面相筆編
「お前の悪口言われてるよ。」
手塚にそう言われたのは悟が学校から姿を消した、(俺が消したんだけど)2週間後だった。
「誰が言ってるんだ?」
敵対する奴はだれであろうと排除してやる。
「健太とカクトの二人組と三井だよ。」
三井。結構、モテる陽キャって感じの奴だ。
去年から、俺を嫌煙してる。気に食わないやつだとは思っていたが。
「健太とカクトは後でいい。三井を消すか。」
「おーけー。」
腕時計の事件以来、手塚は俺に従順になった。
こいつは使える、と思い今回も協力して三井を排除することにした。
事は動き出した。
「えーー。では皆さんにお話ししなくてはならないことがあります。」
どんよりとした停滞感のなか、担任の野沢先生が言葉を発した。
「昨日、美術部員によってこれが発見されました。」
そういいながら、先生は手に握られているものをみんなに見せた。
くの字に折れ、断面から木片が飛び出している、面相筆だ。
「明らかに、誰かの手によって折られていますよね。」
教室がざわついた。
ひどい。誰がこんなことを。おいおい。
様々な罵声が飛び交う。
「はーい。皆さん静かにしてくださいね。先生たちは非常に残念です。君たちの中にこれをやった人がいるとは限りませんが、自分やっちゃったかもという人はいませんか?」
またしても、重苦しい沈黙がその場を支配した。
「では、この場で言い出せなかった人、またはやってるのを見た人は先生のところに来てくださいね。」
面相筆は次にクラスへと回った。
三井はこそこそと隣の女子としゃべってる。
残された時間を楽しめ。
その日の昼休み、俺は手塚とともに野沢先生のもとへ行った。
「どうした?」
「実は、ぼくたち面相筆を折ってる人を知ってるんですよ。」
「え? 本当か!」
「三井です。三井がやってました。そうだよな、手塚。」
「はい。確かに美術の時間に折ってるのを見ました。」
「そうか。わかった、ありがとう。後で話を聞いてみるよ。」
ははっははっはは。 これであいつも排除できた。
俺ら以外にも海鳳と武田が先生にチクったはず。
5時間目、自習の時間。
三井が廊下に呼び出された。 終わったな。
トントン 誰かに背中をたたかれた。
二組担任の音羽先生だ。
「ちょっといいかな。」
「え?」
健太とカクトがニヤニヤしながら見つめてきた。
俺も呼び出された。
「実は君が面相筆を折った、って言ってる子がいるんだけど。」
「え?俺がやるわけないじゃないですか。」
「まあ、そうだよね。」
その瞬間、理解した。
またしても健太とカクトは俺をはめようとしたのだ。
あいつらめ。
拳が震えた。
俺はあっさりと解放され、教室に戻った。
三井はまだ先生と話していた。
数日前。俺と手塚は計画を実行した。
美術の時間に部の備品である面相筆を折って、三井の机に入れた。
健太とカクトは不思議な目で見つめてきた。
三井は退校にはならなく、普通に生活を送っていた。
いや、普通じゃないか。
俺らがクラス中、いや学校中に広めた。
三井は誰としゃべらず、居場所がない学校生活を送っていた。
みんな冷たい目で彼を見た。
昨日までイチャイチャしてた女子がすれ違いざまに「最低」と小声で言ってる。
どんな気持ちだ、三井?
計画成功。
俺は陽キャグループの人間を動かすほどの権力をつけていた。
校内にポスターが貼られてる。
「文化祭まであと一か月!」
文化祭か。 復讐にはちょうどいい。
楽しみだ。 健太、カクト




