第59話:ゴッドランカーのもう一つの意味
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ゴッドランカーモード、それは3速が限界のスピードを5速にまで上昇させ、更には発動時限定で判定が大幅に変化する。
それに加え、発動時にはコンボの計算が変化する。最初は2倍からのスタートだが、装備しているガジェットによっては最大7倍まで変動。
しかし、このモード自体には一定のゲージを溜める必要があり、事実上の連射は不可能。連射不可の理由は、さまざまだが……そこまでは解析が進んでいない。
一度でもコンボの途切れや時間切れ等でモードが解除されると、再チャージ後に発動しても2倍からのスタートになるとか。
「一部は判明しても、これらが他のプレイヤーに解禁される可能性は低いか」
まとめ記事をチェックしていた信濃リン、彼女はゴッドランカーモードに対して何かを感じていた。
ランカーの証としてのゴッドランカーモードとは到底思えない一方、外部ツールを使用したプレイヤーに対しての救済処置としては解禁された絶対数が少ない。
「どちらにしても、新ガジェットの稼働時期が早まったことと関係があるのかもしれない――」
彼女が新ガジェットの稼働時期変更を知らせるページを見ていたのは、前日の27日の事だった。
その後、信濃は様々な機種の音楽ゲーム動画を見ていく内に、ゴッドランカーモードと似たようなシステムを持った音楽ゲームを発見した。
「このシステムって、確か開発者は――!?」
信濃は、動画をチェックした後にある音楽ゲームの公式ホームページを検索し、そこでゴッドランカーモードと類似したシステムを発見する。
しかし、その音楽ゲームを開発した人物の名前、そこには南雲蒼龍の名前がクレジットされていたのだ。
「ゴッドランカーモードを習得できたプレイヤーに共通する事って――」
あの4人がその音楽ゲームのプレイヤーであると信濃は推測するが、プレイヤー名で該当するようなネームに見覚えはなかった。
仮に該当する音楽ゲームのプレイヤーがゴッドランカーならば、もっと別の上位ランカーがなっていてもおかしくはない。
「やっぱり、偶然の一致でしかないのだろうか……」
結局、今回の件に関しては憶測でしかない。下手に騒ぎ立てれば、サイト炎上を狙う勢力が非合法手段を含めて動くに違いない。
現状では様子を見る以外、適切と思える選択肢は存在しなかった。
7月27日午後4時、ゴッドランカーの一人である山口飛龍は何時ものエリアとは別のエリアにいた。
【まさかの展開だ。彼がホームを離れる展開があるとは】
【遠征プレイヤーというのは音楽ゲームでも当たり前に存在する。珍しい物とは思えないが】
【山口の場合、相当なケース出ない限りはホームゲーセンを変えない傾向がある】
【ホームゲーセンでなくても、ミュージックオブスパーダはスコアが変動するとは思えない】
【ARゲームの場合はARガジェットがコントローラの変わりになる。ARレース等の一部ジャンル以外では、遠征の必要性は特にないだろう】
【しかし、店舗ごとのハイスコアが設定されているような機種の場合、店舗スコアを破るという意味でも遠征の価値はある】
つぶやきサイトでは山口が他のゲーセンへ行く事が都市伝説の様に語られていた。
同時刻、フルアーマー装備でミュージックオブスパーダをプレイしていたのは、大淀はるかだった。
かつて使用していたガジェットはオーバーホール中と言う事もあり、全盛期のバウンティハンターの様な重装備ガジェットでプレイをしていたのだが――。
「装備が微妙に変わるだけで、ここまでスコアにも変動がある」
大淀はリザルト画面を確認し、今までのスコアよりも1%は上昇している事に驚く。自分には軽装備よりも重装備の方が似合うのか?
そう言った疑問を抱きつつもリプレイを再確認、微妙な動きの変化を確かめていた。
重装備でも動き的な部分は軽装備の場合でも通じる。ARゲームの場合、重装備でも一気に重さが10キロ上昇したりするような仕様ではないからだ。
あくまでもメイン武装以外のサブウェポンの類は、全てARによる拡張現実技術を利用し、CGで表示される。
その為、フィールド外では重装備でもインナースーツとARギア以外は描写されず、メットを装備していないと素顔がばれてしまうのも仕様である。
こうした仕様の穴を突いたのが、バウンティハンターこと加賀ミヅキのARギアとも言える。
彼女の場合は、別のジャンルで使用しているARガジェットを利用していたというのもあるかもしれないが。
「しかし、急な環境変化は――」
大淀が何かを考えていた時、そこへ姿を見せたのが山口飛龍だった。山口の装備は、シールドビットメインだが、アーマーの細部等には変化が見られる。
山口のアーマーは軽装備であるのには変わらないが、バックパックがシールドビットに合わせた仕様になり、脚部アーマーも微妙な軽量化を図っているようだ。
バイザーメットはデザインが一新されていたが、新ガジェットに合わせた物と言う訳ではないらしい。素顔の方はバイザーの関係で確認できないが。
「大淀、はるか――」
山口が大淀を目撃して声をかけるのだが、その声が彼女に聞こえているのかも疑わしい。
実際、大淀はバイザーのボリューム調整をしており、環境音の方が聞こえにくい状況だったからだ。
「山口飛龍――あなたが、このゲーセンに来るとは珍しいというか」
大淀の方はバイザーの方を解除する事で、山口が声をかけている事に気付く。数回、声をかけた訳ではないが――。
「聞きたい事がある。その為に、ここへ来たと言ってもいい」
山口が大淀に聞きたい事、それは不用意なつぶやきが全ての発端となった一連の事件ではなく、もっと別の事だった。
「ネット上で噂になっている提督勢――彼らの目的は何だ?」
その内容を聞き、大淀の方は聞き覚えのない単語に驚いている。どうやら、大淀は提督勢に関しては知らないようだ。
「提督勢って、パルクールの?」
しかし、一応は聞き覚えがあった為、山口に詳細を聞こうとするのだが、山口の方も詳しくは知らないらしい。
「その提督勢だ。彼らがミュージックオブスパーダへ進出する理由――それを聞きたかった」
さらりと出てきた山口の一言、それはミュージックオブスパーダの動きを大きく変える物なのではないか、と。
しかし、この段階の大淀では提督勢が進出した理由を察する事は出来なかった。
提督勢に関する動きを知っているとすれば、おそらくはアガートラームの所有者だけという可能性も否定できないが……。




