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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
ランカー再始動編

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第65話:トップランカー再び!(その6)

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 8月5日午前11時50分、例のニュースが報道されてから数分後、DJイナズマはフリーフィールドのメインエリアへと到着した。


 到着した時間よりも遅れる結果になったのには、フィールドの展開時にトラブルが発生したためだ。


【ARフィールド展開中・起動停止予定は午前12時】


 このメッセージが意味する者、それは一足先にフリースペースが使用されていることを意味する。


 そして、目の前で展開されていたのは、見覚えのあるARギアとアイドル投資家のかませ犬とのバトルだった。


 使用されているのはARFPS、1人称視点のシューティングゲームをFPSと呼ぶのだが、ARゲームではサバイバルゲームに近い雰囲気を持つ。


 フリースペースは予約制と言う訳ではないのだが、早い者勝ちと言う訳でもない。


 おそらく、アイドル投資家が何者かにバックアップアプリを裏で受け取り、それを利用した可能性が高いだろう。



 同日午前11時45分、ある人物がフィールドを展開しようとアプリを動作していた。どうやら、動作を先に行ったのはアイドル投資家らしい。


「宣伝活動に利用できそうな者はないか? フリーフィールドは無料で使用出来るという利点を使い、超有名アイドルの宣伝を無尽蔵に行う事も――」


「申し訳ありません。フリーフィールドにあるのは難しいジャンルばかりで、アイドルでもプレイできそうなゲームはございません」


「パズルゲームとか、メダルゲームとか――そう言った説明が単純で済むような物は?」


「ARパズルはありますが、脱出ゲーム要素やホラー要素が多くて、放送事故は避けられないかと」


 アイドル投資家と別にアプリを操作し、ジャンル選択をしていたのはあるテレビ局の男性カメラマンだった。


 どうやら、テレビ番組の企画でゲリラライブでも考えていたのかもしれない。


「そこで何をしている! このフィールドがテレビ取材NGと言うのを知っての侵入か?」


 2人の前に姿を見せたのは、改造軍服に近い服装の鉄血のビスマルク。今回はインナースーツも装備していない。


 彼女は、本来であればここへは立ち寄らない予定だったが、妖しい人影を見つけ、追跡をしていたらしい。


「テレビ取材NG? それは初耳だな。ここはただの公園だと草加市にも問い合わせ済――特に問題はないはず」


 カメラマンの方はタブレット端末に保存していた取材許可証をビスマルクに見せるのだが、彼女はそれを見た途端に激怒する。


 この反応に関して、アイドル投資家の方はカメラマンに詰め寄ろうとも考えた。しかし、それをすれば泥沼なのは明らかである。


「このエリアは草加市ではなく、遊戯都市奏歌――つまり、奏歌市の管轄内だ。それに、草加市でもこの公園がARゲーム関係の施設だと言う事は、把握済みのはずだ」


 ビスマルクの話を聞き、カメラマンが慌てて大手マップサイトで検索をする。その結果、自分で証明書が偽造であることを認めてしまったのである。


「ばれてしまったら仕方がない。本来であれば、夢小説勢もおびき寄せ、向こうの仕業だと偽装するはずだったが――」


「夢小説勢は超有名アイドルにとっても金になる――お前達の様な勢力によって、超有名アイドル規制法案を推進させる訳には――」


 2人の言い分も、毎度恒例のテンプレである。超有名アイドルコンテンツこそ唯一にして絶対と思わせる一方で、これをネット上で拡散されれば超有名アイドルの再生は難しいだろう。



 そして、時間は午前11時50分へ戻る。ジャンルに関しては、向こうが適当に入力した結果、ARFPSに決まった。


「こうなったら、おまえを倒して超有名アイドルが無敵のコンテンツであると証明する!」


「Web小説サイトで異世界転生チート主人公がランキング上位に入る位には――3次元の超有名アイドルがヒットするのは必然!」


 どう考えても負けフラグを立てているような説明口調にビスマルクの気力が削られている……ように見えた。


 しかし、ビスマルクは逆に相手が地雷を踏んだかのように手加減なしで主砲+連装砲のフルバーストを決める。


「悪乗り便乗、ネット炎上、他のコンテンツは自分達の引き立て役――そういった慢心が、純粋なファンの離脱を増長し、最終的には衰退する」


 ビスマルクの方は本気で2人を潰す気でいるような目つきで、砲撃を繰り返す。ライフに関しては、対して削れていないように見えるが……。


「馬鹿な! あの演出で、これだけしか減らないのか?」


 アイドル投資家もビスマルクの火力に関して違和感を持ち始める。そこからはじかれるのは、明らかになぶり殺しされると言う事だ。


 しかし、ビスマルクはそうした意図は持っていない。彼女が超有名アイドル商法に関しては否定的な意見を持っているが、それと今回のアイドル投資家が政治家と関係を持っている事は彼女にとっては別件に等しい。


「純粋なファンだと? 我々の様なアイドル投資家がいれば、そうした心配など無用だ! 逆に、オタクである事が話題に乗りやすいと考えるような勢力の方が、我々の様な投資家より危険のはずだ!」


 アイドル投資家の言う事等、結局は炎上サイトの受け売りにしか過ぎない。そうした歪められた情報に踊らされ、脅迫の様な負の感情を抱いてコンテンツを消費する――それがビスマルクには許せないのだ。


 マスコミ報道も芸能事務所によって書きかえられた筋書きの一つだとビスマルクが考えている以上――彼らの主張をビスマルクが聞き入れることはないだろう。


「私は政治がらみの話題には踏み入れないが、お前達の主張がアフィリエイト系のまとめサイトの受け売りなのは分かる。サイトの管理人が芸能事務所関係者としたら――」


 ビスマルクの砲撃は、意図的にガジェットの火力を下げていた訳ではなかった。上げ過ぎればチートと判定され、平均値でもフリーフィールドの管理人に通報されるだろう。


 こうした理由がある為に、ビスマルクもガジェットの火力を下げざるを得なかったのである。


「コンテンツ消費が正常に行われていれば、こちらも特に何も言う事はない。しかし、お前達は自分達の縄張りを広げる為に行っている事、それは――」


 ビスマルクが何かを言おうとしたタイミング、そこで姿を見せたのはDJイナズマである。彼の方もFPSに合わせたARアーマーを装着しているのだが、量産型ガジェットにオレンジのカラーリングでありきたりすぎる。



 同日午前12時、イナズマが介入したタイミングはゲーム終了時刻だった。そして、イナズマはアサルトライフルをビスマルクに構える。


「これは、あくまでARゲームだ。目的を持ってプレイするのは必要不可欠だが、お前がやっている事は悪乗りでネットを炎上させるつぶやきユーザーと同じだ」


 イナズマのアサルトライフルが火を吹くと思われたが、ゲーム終了と同時の乱入の為、ライフルの火が噴く事はなかった。


【ゲーム終了】


 ビスマルクのバイザーにはゲーム終了とビスマルクの勝利を伝えるメッセージが表示されるが、彼女がそのメッセージを確認出来るような状況ではなかった。


「ゲームに熱中して……何が……悪いって……言うの? 私は、純粋にゲームを楽しみたいだけなのに――超有名アイドルがコラボと言う理由で、自分達のフィールドを荒らしていく。それが、私には許せなかった――」


 息が荒いビスマルクはバイザーを外し、ARギアも解除する。解除後の彼女の服装は、汗でびっしょりになっているようでもあった。


「ゲームに熱中するのを悪いとは言わない。しかし、物には限度がある。度を越えて全てを蹂躙していく、ランキング1位になる為だけにチートを使う様な連中――彼らの様な行動をとったら、それは犯罪者と変わりない」


 その後、イナズマは別のフリーフィールドへ向かう事になり、そこで再生の為の作戦を展開する事になった。



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