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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
リズムゲーム編

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第62.7話:もう一つの戦い(後篇)

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 8月3日午後2時、大淀おおよどはるかは山口飛龍やまぐちひりゅうが楽曲解禁イベントに姿を見せていない理由に関して、ネット上で捜索をしていた。


「トップランカーが、怪我等の理由以外で長期離脱をするとは考えにくい。一体、何が起こっているのか」


 さまざまなサイトを巡っている内に、大淀はSOFの過去に開催されたイベントまとめを発見する。


「これがSOF――?」


 一部の動画タイトルを見て、大淀は何かに気付いた。これらの楽曲は最近の音楽ゲームでも目撃される楽曲だったからだ。これは、どういう事なのか?



 SOFの歴史は10年以上前、西暦2000年代までさかのぼる。この時は同人音楽ゲームと言う概念は存在せず、ゲーム音楽も音楽ゲーム自体が今ほどメジャーではない為、注目度も低かった。


 一部のRPGやアクションゲームの楽曲などがCDランキングにランクインし、そこから音楽評論家などから驚かれる……それが現実であった。


 こうした状況を見て、ゲーム音楽の評価を上げようと考えた人物が存在した。その人物こそが、後に音楽ゲームの開発で有名となる南雲である。ただし、ここで言及される南雲は南雲蒼龍なぐもそうりゅうではない。


 しかし、彼の考えは現状のゲーム音楽を取り巻く環境では実現性が難しく、結局は夢物語で終わってしまった。これはネット上での膨張等ではなく、まぎれもない事実である。



 それからしばらくして西暦2004年頃、インターネット環境等も変化し、音楽ゲームもゲームセンターでメインに置かれるようになった頃、そこで初めてオリジナル楽曲をメインにした同人音楽ゲームが注目を浴びる。


 その名称はアカシックレコードにも記載されていないが、ファンタジアとは違う機種らしい。


 ファンタジアが普及し、SOFが始まったのは2005年の事。同人ゲームでSTGがブームとなり、その楽曲をアレンジするという活動がネット上で大きく注目され、それがファンタジアにも飛び火した。


「成程。この辺りの作曲家が実際の音楽ゲームでも楽曲を書くようになったきっかけ、それがファンタジア――」


 大淀はまとめ記事に書かれていた内容を見て、驚くしかなかった。同人音楽自体はソーシャルミュージックとしても広まっており、動画サイトでは特殊なソフトを使った楽曲作成、オリジナル曲がブームとなった。


 しかし、それよりも前に光回線等がメジャーになる以前に同人音楽に注目される展開があるとは。



 SOFがメジャーイベントとなるきっかけになったのは、エントリー曲が100曲を超える規模になった2007年、そこには南雲蒼龍もエントリーをしていた。


 この当時の蒼龍は音楽ゲーム楽曲には興味がなく、クラシックアレンジを趣味と独学で続けている程度の音楽知識しかなかった。


『自分のクラシックアレンジが、こういう場で活かされると言うのは予想外だった。趣味でやっていた事が初めて認められた、と』


 2007年に蒼龍がエントリーした曲、それが見事に優勝したのは当時のファンタジアプレイヤーにとっては衝撃だった。彼がファンタジアのプレイヤー層を全く知らないというのもあったのだが。


 しかし、蒼龍の楽曲評価は偽りの物ではなく、正当評価と言える物だった。それは、ファンタジアの古参プレイヤーも証明している。


【これでファンタジア初楽曲とは思えない】


【プロの犯行か?】


【衝撃が高すぎる。これでイベントのレベルが上がるのかと思うと――】


【彼がファンタジアの客層を知れば、間違いなく歳教になるだろうな】


【音楽の知識が本当に趣味の範囲なのか疑わしい】


 さまざまな意見が飛び交う。その中で蒼龍の評価は揺るぎない物になったのだが、2008年に楽曲をエントリーした際の評価は、賛否両論だった。


 逆に客層を知ってしまい、それに惑わされた結果とも言われている。その時の結果は準優勝だった。



 その後、2009年には蒼龍が商業で音楽ゲームをリリースしたというニュースが飛び交い、ファンタジア出身の作曲家が本家進出と驚かれた。


 実際の所は蒼龍の楽曲は収録されず、あくまでも音楽ゲームの開発だけだったようだ。



 2010年~2014年は、特定アーティストが優勝する事はなく、入れ替わりが激しかった。蒼龍の様な強豪が不在と言うのもあるかもしれないが。


 その時にエントリーしていた人物がいた。それも――。


「ビスマルクが――どうして?」


 アーティストネームの被りという可能性もあるが、そこには鉄血のビスマルクもエントリーをしていたのである。それだけではなく、山口飛龍もエントリーしていたのだ。


「もしかして、彼がミュージックオブスパーダに参加した理由は――」


 山口が南雲蒼龍との出会いをきっかけにして、ミュージックオブスパーダを始めたというのはネット上でも有名な話だ。


 彼を追いかけて始めたというのであれば、いくつかの疑問点も解消される。



 大淀が色々と調べていく内に、アカシックレコード恒例のブラックノイズ――黒塗り記事にぶつかった。


「2016年、2017年度はSOFが開かれたという記述が――?」


 2015年に関しては開催されたと明記されており、その楽曲も動画サイトのリンク付きで掲載されている。


 しかし、2016年以降の記述が黒塗りで詳細を確かめられない。



 8月4日、山口はゲーセンに足を運んでいたが、それはさまざまな音楽ゲームをプレイする為に訪れたと言ってもいい。


「トップランカーになって、初めて気づいた事がある。それは、頂点に立つ事がむなしいと感じる事か」


 私服姿の山口はタブレット端末の入ったカバンと財布の入ったポーチ、それに野球帽を深く被っている。


 これは周囲にトップランカーとしての顔が知られているというのもあるのかもしれないが――。


「しかし、トップランカーがミュージックオブスパーダの頂点とは考えにくい。それに、今は――」


 山口には、別のフィールドで南雲蒼龍に勝ちたいと言う思いがあった。ミュージックオブスパーダでは対決が実現しなかったが、SOFならば対決が叶う。


 その為にも、音楽ゲームの楽曲傾向を改めて学習し、そこから彼に勝利する為の楽曲を作ろうと決意していたのだ。


「奇遇と言うべきか」


 ゲーセンの入り口付近、そこで遭遇したのは何時もの私服と言うべきの長門未来ながとみらいだった。彼女の方もミュージックオブスパーダは休止状態である。


「長門さんも、音ゲーですか?」


「まぁ、そんな所だ」


 ミュージックオブスパーダでは滅多に話す機会もなかった為、色々と情報収集を行う。その中で、2人は振り付け系の音楽ゲーム筺体の前までやってきた。



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