第64話:純粋なリズムゲームとしての側面(その1)
>11月25日午後11時50分付
修正:午前10時30分→午前11時30分
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8月4日午前11時、山口飛龍たちのいるゲーセンとは別エリア、谷塚駅近くのARゲームの大規模アンテナショップがオープンを迎えていた。
複数のARゲームが常時プレイ可能、アンテナショップ、フードコートも完備という大規模ショップが埼玉県に出来ると言うだけでもビッグニュースである。
実際、埼玉県内ではさいたま市や春日部市等の規模が若干大きい所まで遠出をしないと大規模ショップはなかった。
それがオープンすると言う事もあり、大勢のお客が詰めかけている。行列は300人を越えるが、土曜と言う事で更に増える可能性もある。
「今回は、ARゲームアミューズメントのオープンに足を運んでいただき、まことにありがとうございます」
オープンの挨拶をしている人物は、遊戯都市奏歌のスタッフである。それ以外にも来賓の姿を確認出来るが、ネームドランカー等の有名人は不在だった。
その理由に関して、ネット上では――。
【ランカー勢の姿も見えなければ、有名所のスタッフもいない】
【ARゲーム会社のスタッフは確認出来るが、南雲のようなメンバーは来ていないな】
【この大規模ショップ、もしかすると遊戯都市側のゴリ押しか?】
【遊戯都市のゴリ押しであれば、もっとお堅い人物が来賓にいるはず。それがないという事は――】
【とにかく、このエリアで大規模ショップが出来たのは大きい。去年の騒動が影響しているのか?】
【ネット上ではARパルクールのロケテストと言われている、あの騒動か?】
【どちらにしても真相は不明。一応、ロケテストと言う事で片づけられたようだが、超有名アイドル商法の過剰展開に対する警告とも言われているようだな】
ネット上のつぶやきでは、今回のオープンに連動するかのように釣りサイトへの誘導を目的としたつぶやきも確認され、このようなつぶやきを行った人物のアカウントが凍結される騒ぎになった。
しかし、こうした動きはニュースで報道される事はなかったと言う。視聴率が取れそうな話題として超有名アイドルの熱愛報道があった為と言われているが……。
同日午前11時30分、店舗内の様子を見ていたのは私服姿の大和杏だった。ここへ来た理由はARガジェットの修復であり、既にガレージへ通じる裏口からガジェットの方を引き渡し済だ。
「大規模ショップと言う割には、置かれている種類にバラツキがあるように――」
大和はフードコートでドーナツと微炭酸コーラをテーブルに置き、タブレット端末でアンテナショップを含めた店舗の地図を眺めていた。
ガジェットの修復にこの場所を指定したのは、前回に立ち寄ったアンテナショップの推薦状があった為。これがなければ、足立区内の大規模ショップまで移動する所である。
自宅から今回の大規模ショップまでの距離はガジェットを使って5分弱、自転車でも10分程度と短距離なのも大きい。足立区内のショップだった場合は、その2倍だろう。
「ARガジェットの中には、開発中にトラブルを起こした物、人気が出なかった物、ライセンス関係の諸事情でカスタマイズ限定と言う物もある。通販限定も拍車をかけているが、それ以上に――」
大和が考えている別事情とは、ARガジェットの転売屋問題である。一時期は駆逐されたともホームページで宣言されたが、新たな手口も確認されていた。
やはり、手っ取り早く稼ぐという事でも転売屋は消えないのだろうか。それでも、ARガジェットに関しては新品を求める動きが多く、システムの複雑化もあってオークションサイトでは手を出さない商品に名前が上がるほどだ。
「ARガジェットの場合は様々な対策、システムの細かなアップデート等も転売屋を悩ませる問題として挙げられる。手っ取り早く稼ぐなら、人気アニメやゲームのグッズを狙うのは世の常だ」
大和の隣でカレーうどんを置き、飲み物にはカレーポタージュ、更にはちくわ風パフェ。パフェの方は過去に大和も注文した物だ。
「誰かと思ったら、大淀か。一体、何のために来た?」
隣の席に姿を見せたのは、大淀はるかである。彼女が、どのような経緯でアンテナショップへ足を運んだのかは不明だ。
「まさか、この店舗のカレーうどんがARゲームの大規模ショップで食べられるとは――」
大和の話をスルーし、大淀はカレーうどんに手を付け始める。どうやら、朝食がまだらしい。
その一方で、大和はタブレット端末で情報を仕入れていた。しかし、何かアプリの様な物もダウンロードしている挙動も確認されている。
「そのアプリって、ゲーセンにある音楽ゲームの携帯版よね?」
大淀は大和がダウンロードしていたアプリが、ゲーセンにも置かれているリズムゲームのアプリ版だと気付いた。
「アプリ独自の物でもよかったが、アーケードで稼働している物ならばプレイ経験もある。その方が都合のよい事も――」
大和がプレイし始めたゲーム、それは山口たちがゲーセンで目撃したホッケーゲームに類似したリズムゲームのアプリ版だった。




