エピローグ3.5:繰り返される事例
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8月10日午前10時、アップされていた動画に関する話題がネット上でも取り上げられる中、様々な動きが別の分野であった。
【違法なアイドル投資家が逮捕されたらしい。なんでも、CDを購入する資金を有名テーマパークのチケットの転売で得た利益で――】
【そうした話題は、アカシックレコードの中のみ……フィクションの世界じゃないのか?】
【ここはアカシックレコードの実験場ではない。むしろ、3次元アイドルに関する規制は歓迎すべき物のはずだ】
【彼らはネット炎上勢やまとめサイト管理人、その他の悪乗りする勢力を利用し、超有名アイドルコンテンツで世界を掌握しようとした】
【それに利用されたのがアカシックレコードだと聞く。あの中には――】
一時期はパンドラの箱とも言われたアカシックレコード、その中身を知ったことで混乱するネット住民が存在する。
しかし、こうした動きは一部コンテンツ勢を潰す為の自作自演であると判明したのは……わずか5分後だった。
同日午前10時5分、一連のまとめに関してアキバガーディアンに通報した人物がいた。
この人物のおかげで、デマを流してコンテンツ流通を妨害する勢力を発見出来たのは大きい。
アキバガーディアンや一部のネット浄化を望む組織が共同で違法情報の取り締まりシステムを導入した結果、様々な事件の背景には共通する何かがあった。
単純明快に説明すれば、ライバル潰しである。彼らは自分達が儲けを得られる勢力であれば、儲けが少ない勢力を切り捨て、ネット炎上で再起不可能にすると言う物である。
「コンテンツ流通を阻害する勢力の正体が、まさか転売屋とは……灯台もと暗しというべきか」
草加市内のゲーセンでコーヒーを飲みながらスマホをチェックしていたのは、大淀はるかである。
彼女は、アキバガーディアンを全面的に信用した訳ではない。
その一方で、超有名アイドルに対して徹底抗戦が可能な組織がなかった――という事情もある。やむ得ず、アキバガーディアンに協力要請しているのは、この為だ。
「結局、アカシックレコードに光と闇が存在し、そのどちらか片方が消えたとしてもアカシックレコードは成立しない。まるで、Ⅰチームでは野球が出来ないのと同じように」
大淀の近況としては、アキバガーディアンへの違法情報の通報だけではなく、独自にアカシックレコードの研究を始めている個所だろう。
「あの時は私も周囲が見えない中で、あの発言を周囲に拡散し――最終的には第事件となってしまった」
未だに自分の発言がネット炎上に繋がるような事件を生み出し、ランカー事変が起こった事を後悔している。
起きてしまった事を変えることは出来ない。ループ魔法や時間のリセットが不可能なように、都合よく事件をなかった事にはできないのである。
アカシックレコードにも【都合よく出来事を変えることは不可能だろう】と言う趣旨の書き込みが存在し、それがタイムマシン等で時間を書きかえることが不可能であると断言しているのだが……。
「この出来事をなかった事には出来ない。逆に、それを反省点として他の世界に生かしてもらう為にメッセージを伝えることは、可能かもしれない」
大淀はアカシックレコードに掲載されている小説を見て、それが別の世界から発信されているのではないか……と考えるようになった。




