駆逐、音楽業界の正常化は二の次と結論を出したか」


 南雲の方は、表情を変えない。しかし、向こうに手の内が分かってしまった以上は、スケジュールを早めるしか手段はないのか?


 フレンチクルーラーをのどに詰まらせるような仕草もなく、ペットボトルのアイスコーヒーを飲む。その後、南雲は改めて口を開いた。


「こちらの真意を見破っている以上、君に全てを公表させる訳にはいかない」


 南雲がガンブレードとしてのアガートラームを、目の前の人物に突きつける。ただし、実際に攻撃をすればガイドライン違反の為、これは威嚇にとどめるのは必須だ。


 この行動を見て、目の前の人物は突然笑い出した。一体、何がおかしいと言うのか?


「全てを公表して、誰が得をする? 敢えて得をする人物がいるとすれば、それは超有名アイドルコンテンツを全世界へ輸出しようとしている人物だ」


 彼が攻撃をするような気配はない。逆に、南雲が威嚇と言う行動をした為、彼がARガジェットで攻撃を仕掛ける可能性もあるはずだ。


 南雲が冷静に判断し、この場面でARガジェットを展開しなければ、周囲のギャラリーに余計な事を教えることはなかったはず。


 うかつだったのは、南雲なのは間違いないだろう。これによって、ミュージックオブスパーダが風評被害で運営不可能になったとしたら――。


「今のタイミングで事を起こすつもりはない。別の勢力が自分達の人気を上昇させる為、かませ犬コンテンツを探している――」


「別の勢力だと!?」


「こちらとしては、ライバルは多い方がいい。切磋琢磨し、更にコンテンツ産業に磨きをかけるという意味でも」


「ライバル潰しが目的ではないという事は――ARゲーム推進派か?」


「そう言った派閥に所属はしていない。自分には、この世界でのカリスマはゼロに等しい」


「この世界? 一体、お前は何者だ!」


 2人の会話は続く。そして、彼が取った行動、それは唐突にメットを外し――。


「西雲提督だと!? お前は確か、アカシックレコード上で怪文章とも言うべき動画を流した張本人のはず」


「あれは偽者……というよりは、タダ乗り便乗の勢力がライバルコンテンツの潰しあいを誘発したに過ぎない」


「それも、アカシックレコードの受け売りではないのか?」


「君こそ、何を恐れている? アガートラーム、アカシックレコード、ARゲーム……それを扱う事の意味、分からない訳ではないだろう」


 西雲提督と呼ばれた人物、それに対して南雲の方は恐れているように見える。しかも、そのレベルは超有名アイドル勢力に対してもひるまなかった彼からは、想像もつかない。


 まるで、その様子は蛇に睨まれた蛙である。目の前にいるのが、仮に本物の西雲だとしたら、彼の名前は別にある事になるのだが――。


「アカシックレコード、そこに書かれた記述は変える事も出来る。それはお前も分かっているはずだ」


 それもそうだ、というような表情で西雲提督は南雲の言葉を聞き、今回は撤退する事にした。彼の様な人物がいれば、最悪のケースは起こらない可能性が高い、と。



 同日午前12時55分、西雲提督が姿を消し、まずは落ち着く事にした。しかし、それでも南雲は彼の言った事に対し、反論できない部分もある、


「誰かが過ちを公表し、それを認めさせること――超有名アイドル商法に関しては、さまざまな経済効果が影響し、それを過ちと言う考えは悪と認識されるようになった」


 超有名アイドル商法が悲劇を繰り返す事、それはアカシックレコードでも言及されており、そこを直さない限りは永遠のループが続くと言ってもよかった。


 架空の世界で起こった記述が、リアルに影響するような展開はありえない――。


 それでも、自分が超有名アイドル商法を生み出すきっかけになったコンテンツ流通を正さなくては、未来は閉ざされてしまうだろう。


 アカシックレコードの技術で全世界が消滅すると言う結末、それは超有名アイドルコンテンツによる全次元支配と類似している。そう、南雲は気づいたのだ。


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