◆転校少女
ーー 数日後の地球、蒼汰が通う学校の教室 ーー
「え~それでは転校生を紹介しま~す。魅怨さんどうぞー」
「私の名前は~なんだっけ?儚音魅怨?儚音魅怨だな。えーと、はじめましてこんにちわ。私の名前は儚音魅怨だ」
少しぶっきらぼうな喋り方だが、その少女の整ったな容姿は注目を集めていた。とくに男子生徒にだが。
が、次の瞬間、その場にいた全員の顔が引きつった。
「馴れ馴れしくしたら殺しちゃうから、そのつもりで」
…………………
「え、ええ~と~、み、みなさん仲良くしてあげてください」
なんとか先生がそう言うまでしばらく教室全部が固まっていたという。
「おい、蒼汰~1年D組にスゲェー転校生が来たらしいぜ?」
「ん?1年?スゲェーってなにが?絶世の美女とかか?」
「お前はそればっかだな!」
「うるへい!」
クラスメイトのタカシが言うまでもなく、その転校生の噂はまたたく間に学校中を駆け巡った。
あれ?そーいやあ1年D組って篝と同じクラスだっけ……
放課後、「帰宅する部」所属である俺は、速攻で学校を出ようとした。すると篝も神速で迫ってきた。まあ、ここまではいつものことだ。しかし、聞いてもいないのに噂の転校生の話をベラベラとしはじめた。
「そうなのよ~魅怨ちゃんてば、帰国子女?かなんかで日本のことよく分んなくて、挨拶の参考にする本を間違えちゃったみたい」
「へえ~そんなオッチョコチョイじゃあ篝と気が合うワケだな」
転校生はその後、なぜか篝とは意気投合したらしい。
「オッチョコチョイとはなんだ?」
「え!ええええええ!」
突然、篝の背後から少女が湧いて出た。別に俺には達人的な武道の心得があって、気配を読めるんだ!ってワケではないが、にしても目の前の篝の背後に人がいて気づかないとは……とにかく驚いた。
「だ、誰?かな?」
俺は心臓が飛び出るほど慌てたのを悟られないようにゆっくりと尋ねた。
「ご紹介が遅れまして、魔法少女の儚音魅怨だ。ヨロシク!」
「ま、魔法少女???あ、ああキミが……ヨ、ヨロシク」
なるほどコレが例の転校生か、とすぐに分かった。たぶん、中学生の病がまだ完治していないのだろう。黒髪のオカッパ頭で揃った前髪がほとんど目にかかって、ブスッとした表情をしている。
「……なんで居るんだよ……」
篝の耳元で小声でささやいた。そうしたら
「居たら悪いのか?」
魅怨が先に返事をした。どうやら地獄耳らしい。
「地獄耳ではないゾ!失敬な!」
「え?」
「いや……質問に答えたらどうだ?」
「あれ?え?あ、ああーなんだっけ?」
「オッチョコチョイとは何か?だ」
コイツ俺の考えてる事がわかるのか???んなハズはないか……
「あ、ああー!これこれ、コイツのことだよ」
「ん?篝のことをオッチョコチョイと言うのか?」
「そうそう」
「って、ソウちゃん!全然違うっしょ!」
ポカーンと話を聞いていた篝がパタパタし始めた。そしてあわてて、魅怨にオッチョコチョイの意味を説明していた。……そして……魅怨に睨まれた。うまく言いやがれってんだよ篝のヤツ。
「ああーそれで……魅怨ちゃん。家、こっちの方なの?どの辺?」
「家?ああー。篝の家の方だ」
「じゃあ俺んちにも近いってことか……」
俺はなんとなく納得したような、納得しないような感じだったが、そんなこんなしているうちに家についてしまった。
「じゃな。また明日ー」
「ソウちゃんバイバ~イ」
二人と別れた後に気がついたが、この辺りは同時期にできた住宅地でみんな顔見知りだ。だから、あんな子は居ないことは確かだし、誰かが引っ越すなんて話も聞いたことがない。じゃあ、あの子の家ってドコなんだろう。
いずれにせよ、こうして次の日から、俺の登下校のお供は二人になった。しかし良かったこともある。
「おい~ソウ!篝ちゃんと喧嘩でもしたのか?最近こねーじゃねーか。どうしてくれるんだ!」
無責任なクラスメイトはどうやら篝が来るのを密かに楽しみにしていたらしい。しかし、そう、昼休みなんかは篝はやって来なくなったのだ。
「うるさい!いいだろ!これで、晴れて独身生活スタートだ!」




