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人型陸戦兵器「|武士《もののふ》」   作者: 荒井尾 麓
第三部 防衛高校対抗戦編
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第五十一話

『さて、大会も大詰め。特殊陸戦兵器交流戦・高校生の部、最終決勝トーナメントとなりました。予選を勝ち抜き、生き残ってきた四人の選手は、誰もかれもが優秀な選手ばかり。さぁ、決勝トーナメントを勝ち抜き勝利を手にするのは誰なのか! 』


 この大会を通して、変わらないテンションで実況をする女子生徒。

 その横で北方の守護神と呼ばれる男は、静かに微笑み、言葉を紡ぐ。


『そうだね。そのうちの三人は一年生にして、同じ学校の選手というのがすごいね。しかも二人は特務官といえ、ハンデ付きで戦って勝ちぬいているからね。いや、さすがというべきかな』


 実況者の女子生徒は、その解説を男の方を向いて聞いてから、大きく頷いた。

 そして正面を向き、真剣な表情をする。


『さて、いよいよ、その時間が近づいてまいりました。まずは、準決勝戦です。

 この決勝トーナメントでは、予選異なり一キロ四方の限定された空間で、対角の位置から両選手がスタートして、模擬戦を行います。

 さらに、使用されるフィールドは、市街地エリアのみ。

 過去の記録では、数分で決着がついたこともあるこのルール。選手たちはこの条件下でどのように戦うのでしょうか。

 さぁ! 試合開始まで、残り五分です』


     *********


 俺はパイロットスーツをしっかりと着こむ。

 調子はいいとは言えない。

 さすが毎日、毎日、試合に整備にと動いていたら、なんだかんだで休む間もなかった。

 だが、負けたくはない。

 その理由は、楠先生の罰ゲームもあるが、ここまで来たら優勝してみたいという思いも不思議と生まれてきた。

 いや、楠先生の罰ゲームを受けて苦しむ北島が見たいとか、そういうんじゃないんだからねっ!


 とはいえ、次の試合に集中だ。

 準決勝は、俺の試合と、もう一方の試合が同時に行われる。

 俺の試合が終わるころには、向こうの試合も終わっていることだろう。ある意味この組み合わせはよかったのか、悪かったのか、悩まされる。

 だが、相手がどちらになったとしても、俺は全力で勝ちに行く。

 そのために、この戦いを勝とう。


     *********


 手が震える。

 緊張が、これまで感じたことがないほどに膨れ上がり、私の胸を圧迫する。

 私はその震えをグリップを握ることで誤魔化す。

 前回の戦いでは、手も足も出なかった。

 前回も今回も万全とは言い難い。

 でも、今回は今回こそは。


「負けません」


 私は大きく息を吸い、息を一回止め、ゆっくりと吐く。これを数セット繰り返し、自分の心を落ち着かせる。


「今度こそは、勝ちます」


     *********


 私はコックピットの中で腕を組み、試合の時間を待つ。

 まだ、あと五分もある。

 この空白の時間が私にとっては苦しい。

 何をするでもない。ただただ何もない空白。

 それは私の頭の中にある空白をイメージさせるからだろう。

 私は前田一佐の元に来るまでの記憶がない。

 それは幼かったゆえに、覚えていないのではなく、『そこに記憶がまったくない』のだ。

 私はそのことを、何度か前田一佐に問うたことがある。だが、一佐は決まって、その時が来たらな、と言って答えてはくれなかった。

 その末に一佐は戦死されてしまった。

 私はいつになれば、この不安から解放されるのだろう。


 ピピッという電子音が鳴る。

 私はその音で思考の海から帰ってくる。

 どうやら試合の一分前となったらしい。


 次の相手は決して油断したまま勝てる相手ではない。

 だが、負けるつもりもない。

 だから、どうか、前田一佐、いや、『お父さん』もし天国があるのなら、そこから私を応援していてください。


 試合開始にベルが鳴る。


     *********


 試合開始とともに、俺は走り出す。

 装備は相も変わらず、ナイフ一本、ハンドガン一丁(残弾十二発)。

 相手は、このエリアの対角からスタートしているはず。

 俺はこのフィールドの地図をモニターの一つに映し出し、敵の進行方向を予測する。


「とりあえず、建物に隠れながらジグザグ進行だな」


 このエリアは四角く、道路も碁盤の目のように、縦横に張り巡らされている。

 決して直線ではないが、この縦横に伸びる道路の配置が、敵の位置を微妙に見えなくしている。

 だから定石としては、慎重に外側から一本一本、道路を探索しながら行き、敵のいない探索済みのフィールドを増やしていって、敵の位置を予測しながらいくのだ。

 さながら、陣取りゲームのようだ。

 だが俺はそうしない。

 俺はあえて中央を一気に突破して敵の背後を突く作戦を取る。

 俺が敵のスタート地点に到着するころには、敵はその地点から離れた地点に移動しているはずだ。俺はその後ろをこっそりついていき、背後から奇襲を仕掛ける。

 4メートルや5メートルの鉄の塊が動けば、それなりに痕跡が残る。俺はその跡を見つけ、こっそり後をつけるわけだ。

 フハハ、完璧な作戦ではないか。


 俺が適度に建物を盾にして、進行方向の安全を確認していた。そして移動は迅速に。


「よし、この行軍もあと半分だな」


 俺はちょうどこのエリアの中心にたどり着いていた。

 

「あと半分、気を付けて―――」


 俺は曲がり角を曲がりながら、いかないとな、と言おうとしたが、次の瞬間の光景にその言葉を失う。


 俺が曲がった先、数十メートル前方に敵もひょっこり姿を現していた。


 俺たちは、出会った瞬間、一秒ほど停止する。

 そして次の瞬間には、お互いにもつ銃を放つ。


「いや! ってか、俺の銃の射程、20メートルしかなかったー! 」


 俺の放った銃弾は、途中で失速し、地面に蛍光色の染みを作った。

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