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第9話~帝国への道すがら、過去へ思いを馳せる~

こんにちは!

新田洋次郎です!今回も楽しんでいただければ幸いです

「江の島」での狙撃後、史郎は加奈子を連れて列車に乗っていた

この列車は「江の島」から北海道まで繋がっており、簡単に移動できる


「ねぇ、1つ聞いてもいい?」


前に座っている加奈子が声をかけてくる


「なんだ?」


「いや…そこまで大したことじゃないんだけど…その…貴方ってこの世界の人間じゃないでしょ?」


「………何故だ?」


「いや…古代のでも未来のでもない技術…見た感じ地下帝国も外宇宙も関わってなさそうなもの作れるのなんて後は…来訪者だけだし…」


加奈子はかなり賢かった

元々持っている知識と観察力、そして推理力を駆使して史郎が来訪者であることを見抜いた


(まぁ…分かるだろうな…だからあんたをスカウトしに来たんだ)


史郎は想像以上の加奈子の優秀さに内心舌を巻く

自身の上司から渡された加奈子についての資料…寸分たがわず、優秀であることを示している


「正解だ」


「やっぱり…でもなんで来訪者なのに帝国側についてるの?最近の来訪者記録は「江戸」だったはずだけど…」


「裏切られ…いや騙されたんだ。騙されて、殺されかけて、死にそうになりながらも生きていたらここにいたんだ」


「じゃあその話聞かせてよ。まだ道のりは長いんでしょ?」


「はぁ…まぁ、俺が帝国軍に入るまでなら話してやる」


「それより前は?」


「…………」


「はいはいそんな睨まないでよ。詮索しないから」


「はぁ…」

_________________

4か月前


「やめて!来ないで!」


ある森の奥…1人の少女が複数人の男に襲われていた

2人の男は腕と脚を抑え、もう1人の男が服に手をかけている


「おい暴れんなよ~気持ちよくさせてやるからさ」


男はニヤニヤと笑い、服を破っていく


「いや…辞めて…」


(なんでこんなことに…)


彼女……「かえで」は幼少期から独りぼっちだった

ある貴族の妾との子として生まれ、今まで愛を感じたことは無かった

母はいじめられて自身を置いて自死し、姉妹たちは毎日のように嫌がらせをしてきた

父親はあろうことか酒に酔った勢いでかえでを襲おうとし、命の危機を感じた彼女は家を出た

彼女には類稀なる商業の才があり、たった一週間で商業団を作り上げた

そして「沖縄」において防衛軍と提携するまでの大規模商業キャラバンを作り上げた


(もっとお金を稼いで…もっと権力を手に入れて…もっとあいつらを見返してやりたいのに…こんな奴らに…)


唇を嚙み締める

どれだけ暴れようとも訓練をしていない彼女では男3人には太刀打ち出来ない

もう少しで自身の下着も剥ぎ取られ、尊厳を踏みにじられるだろう…


(絶対…絶対に許さない…)


恨みだけが募っていく

今は諦めるしかない

そう思い目を瞑る

自分が惨めに犯される光景を見ないために

体を這うであろう気持ちの悪い感触に備える


ゴキャッ!


しかし、次に聞こえたのはまるで何か硬いものが折れた音

恐る恐る目を開ける

そこには先ほどまで気持ち悪い笑みを浮かべていた男はいない

それどころか自身を押さえつけていた男たちも居ない


「何が…」


かえでは周りを見回すと、3人の男が血を流しながら積み重なっているのを発見する

そして、その近くに佇んでいる男に目を向ける

黒い髪、中背中肉の体つき…一見すると普通の男だった

異様なのは顔

右目は傷で負傷したのか閉じられており、口は左側が裂けているように縫われている

その男は襲ってきた男たちが気絶したことを確認するとこちらに近づいてくる


「ッ…」


彼女は思わず下がってしまう

先ほどまで男に襲われていたのだから無理はないだろう

黒髪の男もそれに気づいたのか止まり、頭を掻く

そして、何かを考えたのち、また彼女の方を向き、言葉をかける


「大丈夫か?」


彼女は一瞬差し出された手に肩を震わせる

それを見てまた男は顔に手を当てる


「あ~悪い。そうだよな。怖いよな」


彼は手を引っ込める

かえではそれを見て少し…変な気持ちになる


「ケガは無いか?」


「……ちょっと…擦りむきました…」


襲われた時にこけてしまい、膝からは血がにじんでいる

男はそれに気づくと何やら腰に付けているポーチを漁り、消毒液とティッシュ、絆創膏を取り出した


「手当てするか?それとも自分でやれるか?」


「………お願いしても良いですか?」


その言葉を聞いて男はそろりそろりと近づいてかえでの足を治療し始める

なるべく素肌に触らないようにしているのか動きが拙い

それを見て思わずかえでは笑みがこぼれる


「どうした?」


「いや…少し可愛いなって思って…」


「意味わかんねぇ…女子ってたまになんでも可愛いっていうよな」


男はようやく手当てが終わり、また手を差し出してくる

今度は食い気味に手を取るかえで


「ありがとうございます…助けてくれて。何かお礼させてください」


「いや…別にいいよ。俺がやりたくてやったことだし」


お礼させてほしいよ申し出るかえでに男は遠慮して受け取ろうとしない

少し、かえではモヤッとして、思わず言葉尻が強くなる


「あら?3人の大男を蹴散らした紳士なあなたは私からのお礼を断って…私に恥をかかせると?」


「ウッ…」


男は痛いところを突かれたと言葉を詰まらせる

その様子を見てかえではニヤリと笑う


「私…こう見えてもお金持ちなんですよ?あなたが欲しいものなら何でも用意できますが…いかがなさいますか?」


「…………」


(これは…勝ちましたね…)


黙り込む男

かえでは内心勝ちを確信し、ほくそ笑む


「なら…1つ良いか?」


男は悩みに悩み、言葉を切り出す

かえでは待ってましたと言わんばかりに懐からメモを出す

それは顧客の要望を聞き、書き留めるためのノート

そこには数百に及ぶ顧客の列を表したようなページが重なっていたが、かえでは全てを契り、そのままくしゃくしゃにして自身の取り戻したポーチに突っ込む

そして待機名簿No.1になったページに欠く準備をする


「はい!どんな内容でも良いですよ!」


「腕のいい工房か鍛冶屋があったら紹介してほしい」


「え?それだけですか?」


かえではポカンとする

自慢ではないが、かえではこの世界でも有数の商会のトップであり、彼女の鶴の一声さえあればどんな商品でも取り寄せることが出来る

実際先ほど破り去ったページには彼女を頼り、大金をはたいてようやく依頼できた者たちばかりであった

しかし、彼は工房か鍛冶屋を紹介してほしい…たったそれだけを彼女に頼んだ


「ん?無理なら別に無理しなくていいぞ」


「い、いえ…そういうわけじゃないんですが…」


「なら頼めるか?」


男は迷わずにかえでに頼む

かえでは出来るは出来るが、釈然としない思いが胸に燻っていた


(もし…もしここで彼の願いをすぐにかなえたら…もうここでお別れ…)


いつもは顧客とは深い関係を抱くことは決してなく、そうしようと思ったことすらなかったかえで

しかし、今回はそれでは納得できなかった

そして考え…考え…考え切ってある考えが思い浮かんだ


「あ、あの!私のキャラバンの目的地にお得意様の工房があるんですけど…一緒に行きませんか?」


「……邪魔にならなければお願いしても良いか?」


「はい!」


かえでは内心ガッツポーズをし、彼の手を引っ張ってキャラバンの止まっている方向へと向かっていく

その足取りは軽く、満面の笑みを浮かべていた

読んで頂きありがとうございます

読んだ後に良かった点や気になる点を感想に書いたり、評価してくれると嬉しいです

では、また次のお話で!

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