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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
メーカー参入編
64/114

第58話:襲来のクラッシャー(後篇)

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 7月26日午後1時、ファストフード店から出て別のゲーセンへ向かうのは大和杏やまとあんずだった。


「あのARパルクールの提督が――」


 大和が気にしていたのは、南雲蒼龍なぐもそうりゅうから聞かされた話である。



 数分前、南雲は大和に聞きたい事があった。それは……。


「パルクール、それも一部の提督勢がこちらにも進出している、あのパルクールだ」


 ARパルクールはパルクールをベースに、安全対策やゲーム要素をプラスしたスポーツ初心者向けのARアクションゲーム。


 このゲームでは、通常のARガジェットとは別のロボットに近い形状をしたガジェットアーマーでプレイするのだが、ガジェットが高値と言う事もあってプレイ人口は少ない。


 しかし、それでも動画サイト内では違法コンテンツとして削除されるジャンルを除外すると、ARパルクールの動画数はベスト50に入るレベルだ。


「もしかして、提督勢とコンタクトを取りたいの? あちらとはパイプは持っていないから、コンタクトをとる事は不可能よ」


 大和は速攻で回答し、別の話題に変えようとした。南雲の方も深くは言及しないだろう……と大和は考えていたが、その当ては外れる。


「提督勢とコンタクトを取りたい訳ではない。提督勢にある名前の人物がいるか……と言うのを聞きたかったのだが」


 南雲の言う人物の名は西雲。大和の方も聞き覚えがないという事で流したのだが、それでも南雲があっさりと諦める気配はない。



 大和は、南雲の言った事に対して色々と疑問を持っていた。提督勢の話もそうだが、それ以上に手渡された資料である。


「キサラギ以外にも聞き覚えのある企業名があるのは、気のせいと受け取るべきか――」


 そして、周囲を見回した大和は再びパッチワークのARガジェット使いと遭遇した。



 ARフィールドが展開し、ジャンルとしては2対2の対戦シューティングだろうか。実際は1対1のソロ対決だった。


『貴様たちは超有名アイドル勢力と同様に、コンテンツを無駄に消耗している。だからこそ、海外勢が規制をしようとするのだ!』


 オーディンだかオーディーンとは異なるパッチワークだが、カラーリングを除くとほぼ同じである。ヘッドパーツや一部武装には違いがあるが、それ以外の区別出来る要素は見当たらない。


 今の流行りはパッチワークガジェットなのだろうか?


「ARゲームに個人の怨念を持ち込むな! それこそ、連中の計画だと分からないのか!」


 蒼いクリスタルを思わせるアーマー、デザインは北欧神話ベース、ロングソードを含めた無数のソードをマウントした各種オプション――。


 パッチワークを相手にしていた人物は、どこか見覚えのあるような装備をしていた。しかも、アカシックレコードのデジャブであり……。


『アキバガーディアンでは全てを解決する事は不可能だ! だからこそ、国会で超有名アイドル以外の違法コンテンツを根こそぎ排除する。それこそが正義であり――』


 パッチワークが何かを語ろうとしたのと同時に乱入を示す警告音が鳴り響く。その後に姿を見せたのは、見覚えのある重装甲のARガジェットだった。


『鉄血のビスマルク――だと!?』


 パッチワークの人物が驚く。もう一方のプレイヤーは無関心と言える。それとは別にダミープレイヤーが配置された。これで2対2というマッチングにしたという事か。



 組み合わせは蒼いクリスタルの人物とビスマルク、パッチワークとダミープレイヤーである。


 ダミープレイヤーはパッチワークのレベル合わせで70と表示された。マックスレベルは100なので、相当の実力者とも言える。


「残念だけど、今の私は手加減出来ないわ!」


 ビスマルクの方は本気である。それも、相手を睨みつける目が真剣そのものだ。


 その目を見た蒼いクリスタルの人物は、あえてビスマルクと組むことはせずに単独行動でダミープレイヤーを相手する事になる。


『コンテンツは投資に絶好な物を残しておけばいい。超有名アイドルの大手芸能事務所は、残すに――』


 パッチワークが何かを言う前にビスマルクの大型レールガンで一撃終了となった。どうやら、パッチワークに外部ツールを使用した疑いがあるようだ。


「ランキング会社を買収し、自分達のアイドルだけを1位にするという幼稚な工作を行い、それに喜ぶファンが大量に貯金を消費する――という筋書きがコンテンツを正常に運用しているとは思えない」


 ビスマルクが放った弾丸は、アガートラームをヒントにして開発された反外部ツール弾頭と言える物だった。外部ツールを使用しているガジェットならば、一発で起動不能に追い込める。


 つまり、これはアガートラームのワンパンチ決着と全く同じ構造で作られているのだ。

 

「転売屋などに踊らされるファンを利用し、超有名アイドルを頂点に立たせるようなマッチポンプを――ARゲーム業界は絶対に許さない」


 ビスマルクの方は本気だった。相手にしようとしたパッチワークも、さすがに地雷を踏んだと判断して逃走する。


 逃走するパッチワークの逃げ道をふさいだのは、意外にも大和だった。


「金に物を言わせるチートで、ファンを食い物にするような超有名アイドルは――ARゲーム業界には不要!」


 大和のアガートラームによる攻撃でパッチワークのガジェットが崩壊、そこから姿を見せたのは現役の男性超有名アイドルだった。しかも、CDランキングで1位になったばかりの現役グループの――。



 同日午後3時、ニュースでも速報で流され、この事件を受けてランキング会社の強制捜査が行われ、そこで政治と金の疑惑まで浮上した。


 しかし、この一件はつぶやきサイトやマスコミ等では都合よく脚色され、『政治とカネとは無関係であり芸能事務所側の暴走』という事で速報は出された。


「結局、アカシックレコードで書かれている通りの結末になるのか。あるいは、違うアカシックレコードがあるのか」


 大和は別の名称で検索する事も考えるのだが、それでもコンテンツ業界が抱える闇を全て暴く事は出来ないだろう。


 闇の英知、ウィキ、ワクワク大百科事典、さまざまな名称のサイトは存在するのだが――。


「ARガジェットがデスゲームに流用される事、流血のシナリオに使用される事は避けないと――ARゲームでイースポーツ開催を達成する為にも」


 大和の顔には若干の焦りも見られるのだが、それを気づく事の出来る人物は……。

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