第58.5話:レジェンドアイドル襲来(前篇)
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7月26日午後2時30分頃、足立区と草加市の間にある道路。そこでは関所ではないのだが、特別な施設が設置されていた。
「すみません、それの持ち込みは認められていないのですが――」
警察とは違う制服を着た人物に男性が呼び止められ、鞄の中身を見せるように要求される。
しかし、男性の方はスタッフの制止を無視して草加市の方へ侵入しようとした。
「その中身は、超有名アイドルのCDだな? おそらくは古本ショップ等で売りさばき、利益を少しでも得ようと考えていたのだろうか」
男性の行く手を遮ったのはアキバガーディアンのメンバーだった。彼らは別の事件で出動していたのだが、偶然にも悪質な転売屋を逮捕出来たのは非常に大きいだろう。
「CDを売るのが何故悪い?」
男性の方は開き直り気味である。不要なCDを古本ショップ等で売る行為自体は違法ではないのだが……草加市では事情が違っていた。
「CDを売る事自体は違法ではない。しかし、鞄の中に入っているCDは超有名アイドルの特典グッズを外したCD。つまり、おまけ付きのお菓子からおまけを外した物――」
「つまり、お菓子の部分だけを捨てるような行為に該当するから逮捕すると?」
「草加市では超有名アイドルは危険勢力と判断されている。他のエリアでは問題ないとしても、ここでは市町村の関係を揺るがしかねない状態になる」
「市町村? 地方アイドルが珍しくもないような時代に、そんな事を言うのか?」
「その通りだ。草加市は音楽ゲーム楽曲と二次元アイドルに特化した経済特区――大手芸能事務所の超有名アイドルが進出してよいエリアではない」
その後も議論は続いたのだが、結局は平行線になった。
遊戯都市奏歌では音楽ゲーム楽曲、同人ゲーム、二次元アイドル等がメインとなり、超有名アイドルは様々な不祥事を受けた風評被害の影響もあり、完全排除とまではいかないが持ち込み禁止となっていた。
その様子は、過去にあったような魔女狩りを思わせるようなレベルである。
しかし、個人の趣味にまで規制を書ける訳には……と言う事で、持ち込み禁止が開始される前の物に関しては特例とした。
逆に特例を設けた事で、徹底的に超有名アイドルを黒歴史に追い込む組織等にとっては不満が爆発する寸前だったと言う。
ここまで規制を考えるようになったのは、近年問題視されている転売屋の動きである。
転売屋が得た資金を超有名アイドルへの投資に使われている事が週刊誌等で報道され、そこから超有名アイドルへの風当たりが悪くなったと言う。
芸能事務所側は反社会的勢力と組んでいる訳ではないのに、ネット上のつぶやきサイト、ネット炎上系のまとめサイト、ネット上で神と呼ばれている人物の発言等――。
こうした動きに対し、過剰に反応しないようにとさまざまなシステムを導入したのが遊戯都市と言われている。
実際、特定ワードに対して表示不可等の対応を行い、超有名アイドル勢がネット上で都合よくコンテンツ炎上をさせないようにしている。
しかし、こうしたシステムによってファンによる白熱した議論も展開出来ず、本当の意味で必要なシステムだったのか……と言う声も絶えない。




