第53話:ランカー事変(中篇)
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7月13日午後1時、各地では超有名アイドルファンが襲撃しているという話がネット上で拡散していた。
【デマ情報じゃないのか?】
【第一、どのグループのファンか特定されていない地点で――】
【各地と言うが全国と限らない。九州や東北、関西では特に目撃情報がない】
【一体、この情報は何処から出ているのか?】
他の地方では、意図的にどのアイドルファンであるかは消されており、この出来事が遊戯都市奏歌内限定である事も隠されていた。
つまり、この情報自体が日本全国を混乱させる為に何者かが拡散している情報なのである。
こうした手法はネットのまとめサイトや炎上系サイトで常套手段として利用されている物であり、その手のアフィリエイト長者が仕掛け人とも疑われた。
「仕掛人の特定は完了している。そちらを物理的に潰すのは簡単だが、せっかくの大会に水を指すのも気が引ける」
何かの情報を握っていたのは、鉄血のビスマルクだった。彼女は本選には残ったが、その後のトーナメントで敗退している。
それからトーナメントに何かの意図を感じ始め、調べてみた所……思わぬ証拠を見つけたのだ。
【○○芸能事務所様】
ビスマルクがデータ化していたメール、そこには超有名アイドルのライブを周知しようと言う市民団体が書いたとされる物。
しかし、その内容は一部が解析されておらず、穴あき状態に近い。その内容も【超大物】を【草加市】へ誘致し、他のコンテンツともタイアップをつなげようと言う部分まで。
「コンテンツの具体的分野が書かれていない以上、迂闊にARゲームで何か大きな事件を起こせば、それが逆風になる恐れもある」
ビスマルクが下手にARガジェットを使ってアイドル投資家等を駆逐していけば、それを一般のつぶやきサイトユーザーがつぶやき、それが瞬時に拡散されるという手筈なのだろう。
しかし、一般人がARガジェットを手に入れられたとしても、ARガジェットにはつぶやきサイトにログインできるような機能はない。
アプリを実装すれば閲覧は可能だろうが、書き込みは非常時等を除いては不可となっている。それ程、不用意な書き込みで炎上する事をARゲーム運営側は懸念しているのだろう。
そこでビスマルクが考えたのは、ARガジェットではなく別の手段を利用する事だった。
「このメールを、送信すればOKか」
手慣れた操作でメールを送ったのは、アキバガーディアンだった。それも、ARゲーム部署とは異なる部署にメールを送ったのである。
同日午後1時10分、アキバガーディアンのコンテンツ総合部署、秋葉原のビルにオフィスを構え、その人数は100人規模に近い。
「このメールは?」
男性スタッフが部署あてのメールを受信し、そのメールを同じ部署のスタッフにも見せる。その内容を見たスタッフは非常に驚いていたようだが――。
「この内容が事実であれば、悪質なコンテンツコントロールを誘導する物なのは間違いない。超有名アイドルは、金でコンテンツを買収するだけではなく、更なる地獄をコンテンツ業界で起こす気なのか?」
「コンテンツで戦争を起こすって、どういう事なのでしょうか」
「おそらく、一般人を超有名アイドルファン化させ、そこから大量の投資をさせる気だろう。資金をどのように使うかは……」
「まさか、資金を大量破壊兵器に?」
「それこそあり得ない話だ。日本ではARガジェットを大量破壊兵器へ転用する事は禁止している。それは、別のアカシックレコードにも書かれている事だ」
「大量破壊兵器でなくても、アイドルの歌で無血開城みたいな事は出来るかもしれません」
「どちらにしても、このような話が国連などに知れ渡れば――取り返しのつかない事になる」
話の方は続くが、最初にメールを受け取り、その内容を見た男性にとっては異世界の話でもあった。
「一体、あのメールの内容でスタッフは何を感じ取ったのか」
そのメールの中身はアキバガーディアン内でも秘密にされ、詳細が外部に公表される事はなかったと言う。
その内容はアカシックレコードでも曖昧に記されていたのだが、それを真実と思う人物は一般市民にはいない上に、市民団体なども作り話と却下するかもしれない。
同日午後1時30分、アキバガーディアンは機動部隊を埼玉へ派遣する事を決定、炎上系ブログの管理人や該当サーバーを押収に成功する。
一連の逮捕はミュージックオブスパーダの運営に知られる前に処理を行い、マスコミに知られるような事もなかったと言う。
「一部のつぶやきサイトで騒がしくなる可能性はあるが、マスコミが奏歌市のネタつぶやきを鵜呑みにするとは思えない」
ビスマルクは勝利を確信し、小言をつぶやく。ネタのつぶやきを鵜呑みにし、炎上系サイトが予想外とも言える自滅をするのはアカシックレコード内でも事例が多い。
こうした過去の実例を踏まえた上で、ビスマルクは周囲に知られる事なく超有名アイドル勢をシャットアウトしたのである。
しかし、これに漏れたフラッシュモブは暴れまわり、その結果が木曾あやねや大淀はるか、加賀ミヅキに回ってきたのだが……。
「一体、何がどうなっている?」
「我々以外にも百万のファンが駆けつけたという話だが――」
一部の超有名アイドルファンも、この状況を呑み込めずにいる。一般人の乱入者も中には混ざっているが、こちらも状況を理解できていない。
「あなた達は、踏み込んではいけない領域に来てしまった。それが、最大の敗因よ」
通常装備とは異なる重装甲、いわゆるフルアーマー装備の大淀がフラッシュモブを次々とプラズマネットで気絶させていく。
ネット以外にも、スタンガン、ショットガン、連装リニアレールガン等の様な武装も装備しており、それらで次々とモブを気絶させて言っているのが現状である。
「ARゲームって敷居が高い物だったのか」
「信じられない。このチートガジェットを使えばだれでも勝てるって――」
「ARゲームは夢小説勢があっさりと二次創作小説でランクインするように簡単には――」
さまざまな断末魔をあげて気絶するフラッシュモブ。大淀の使用している武装はミュージックオブスパーダ用ではなく、別のFPSで使用するガジェットである。
このガジェットを使用した理由として、今回襲撃してくる勢力が持っているARガジェットがこちらに該当するという情報がもたらされたからなのだが。
「何もかもが出来過ぎている。やはり、誰もがネットの発言を鵜呑みにし、ソースを確認しないで行動したのが発端か」
大淀も自分の発言が曲解し、今回のフラッシュモブを呼び込むような事態になった事は分かっていた。それがミュージックオブスパーダの運営に迷惑を賭けた事も承知している。
「このような事は、これっきりにしたい所だ。その為にも――お祭り騒ぎを煽る連中を捕まえ、ARゲームを正しく楽しめる環境を組むことが重要かもしれない」
大淀は、一応の任務を完了。次の場所へ向かう為にARガジェットを展開させると、マップ上に複数の反応が表示される。
どうやら、フラッシュモブはまだまだ増える状況らしい。
「ARゲームはルールを守って、正しくプレイする事が重要だ。TCGアニメでも何度か言及されているように」
そして、大淀は反応を示した谷塚駅方面へと向かう事になった。




