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◆悪戯女神ミ・ムゥ

ーー 地球を遥か高次元より見おろす天上界にて ーー


 ちょうど同じ頃、天上界ではひとりの女神が大きなため息をひとつ吐き出した。女神族のミ・ムゥだ。


「にしても……平和って……退屈なのね~」


 大理石と象牙でつくられた巨大な白い城の一室にミ・ムゥは居た。その城は息までが白く、なるほど、すべてがまばゆい白に輝いていた。


「だいたいこの城もキモいのよ。愛と調和の城とか言ってホワイト一色とか」


 ミ・ムゥはそれがたまらなく嫌で、広い部屋の片隅に黒っぽいモノをあれこれ置いて自分スペースを作っていた。ミ・ムゥは女神族の末っ子で今年で十六歳になるのだが、黒い服装を好み、どちらかといえば女神というよりも魔女に近いように見えた。


「あの頃が懐かしすぎてヤバイっすなー」


 椅子に座ってうなだれながらミ・ムゥは、なにやら机の上に置かれたフィギュアをコツンっとつっついた。魔王のフィギュアだ。さまざまな種類、大きさのフィギュアがところ狭しと置かれている。見れば、フィギュア以外にもいろんな魔王グッズがあった。そう、ミ・ムゥは女神のくせに魔王マニアだったのだ。

 ”あの頃”とミ・ムゥが言ったのは、魔王族がミスガルを支配していた時代……通称『魔王ノ世紀』だ。ヒト族と魔族が住む世界ミスガル。そこは長い間平和だった。小競り合いのような争い事があったとしても、それ以上大きくなることはなかった。しかしいつしか魔族の中に力を持つ者が現れた。魔王だ。彼らは魔族や魑魅魍魎を率い、ミスガルの支配者であることを宣言した。そうしてそれを認めないヒト族との間に戦争が起こったのだ。彼らは強く、ほとんどミスガルの全てを支配していた。

 神族をはじめ天上人はもともと地上世界ミスガルのことなど無関心で、魔族ともヒト族どちら側にも与することはなかった。だから本来であれば子供だったミ・ムゥが魔王族に触れる機会などなかったはずなのだ。

 しかし、魔王族の天上界への侵攻計画が神々の耳に入ると、神々は怒り狂い、魔王族とヒト族の戦争に介入、総掛かりで魔王族を壊滅させたのだ。この戦いを大魔大戦と呼んだ。

 当時、まだ子供だったミ・ムゥも戦地を連れまわされたが、そのとき、戦乱の狭間で目撃した魔王族に強く惹かれる自分に気がついた。戦乱が収束し、平穏な日々が訪れると、その熱病はさらに悪化していったのだった。


「でもこれで、この本で、なんとかなる!かも?ね~~~」


 ミ・ムゥはお腹の前あたりの空間に指で魔法陣を描いた。次元魔法で次元の隙間に隠していた本を取り出すとニンマリとした。


「私の魔王様!待っててね!」


 分厚いその本の表紙には「正しい魔王の作り方」と書かれていた。


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