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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
ランカー激戦編
33/114

第32話:スコアラーの壁

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 6月1日午後1時10分、山口飛龍やまぐちひりゅうはアンテナショップで大和杏やまとあんずの壮絶プレイに唖然とするしかなかったという。


「大和杏や長門未来の様なトップランカーに近い人物を参考にしても、自分では足元に及ばないのは目に見えている」


 山口は、プレイ動画で参考になりそうな物を探す一方で、大和や長門、DJイナズマのようなランカーのプレイは逆に参考にならないと切り捨てた。


 その理由の一つとして、山口の技量的な問題もあった。


 大和はARゲームを複数機種プレイしており、アガートラームのパワーもあってのプレイなのは……ネット住民の認識だが、山口も近い考えに至っている。


 DJイナズマは、複数のARゲームとまではいかないが……知識量は他のメンバーにも劣らない物を持ち、プレイの方も上級者向けの譜面等に特攻せず、安定なスコアを出せる。


 長門はランカーとしての実力を含め、ネット上ではリアルチートと言われる事もある。


「自分の技量に届かないプレイヤーの動画を参考にしても、再現度合いが低いとして非難される可能性もある」


 山口が彼らのプレイを参考にしないのは、たいていの動画視聴者がプレイの再現度を求めている関係で、非難コメントが増えると考えているからだ。


 この考えがネガティブ思考と言われるのは百も承知であるが、それでも自分の技量に合うような動画を探していた。



 動画探しを決行して30分が経過した。ガジェットの修理が完了するのに時間がかかると言う事で時間つぶし……と言うつもりが、気が付くとこちらがメインとなっている。


「見つからない」


 本業としてはこちら側ではないのに、気が付くと攻略動画を探すような勢いで動画を捜索していた。仕方がないので、プレイ動画を断念して別の講座動画を探した結果……。


「さっきのカスタマイズ講座と同じ投稿者の動画か」


 発見した動画の内容を確認する前、投稿者の名前を見てカスタマイズ講座と同じ人だと分かった。



 動画の内容はスコアラー向けの物であり、エンジョイ勢やパフォーマンス勢にとっては無縁の物だ。


 ハイスコアや曲埋めと言ったようなプレイをしていく内に壁が立ちふさがる……と講座でも言及されている。


 そして、ハイスコアを求めたり上位ランカーを越えようと考えた結果、外部チートやツール、違法ガジェットに手を染めてしまう事に対しても警告をしていた。


 その中で、白衣の女性は色々な事を言っていたような気がしたが、それらの話も耳を通り抜けてしまい、あまり覚えていない。しかし、その中で印象に残った一言もある。


『どんな手段を使ってでも……という考えに至るのは、ゲームである以上はゼロではない。これに関しては、もはや宿命だろう』


『しかし、それでも最終的な判断を下すのは自分自身であり……他人の意見ではない。人の意見やネットの流行に流されて自分の主張が出来ないと言う方が逆に懸念すべき事』


『過去に、さまざまなアカシックレコードで国会が非合法手段を使ってでも……と言うような考えを出したと書かれている物も存在するが、それも参考意見程度にしかならないだろう』


『私は色々とARゲームで思う個所あり、それらの壁を壊していく事が新たな一歩につながると考えている』


『ネットの波に流され、自分の意見を主張できない環境が生み出される事こそ、アカシックレコードも警鐘を鳴らしている事であると間違いない』


 アカシックレコードと言う単語を聞き、そう言えば……とバウンティハンターを山口は思い出していた。



 同日午後2時、アンテナショップでガジェットの調整を行っていた別の人物もいた。それは、信濃しなのリン。


「上級ランカーに匹敵する実力……とネット上で言われているけど、大淀に比べるとオールラウンダーである以上は数段劣るのは事実ね」


 彼女はネット上で上級ランカークラスと言われていても、その実感は沸かないでいた。彼女は音楽ゲームを初めとして、複数機種を掛け持ちしているオールランダー。


 それが意味する物とは、いわゆる一つの器用貧乏でもあった。知識量は他のARゲームプレイヤーよりも豊富な一方、他の機種もプレイしている為にオンリープレイヤーとの対戦では後手に回る事もある。


「私は、何を目指すべきだったのか」


 信濃は不正プレイヤー等を運営へ報告し、そこから得た報酬でプレイしているのも同じで、ゲームの継続プレイの為に不正プレイヤーを捕まえるバウンティハンターと同じ事をしていた。


 ただし、本業バウンティハンターやビスマルクと違い、ランクは数段劣るのだが。


「運営サイドは一定の不正プレイヤーを把握しておきながら、放置しているようにも……この場合は、放置と言うよりも一網打尽と言うべきか」


 信濃はミュージックオブスパーダ以外の運営に不信感を抱きつつも、今は特に噛みつく事はしない。下手に抵抗すれば、今度はバウンティハンターを魔女狩りしかねない部分もあるからだ。


「貴方は、山口飛龍……?」


 カスタマイズを考えている途中、信濃は動画を検索していた山口と遭遇していた。しかし、山口は動画検索に集中しており、声を賭けたとしても気付く気配は見られない。


「どちらにしても、彼が自分のライバルになるとは――」


 ライバルになるとは思えないと断言しようとしたが、敢えて彼には言及しない事にする。一応、彼のモチベーションを奪うのはネット上で叩かれる可能性もあった為だが……。

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